『新ブレトンウッズ体制は出来るか?』番外:IMFの決定権構造
国際金融秩序、世界通貨体制の改革に向けた動きが始まっています。
1944年のブレトンウッズ体制であるドル基軸通貨が瀕死に至り、次の通貨秩序がどうなるかが焦点になって来ました。
新たな通貨秩序は、IMFの組織改革となるのか、国連総会を基盤とした新組織となるのか、議論する場と改革内容を巡ってのやり取りが行われています。
そこで、改めてIMFの組織原理と決定権(投票権)の現状を見てみます。
IMFの投票権
IMFは、各国の出資により設立された。
そのため、各国の出資比率に応じて、IMF総会での投票権が与えられています。
また、執行機関である理事会を構成する24名の理事も、一定の投票権を獲得した国が理事に就任しています。
G20は、先進7カ国(G7)と新興12カ国+EUという構成です。
このG7と新興12カ国のIMF投票権、世界全体に占めるGDP比率(2007年)、同じく外貨準備比率(2008年段階)を並べたのが、下の図です。
GDP比率で見ると、新興12カ国の国力が概ねIMF投票権に反映しているとも言えます。
しかし、通貨秩序に関係する「外貨準備比率」を見ると、新興12カ国が、世界の外貨準備の46%を持っているのに対して、IMFの投票権は約半分の24%しか持っていません。
世界通貨秩序の議論が、何故、新興12カ国を加えたG20の場で行われているかが、一目瞭然ですね。
G7、12カ国の個別を見ていく前に、クリックをお願いします。
各国の投票権と外貨準備比率
G20の各国のIMF投票権(比率)と外貨準備(世界全体に占める比率)を見たのが、下の図です。
国家として、国際的な通貨体制への発言権は外貨準備の多寡と見ることが出来ます。
その視点からいうと、IMFの投票権は時代遅れが甚だしいですね。
新興国家が、IMFでの決定権の変革を強く主張しているのも分かります。
図をみて、もう一つ顕著な事があります。
何だか分かりますか?
そうです。外貨準備の第一位の中国と第二位の日本が、G7と新興国に分かれている事です。
英米覇権は、意図的に中国と日本を分断しているのです。
日本がG7の一員として、新興国の先進国に対する体制改革に対する防波堤の役割を果たしていると言えます。
IMFの85%ルール
IMFの新たな出資(投票権の変更)やSDR(特別引出権)の配分など、総会決定事項は、85%の賛成をもって成立する規約となっています。
つまり、15%以上の投票権を持つ国家は、IMFの決定に対して拒否権を発動できるのです。
単独の国家として拒否権を持つのが、米国ですね。
例えば、最近のSDRの特別配分について、米国が同意しないので、発効できていません。
1997年9月、IMFの総務会はIMF協定の第4次改正案を承認し、1回限りの特別配分を認めました。その結果、SDR配分の累計額は428億SDRに倍増することとなりました。この特別配分の趣旨は、81年以降にIMFに加盟した国々—加盟国の5分の1以上に達する—がこれまで一度もSDRの配分を受けていなかったという状況を是正し、IMFの加盟国すべてが公平にSDR制度に参加することができるようにするというものです。
第4次協定改正案は総投票権数の85%を保有するIMF加盟国の5分の3(111カ国)が同意したときに発効します。2008年3月末現在では、77.68%の投票権を持つ131カ国が改正案に同意しており、したがってもし16.75%の投票権を持つ米国が賛成すれば、改正案は発効することになります。
特別引出権(SDR)
実は、通貨ユーロ圏の15カ国の投票権合計は、22.75%です。ですから、通貨ユーロもIMF決定への拒否権を確保しています。
1944年に設立したIMFは、組織原理の中に、しっかりと欧米主導の原理を組み込んであります。
この欧米主導の体制への挑戦者は、やはり、中国という事になりそうですね。
IMFの概要については、IMFアジア太平洋地域事務所の日本語サイトが参考になります。
IMFファクトシート
IMFの出資割当額(クォータ)とその見直し
国際金融安定性報告書
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コメント4件
gokuu | 2009.05.16 20:34
確かに、プーチンの背景は今後を占う上で重要なファクターですね。
加えて、ソビエト崩壊からの回復の経緯を調査して、その国民性なども探って生きたいと考えています。
情報あれば是非コメントください>>わっと様
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わっと | 2009.05.11 17:04
プーチンの背景は不明なところがありますが、ひょっとしたら欧米の金貸したちや、特権的大資本家たちへの対抗勢力の一翼を担う存在になるかもしれないという期待も抱いています。
そのあたりの可能性を確かめたいと思っています。