今年9月のメルケル首相引退を控え、不透明な状況が続くドイツ
昨年の2月にメルケル首相の後継者として党首に就任したクランプ=カレンバウアー氏が州選挙の大敗の責任を取って辞任しました。その後、コロナの影響で党首選が開けず、1年間党首不在のままでしたが、今年の1月に党首選が行われ、1年ぶりに新党首がラシェット氏に決まりました。しかし、ドイツの政権が不安定な状況は続くようです。
まず、新党首に就任したラシェット氏ですが、メルケル首相を長年支えてきた人物で、中道のメルケル路線を継承するとみられています。CDU(キリスト教民主同盟)の党首選ですから、メルケル首相の路線継続を主張する人が当選しやすいのでしょうが、明らかに国民の意識からずれていると思われます。メルケル首相の寛容な難民の受け入れや、同性婚の容認などリベラル寄りの政策が国民から受け入れられず、選挙で敗北を続けているのに、路線継続を選ぶのは不思議です。
ちなみに、党首選の第1回投票では、反メルケルを掲げるメルツ氏が1位で385票を獲得、ラシェット氏は380票で2位、レトゲン氏が224票と票が割れました。そして決選投票では521対466とラシェット氏が逆転勝利しました。CDUの中にも改革派は増えているようですが過半数には至っていません。
また、新党首のラシェット氏は国民の人気も低く、世論調査ではキリスト教社会同盟 (CSU)党首ゼーダー氏が36%と最も人気が高く、次いでラシェット氏が21%となっています。
そんな状態で迎えた、ドイツ2州議会選挙でCDUは歴史的な大敗を喫します。バーデン=ヴュルテンベルク州では緑の党が得票率33%で首位を維持。CDUは2016年の前回選挙から減少し24%ほど。ラインラント=プファルツ州では中道左派・社会民主党(SPD)が得票率36%で首位をキープする見通し、事前の世論調査でリードしていたCDUは28%にとどまるとみられています。
このままでは、与党・キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の首相候補にラシェット氏がそのまま選ばれるのは難しいと思われます。さらに言えば、9月の連邦議会選挙でCDUが緑の党に敗北し、緑の党を第1党とする連立政権が、世界で初めて成立する可能性も高いと言われています。
■ドイツ 今秋引退のメルケル首相の後継争い本格化 2021年1月16日
新たな党首を選ぶ選挙には、▽中道のメルケル路線を継承するとみられる西部ノルトライン・ウェストファーレン州のラシェット州首相(59)、▽反メルケルとして知られる元院内総務で保守派のメルツ氏(65)、それに▽元環境相で外交政策に詳しいレトゲン氏(55)の
3人が立候補しています。
アルミン・ラシェット氏はドイツ連邦議会やヨーロッパ議会で議員として活動したあと、2017年からは最も人口の多い西部ノルトライン・ウェストファーレン州の州首相を務めています。メルケル首相の下、中道右派の「キリスト教民主同盟」では、寛容な難民の受け入れや、同性婚の容認などリベラル寄りの政策が進められてきました。ラシェット氏は、メルケル首相に近いとされ、こうした中道の路線を継承するものとみられています。
ノルベルト・レトゲン氏はメルケル首相の下、2009年から環境相を務め、2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、脱原発を掲げたドイツ政府のエネルギー政策の転換を推進しました。2014年からは連邦議会の外交委員長を務めていて、選挙戦では女性の積極的な起用や、環境政策などを掲げ、若い世代への訴えを強めて支持を広げてきました。
フリードリヒ・メルツ氏はヨーロッパ議会の議員を務めたあと、1994年からはドイツ連邦議会に活動の場を移し、2000年からは連邦議会の「キリスト教民主・社会同盟」の会派のトップに当たる院内総務を務めました。メルケル首相のかつての政敵として知られ、2002年にはメルケル氏との権力争いに敗れてポストを失い、2009年には政界を退きました。移民の受け入れに厳しい姿勢を示すなど、メルケル首相が進めてきたリベラル寄りの路線からの回帰を求める保守層を中心に支持を集めています。
■メルケル氏率いたドイツ最大与党、新党首に中道派ラシェット氏2021年1月17日
ラシェット氏は保守派ビジネスマンのフリードリッヒ・メルツ氏と決選投票を争い、521対466で勝った。メルケル首相を長年支えてきたラシェット氏は、党首選ではCDUにとって方向転換は「間違ったメッセージを送る」と主張していた。
2年前にメルケル首相の後任とみなされて党首に就任したアンネグレート・クランプ=カレンバウアー氏は、昨年2月に辞意を表明し、首相を目指すつもりはないとしていた。ドイツの連邦議会選挙は今年9月。連立与党から誰が首相候補として立つことになるのかは、今年春に決まる。
ラシェット新党首の下で副党首のひとりとなったイエンス・シュパーン保健相が、与党・キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の首相候補に出馬する可能性も取りざたされている。連立与党のキリスト教社会同盟 (CSU)党首で南部バイエルン州首相のマルクス・ゼーダー氏も、有力な新首相候補と見られている。
■ドイツ最大与党CDU、ラシェット氏が新党首に2021年1月22日
アンゲラ・メルケル首相が所属するドイツ最大与党、キリスト教民主同盟(CDU)の党大会が1月16日に開催され、党首選挙の結果、アルミン・ラシェット氏が新党首に選出された。党大会は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により当初予定されていた2020年の4月25日から12月4日へ、さらに今回の日程(2021年1月16日)へと2度にわたる延期を余儀なくされていた。1回目の選挙では、レトゲン氏が224票、ラシェット氏が380票、メルツ氏が385票を獲得。ラシェット氏とメルツ氏の決選投票で、ラシェット氏が521票、メルツ氏が466票を獲得して、ラシェット氏が勝利した。
ラシェット氏はメルケル首相の側近で、中道右派といわれるCDUを党綱領どおり「中道政党」と位置付けていることから、9月に行われる連邦議会選挙の後に首相に選出されれば、メルケル首相の中道路線を継承する可能性が高い。世論調査におけるラシェット氏への支持は低迷しており、国民の人気の高いイェンス・シュパーン保健相やマルクス・ゼーダーCSU党首(バイエルン州首相)などが首相候補として取り沙汰されている。テレビ局RTLが調査会社フォルサと1月に実施した首相候補に関する世論調査によると、ゼーダー氏が36%と最も人気が高く、次いでラシェット氏が21%、シュパーン氏が10%、メルツ氏が3%と続く。
最終的なCDU/CSU首相候補者の決定は、3月14日に行われる南部のバーデン・ビュルテンベルク州とラインラント・プファルツ州での州議会選挙の結果を踏まえて決定されるとみられている。
■ドイツ経済、回復にブレーキ 10~12月のGDP0.1%増2021年1月29日
ドイツ連邦統計庁は29日、2020年10~12月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み、速報値)が前期比0.1%増加したと発表した。新型コロナウイルスの感染再拡大で大規模なロックダウン(都市封鎖)を強いられ、昨年夏以降の回復にブレーキがかかった。
ドイツ経済は20年4~6月期に10%近い落ち込みとなった後、7~9月期に前期比8.5%増と大きく持ち直していた。だが、秋以降に感染が再び広がったため、10~12月期のGDPはほぼ横ばいにとどまった。前年同期比では3.9%減で、コロナ前を大幅に下回る水準にとどまっている。
アルトマイヤー独経済相は27日に「製造業は引き続き堅調だが、サービス業が大きな打撃を受けている」と指摘していた。ドイツ政府は11月初めから飲食店などを閉じる部分的なロックダウンに踏み切り、その後も段階的に規制を強化してきた。12月半ばからはスーパーなどを除く小売店の営業も禁じられ、景気の重荷となっていた。
ドイツ政府は2021年の成長率見通しをこれまでの4.4%から3.0%に下方修正した。新規感染者数は足元で減少しているが、変異種への警戒もあってロックダウン解除の見通しはいまだ立っていない。英国や米国に比べてワクチンの接種が遅れていることも、景気の先行きに影を落としている。
■【世界のみどり】9月ドイツ総選挙に注目!2021年1月31日
今年9月26日、ドイツでは総選挙が予定されています。メルケル首相は今年の任期満了をもって首相を退任すると表明し、同氏が率いてきたキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の党首もラシェット氏 へとバトンタッチされることになりました。
2020年12月に実施された政党支持率調査では、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)への36%に続き、ドイツ緑の党への支持率は21%の第2位となっています。気候危機が現実のものとなり、気候危機対策への一層の取り組みが期待されるなか「ドイツ緑の党が再度連立政権入りする可能性が高い」「緑の党が首相の座に就くのでは」との予想もあります。
ドイツ緑の党はどのような政策を掲げて総選挙に挑むのか?史上初の緑の首相は誕生するか?9月のドイツ総選挙に注目です。
■CDU党首にラシェット氏 連邦首相候補決定は春に2021年2月5日
最も注目される連邦議会選挙の首相候補は決まっておらず、キリスト教社会同盟(CSU)のマルクス・ゼーダ―党首とラシェット氏が協議して、4月の復活祭後に決定される予定だ。
最大の焦点は、今年9月26日の連邦議会選挙へ向けて、誰が首相候補になるかである。実はCDU・CSUには、ラシェット氏よりも有力視されている政治家がいる。バイエルン州のゼーダ―首相だ。ドイツ第2テレビ(ZDF)が昨年11月13日に公表した世論調査によると、「CSUのゼーダ―党首が首相候補に適している」と答えた人の比率は58%で、ラシェット氏と答えた人の比率(27%)を大きく上回っている。
ゼーダ―氏は、「誰が連邦議会選挙で首相候補として出馬するかは、私とラシェット氏の話し合いで決める」と語っている。両氏ともに、緑の党との連立については前向きの姿勢を取っている。ゼーダ―氏は、昨年3月以来厳しいコロナ対策を行ってきたことで人気が急上昇した。
■コロナ規制、ドイツが緩和へ 無料の抗原検査を全国で2021年3月4日
ドイツのメルケル首相は3日、各州首相との会議を開き、新型コロナウイルスの新規感染者が少ない地区を対象に今月8日から、規制を段階的に緩める方針で合意した。定期的な無料の抗原検査も全国で進め、一段の規制緩和に向けて市民の協力を得るねらいだ。各種の規制は昨年11月から続き、市民や経済界からは緩和の要望が強まっていた。
すでに再開した学校と美容室に続き、書店や花屋などの営業を全国的に容認。私的に集まれる人数も増やす。さらに、過去7日間の人口10万人あたりの新規感染者数が50人未満の地区では、小売店や博物館などの再開を認める。100人未満の状態でも、予約制などの条件をつけて認める。
■ドイツ2州議会選、メルケル首相の与党CDUが敗北 総選挙へ痛手2021年3月15日
バーデン=ヴュルテンベルク州とラインラント=プファルツ州で実施された州議会選挙で、早い段階の開票結果から、CDUの得票率は25%程度になるとみられている。バーデン=ヴュルテンベルク州では緑の党が得票率33%で首位を維持する見通し。CDUは2016年の前回選挙から減少し24%ほどとみられる。ラインラント=プファルツ州では中道左派・社会民主党(SPD)が得票率36%で首位をキープする見通しとなっている。事前の世論調査でリードしていたCDUは28%にとどまるとみられる。
今回の2州での選挙結果は、緑の党、SPD、自由民主党(FDP)の地方連携への道を切り開くものであり、9月の総選挙後に同様の連立政権を樹立する可能性が高まっている。世論調査によると、CDUの国内支持率は、ドイツの新型ウイルスのパンデミックへの初期対応が評価されていた昨年6月の40%から、今月は約33%にまで落ち込んでいる。
■ドイツ2州議会選、メルケル首相の与党CDUが大敗-緑の党に追い風2021年3月15日
ドイツではメルケル首相率いる保守派政党に代わって緑の党が次期首相を輩出する確率が若干高まったようだ。14日行われた独2州の州議会選挙で、メルケル独首相率いる与党キリスト教民主同盟(CDU)が第2次大戦以来で最悪の敗北を喫した。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)への対応とワクチン接種ペースの遅さを巡る政府への不満が選挙結果に表れた。今回の選挙で大きな勝利を収めたのは緑の党で、西部バーデン・ビュルテンベルク州で10年にわたる第1党の座を堅持。隣接するラインラント・プファルツ州でも緑の党は善戦した。
9月の総選挙の結果、保守勢力と緑の党が連立を組む可能性は依然として最も高いが、14日の選挙結果からは別のシナリオも浮上している。環境保護を訴える緑の党は連邦レベルで1回しか政権に加わったことがないが、SPDやFDPなどとの連立政権を率いる可能性もでてきた。
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