2020-01-17

米中貿易戦争、第一段階の貿易合意、勝ったのはアメリカか中国か

800x-12018年3月に対立が本格化した米中貿易戦争、約2年にわたり続いた対立も第一段階の合意に達し、ニューヨーク株式市場ダウ工業株30種平均は29,000ドルを超え連日の最高値更新を続けています。このまま、米中貿易摩擦は収束して行くのでしょうか、状況を調べてみました。

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まず、昨年3月に本ブログで米中貿易戦争を取り上げて以降の動きですが、この当時は中国の株価操作でトランプ大統領が妥協するかと思われましたが、5月には中国側がアメリカの提示した条件を拒否して交渉は決裂、9月には第4弾の制裁が発動されるところまで、状況は悪化しました。中国が拒否した理由は、中国の国家体制(国家主導の経済運営)の転換まで求められ、中国国内の反発が大きかったからのようです。

それが、昨年10月には部分的な合意、第一段階の合意に達することになった理由ですが、トランプ大統領は第4弾の制裁の効果で中国が妥協した、アメリカの勝利と訴えていますが、実態は違うようです。

中国は問題が発生した当初から、個別の協議には応じるが、中国の体制にかかわるような内容は妥協しないという姿勢で一貫していました。これに対して、トランプ大統領も中国の体制自体を変えないと個別の内容だけでは協議に応じない、と主張してきたのです。

この部分に限ってみると、妥協したのはトランプ大統領であり、中国ではありません。取引の内容だけを見ると中国が輸入枠の拡大などの約束をしており、一見、中国が譲歩したように見えますが、そのぐらい譲歩しても中国にはまだメリットがあるということに過ぎないでしょう。

今年の大統領選挙に向けて、ウクライナ疑惑での弾劾などのマイナス要因を抱えるトランプ大統領にとって、ここで経済政策でポイントを挙げる必要があり、名よりも実を取る形で譲歩したものと思われます。

今のところ、GDPではアメリカが第1位、中国が第2位という関係ですが、経済競争力では中国が完全に上回っていまうす。今回の米中貿易戦争でたとえ中国が譲歩したとしても、それは中国に譲歩する余力がある、つまり根本的には中国のほうが勝っているから譲歩できるのだと言えます。

 

■メンツかけ全面対決 泥沼化の米中貿易戦争で習近平主席を待ち受ける“地獄”2019年5月14日

米中の貿易戦争が制裁と報復をエスカレートさせ、泥沼化している。ワシントンでの米中通商協議が「物別れ」のまま終了すると、アメリカ側は10日に発動した制裁「第3弾」の関税引き上げに続き、13日には3000億ドル(約33兆円)、3805品目に25%の関税を上乗せする「第4弾」の詳細を発表した。一方、中国側も13日、アメリカの制裁第3弾への報復措置を発表した。600億ドル(約6.6兆円)相当の米国製品にかけている追加関税を、現在の5~10%から最大25%に引き上げるもので、来月1日に発動される。

背景には「中国が一旦合意した内容を覆し、協議を後退させている」という不満があった。中国側も反発を露わにしている。中国の交渉トップ劉鶴副首相は協議終了後、「重大な原則の問題において中国側は決して譲歩しない」と明言した。

中国が態度を硬化させた背景には、国内の保守派の反発がある。特に、国有企業への補助金の見直しなど、中国の国家制度の根幹に触れる部分で、「習近平政権はアメリカに譲歩しすぎだ」という不満が噴出した。ここで譲れば、中国共産党の一党支配体制そのものが揺さぶられかねない。その危機感が習主席にまでおよび、中国側が態度を硬化したと考えられる。

トランプが米中貿易摩擦を起こした理由とは2019年10月9日

名目GDP(国内総生産)ベースで、アメリカは世界1位、中国は世界2位の経済大国だ。米中貿易摩擦とは貿易の不均衡などをきっかけとした両国の対立のことで、2018年7月に始まった。アメリカが中国からの輸入品に制裁として高い関税をかけ、これに対して中国政府も報復関税で対抗している。

アメリカにおける対中貿易赤字が近年増加傾向にあり、トランプ大統領はこの不均衡を是正することで自国の企業や産業を守ろうとしている。アメリカの貿易赤字において、対中赤字は2018年時点で全体の約5割を占めている。アメリカが主張する中国による知的財産権侵害問題なども、米中貿易摩擦を引き起こした一因だ。アメリカは、これまでもたびたび中国のサイバー攻撃やスパイ行為を批判してきた。中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)に対しては、安全保障上の脅威があるとして輸出禁止措置を発動している。

最初(第1弾)の制裁は2018年7月に実施され、半導体や自動車、産業用ロボットなど800品目以上に対して25%の追加関税をかけた。これに対し中国は、アメリカが第1弾の制裁措置を行った同日に牛肉や自動車などの500品目以上に同じく25%の追加関税をかけるという報復措置を取った。

第2弾は翌8月に実施され、トランプ政権は25%の追加関税をかける品目をさらに拡大し、プラスティックやゴム製品、通信部品なども対象とした。中国も同様に25%の追加関税の対象品目を拡大するかたちで応戦している。

9月の第3弾では追加関税の対象品目が一気に増え、アメリカ政府は水産品や農産品、家具など5,000品目以上を対象に10%の追加関税を決め、中国も同様に対象品目数を増やして対抗した。2019年6月には第3弾の税率を10%から25%に引き上げ。

2019年9月の第4弾は、第3弾で対象品目に加えた家電や消費財などに15%の関税を上乗せするというものだ。10月には一部品目の追加関税を25%から30%に引き上げ、さらに12月にはノートパソコンやスマートフォンなどについて10%から25%に引き上げる予定だ。中国もアメリカの大豆などの農産品に関税を課した。

米中貿易協議が進まない2つの理由2019年10月13日

協議がうまく行かない2つの理由。1つは、アメリカは中国の黒字が大きいとか小さいという話ではなくて、中国共産党の指導の下での政治化された経済システム、諸々の中国に有利なこのシステム自体を変えてくれと言っているのですよ。それに対して中国は、個別の譲歩なら可能だけれども、共産党の指導なんて、とてもではないけれど譲れるはずがありません。

もう1つは、アメリカの大統領選挙です。トランプさんは選挙のために、中国との問題で得点しようと思っていますが、中国はなぜこんな奴に譲歩しなくてはいけないのかと思っている。もしかしたら来年(2020年)トランプさんは負けるかもしれないではないですか。それなら様子を見ようと普通なら思います。となると、どう考えてもうまく行くわけがないではないですか。

米中貿易部分合意も完全合意は見通せず2019年10月15日

米国と中国は、10月10、11日の2日間ワシントンで開かれた貿易を巡る閣僚級協議を受けて、部分的な合意に達した。トランプ米大統領はこれを「第1段階の合意」と表現している。

トランプ政権は、昨年7月以降に制裁関税第1~3弾として発動した2,500億ドル相当の対中追加関税の税率を、10月15日に25%から30%へと引き上げる予定だったが、今回の合意を受けてこの発動を見送ることを決めた。12月15日に実施予定の約1,600億ドル分の中国製品への追加関税率引き上げ措置については、現状では撤回していない。

今回、中国が受け入れた合意内容は、昨年、米中貿易摩擦が始まった時から、中国側は受け入れる姿勢を明らかにしていたものばかりだ。輸入拡大で対米貿易黒字を大幅に削減する施策を、中国政府は当初から検討していた。今回の部分合意には、中国側が新たに米国側に大きく譲歩したという要素は見当たらない。中国政府は体制変更に関わる部分では、がんとして譲らなかったのである。合意が成立したのは、中国の経済体制の変革という要求を一度ひっこめ、簡単に合意できる部分で合意することを受け入れた、トランプ政権側の譲歩によるものだ。

そして、トランプ政権がこのような譲歩を見せたのは、来年の米大統領選挙戦への配慮であることは間違いない。下院で大統領弾劾調査が始められるなど、政権に強い逆風が吹く中、来年早々に米大統領選挙戦が本格化する前に、対中貿易協議で何らかの外交成果を有権者にアピールしておきたい、という狙いがあったはずだ。

しかし、米中貿易対立の本質である、米中間の経済体制を巡る覇権争い、つまり米国の「市場主義」と中国の「国家資本主義」との対立が解消されるめどは全く立っていない。米国議会で民主、共和双方に広がる強い反中姿勢を踏まえれば、仮に米国で政権交代があったとしても、大国間の覇権争いはなお続くだろう。半永久的に続くのかもしれない。

米中貿易問題、第1段階合意でまた「痛み分け」2019年12月16日

13日発表された米中のいわゆる第1段階の合意に基づくと、トランプ氏は対中関税を徐々に引き下げ、習近平氏は米農産品の購入を拡大すると約束した。これは限られた範囲で事態を安定させたが、企業や両国の投資家、労働者は米中摩擦が始まる前よりもつらい状況に置かれたままだ。

米国は1200億ドルの中国製品の関税を引き下げ、他の関税も下げる可能性が出てきた。また15日に予定されていた新たな対中関税の発動は中止され、その代わりに中国は米国の農産品やエネルギー、金融サービスの購入を増やす。

たとえ合意内容は薄くても、市場にとって一時的に追い風となり、トランプ氏の弾劾問題から人々の注意をそらす効果はあるだろう。それでも米中対立で生じた相当な痛手はそう簡単に修復できない。国際通貨基金(IMF)は10月、貿易戦争が20年の世界の総生産を7000億ドルも押し下げる恐れがあると警告した。

2020年の米中貿易交渉が楽観視できない理由2020年1月2日

2018年に米中両国が互いに関税を掛け合う貿易戦争が始まって以降で、アメリカが関税を部分的にせよ緩和するのは、今回が初めてだ。しかしながら、今後は交渉の進展を示唆するような当局者の発言やニュースが、これまでのようにポンポンと飛び出してくるのかは疑わしい。以前は完全な合意でなければ行う意味はないと、自らの要求を頑固に押し通し、強硬な姿勢を緩めなかったトランプ大統領も、まずは第1段階の合意をまとめるという方向に転換して以降は、合意が近いとの楽観的な見通しを何度もツイッターなどで発信し、そのたびに市場が反応し株価を押し上げるというパターンが続いていた。

その合意可能な部分だけをまとめるはずだった第1段階の交渉でも、ここまで難航したのである。今後はいったん棚上げせざるをえなかった、より厳しい交渉が待ち受けている。関係者もここから先は交渉が進展しているとは簡単には言えなくなるだろうし、仮にそうした楽観的な見方を示したとしても、市場が以前ほどには反応しなくなるのではないか。

米中、第1段階の貿易合意に署名-中国は2年で22兆円の追加購入2020年1月16日

合意文書には、中国の企業および政府機関による米国の技術と企業機密の窃取に対し中国側が取り締まりを強化するとの公約のほか、対米貿易黒字の縮小に向けた中国による今後2年間で2000億ドル(約22兆円)相当の追加購入計画の概要などが盛り込まれた。貿易上の優位性を得るための為替操作を中国が控えることや、合意を確実に履行させるための制度も合意文書に明記された。過去の米政権が中国との間で行っていた経済対話も再開させる。

今回の合意では、中国の国家資本主義モデルの中核を成す補助金の改革などの問題は手つかずのままとされた。こうした課題の多くは第2段階の交渉で取り上げるとトランプ政権は説明するが、協議開始の時期や合意取りまとめにかかる期間は不確定だ。さらに、米国が中国からの輸入に課している関税の3分の2程度は維持され、トランプ大統領は15日、中国が一層の改革に応じるまで重要な取引材料として温存する考えを示した。

第1段階合意により、中国は海賊版のオンライン販売阻止などへの取り組み強化や、企業機密を窃取した者に刑事罰を科すことが義務付けられた。また中国は、合意発効後30日以内に、知的財産に関する公約の履行方法を説明する行動計画を提出するよう求められた。  合意には、中国が同国に投資する米企業に対し、合弁相手への技術移転を強制することや、戦略的技術の取得を目的にした中国企業による海外企業買収を中国が支援・指示することをやめるとした広範な公約も含まれる。

第1段階合意は中国が極めて幅広く購入を公約したという点でユニークだ。15日に公表された合意文書によると、中国が2021年12月までの2年間で追加購入を約束したのは航空機を含めた製品777億ドル相当のほか、農産品320億ドル、エネルギー関連524億ドル、サービス関連379億ドル。

NY株、連日の最高値 267ドル高、米中合意好感2020年1月17日

16日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は4日続伸し、前日比267.42ドル高の2万9297.64ドルと、過去最高値を2日連続で更新して取引を終えた。米中貿易協議の「第1段階」合意の署名を好感する買いが続いた。

List    投稿者 dairinin | 2020-01-17 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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