2011-08-22

米国債務問題の今後を読み解く 1.予算削減が州政府、自治体に打撃を与える

米国連邦政府の債務上限引上げは、タイムリミットの8月2日に、議会にて暫定合意が成立しました。引上げ幅は2兆1000億ドルです。連邦政府が必要とする借金額は、年間1兆ドル以上ですから、約2年間は凌げるのです。

債務上限引上げには、財政削減の条件がついています。10年間で約2兆4000億ドルの削減です。

家計に例えれば、「10年間で2400万円の消費を減らしますから、2100万円を追加して貸して下さい」という言い訳になります。

個人や中小企業の場合は、上記の理屈では、銀行は決してお金を貸してくれません。国家になると、このような論理が堂々とまかり通るのですね。

しかし、10年で2兆4000億ドル、1年間で2400億ドル(約18兆円)の削減ですから、相当の影響がでます。

米国では、多くの州で財政危機が伝えられています。そこで、今回は、連邦政府の財政削減から州政府デフォルトへの動きを予想してみました。

1.米国における連邦財政と州財政・地方財政
2.苦境に立つ州政府、主要州で財政不足が巨額に
3.連邦政府・ワシントンは、州政府を見殺しにする 

いつも応援ありがとうございます。本文にいくその前にクリック!

にほんブログ村 経済ブログへ


1.米国における連邦財政と州財政・地方財政

まずは、州政府財政と連邦政府財政のイロハを見てみます。米国は、州を基本単位とする連邦国家ですので、州政府財政の独立性が高いことが特徴です。州政府は独立して税を定めることができ、連邦政府の干渉を受けません。

連邦、州・地方の歳出規模 
 
・連邦政府の支出は2兆4722億ドル、対GDP比20.1%(2005年度) 
・州政府の歳出は1兆3590億ドル、対GDP比13.0%(2003年度) 
・地方の歳出は1兆1940億ドル、対GDP比11.4%(2003年度) 
 
・州歳出の構成は、地方自治体向け歳出28.5%、教育12.7%、公的福祉18.7%、保険信託支出11.5%、ハイウェイ5.6%(2002年度) 
 
・地方歳出の構成は、教育37.9%、警察4.8%、病院4.4%、公益事業支出10.5%(2002年度)

連邦政府の歳出と(州政府+地方)の歳出は、ほぼ同額ですね。地方とあるのは、カウンティなどと呼ばれる地方自治体です。

州政府は、教育、福祉、ハイウエイ維持に予算を使い、地方自治体は、教育、警察、病院などに予算を使っています。ロス市警とかいいますね。地方自治体の財政が厳しくなると、学校を閉鎖し、警察官の人数を減らす背景です。

ほとんどの州では均衡予算要求を置いており、州憲法または州法によって、州予算を公債発行に頼らずに均衡させることをルールづけている。 
 
一般財源債(州政府、自治体の借金)については州法により、発行額上限規制、地方議会の議決・住民投票の義務付け、発行利率上限規制等の規制が設けられているケースが多い。 
 
・州の借入残高は6979億ドル(2003年度) 
・地方の借入残高は1兆1147億ドル(2003年度) 
・連邦の借入残高は7兆9053億ドル(2005年度末時点)

州政府、地方自治体の財政は、均衡予算が原則です。歳入(税収)の範囲でしか歳出(支出)ができないのです。そして、不足した場合の借金(一般財源債)は殆んどできないのですね。

だから、州の借金は7000億ドル、地方自治体の借金は1兆1000億ドルに止まっています。対して、連邦政府の借金は7兆9000億ドルと膨大です。(2003年度、2005年度)

州や地方自治体が財政規律を守り、借金せずに遣り繰りしているのに対して、連邦政府が借金を拡大させているのです。

連邦政府から州・地方への補助金 
 
連邦が交付する州・地方への補助金の規模は大きく、州・地方歳入の31.9%、連邦支出の17.7%を占める(2004年度)。中でも医療・福祉分野の補助金が大きい。 
 
地方政府破産に関するルール 
 
連邦破産法第9章に地方の破産条項が設けられている。 
 
危機的自治体に関する中央政府の支援 
 
連邦の州に対する支援措置は原則として行われない。地方自治体に対しては州が独自に支援を行うケースがある。

連邦政府から、州政府・地方自治体への補助金は約4000億ドル(支出の17.7%)という規模ですね。補助金の分野は医療・福祉分野が中心です。

連邦政府から補助金は出しますが、破綻状態に陥った州政府、地方自治体を連邦政府は基本的には救済しません。連邦破産法に基づき破産させるのです。

2.苦境に立つ州政府、主要州で財政不足が巨額に

2008年のリーマンショックは、州政府の財政を直撃しています。経済活動の縮小は所得税の大幅減収をもたらし、住宅・不動産産業の急落が資産税の減収をもたらしています。

サブプライムローンの破綻により、住宅差し押さえが急増したカリフォルニア州で、州の金庫が空っぽになり、借用証で凌いだことがありましたね。

現時点での州財政はどうなっているか見てみましょう。日本総研リサーチ・アイの『一段と悪化する米国州財政〜深刻な有力州財政と反対運動拡大の懸念〜』です。

(1)アメリカでは、公務員の団体交渉権の制限など歳出削減に向けた各州の取組が本格化するなか、反対運動がウィスコンシン州からオハイオ州、インディアナ州に拡がる。もっとも、各州の動向をみると、歳出削減策を断行しても、2012年度の歳入不足の規模が11年度よりも悪化する州は全米のほぼ3分の1。 
 
(2)しかし悪化する州を個別にみると、テキサス州やカリフォルニア州をはじめ軒並み有力州。 
 
そこで、12年度の歳入不足額をみると、カリフォルニア州の254億ドルを筆頭に、イリノイ州150億ドル、テキサス州134億ドル、ニュージャージー州105億ドル、ニューヨーク州90億ドルと、いずれも巨額の歳入不足(図表2)。 
 
それら5州を合計すると不足額は733億ドルに上り、全米各州の州政府歳入不足合計に占めるシェアは58%とほぼ6割。 
一方、ウィスコンシン州やオハイオ州、インディアナ州は合計しても歳入不足は51億ドル、全体に占めるシェアも4%。 
 
アメリカ経済に対するインパクトという視点からみると、まず有力州の動向が鍵。 
 
 
 
ポップアップです。 
 
一段と悪化する米国州財政

米国の大きな州が軒並み大きな財源不足に陥っています。

(3)加えて、州政府の取組や、それに対する反対運動という視点からみると、州財政の規模が小さくても運動の拡がりという側面も。 
 
すなわち、現時点では公務員の抗議運動という側面に脚光が当たっているものの、歳出削減策は住民サービスのさらなる削減を柱とするケースが多いだけに市民運動に拡がる懸念は払拭されず。ちなみに、現時点で分野別に歳出削減を計画している州の数を米CBPP調べ(11年2月25日発表)でみると、初等中等教育で16州、高等教育15州、医療サービスでは23州に。小さな政府を指向するティー・パーティー運動が盛り上がるなか、米国公的セクターでは連邦レベルに加え、州財政の行方が焦点に。

州財政の削減は、自治体向けの教育予算の削減・自治体の学校閉鎖、州立大学の縮小、州及び自治体の病院閉鎖へとつながります。

米国の草の根である州及び地方自治体が大きく疲弊しています。

3.連邦政府・ワシントンは、州政府を見殺しにする

州及び地方自治体が財政削減に苦慮しています。ウィスコンシン州では、州政府と州職員労組が対立し、大規模なデモが続きました。

共和党のスコット・ウォーカー知事が17万人の州職員の団体交渉権を制限する予算案を提示し、それに労組が抗議したことに端を発している。ウォーカー知事は、現行予算の赤字分1億3700万ドルと向こう2年間の予算の不足分36億ドルを補うために必要な措置だとしている。 
 
  110228_Pro-Union_Rallies_jpg.jpg 
 
米ウィスコンシン州の労組デモ、全米に波及

州、地方自治体が苦境に立たされている上に、今回の連邦債務の上限引上げ=連邦財政の削減が追加されるのです。

米国の各州は連邦政府債務の上限引き上げに関する議会合意に基づいて連邦政府からの補助金が削減されるかどうか警戒姿勢を強めている。 
 
州政府当局者らは債務上限法案による各州への影響の詳細について分析している。 
 
今回の合意で米国のデフォルト(債務不履行)と政府機関の閉鎖が回避された。州の借り入れコスト上昇や連邦政府からの資金流入打ち切りという危機は当面回避されたものの、州政府は連邦政府からの補助金が削減されれば州財政の新たな重荷になると懸念している。州財政は4年連続の財政赤字に陥るリスクに直面している。 
 
コネティカット州のケビン・レンボ会計検査院長は発表文で「連邦債務に関する議会採決の行方がコネティカット州の財政見通しに暗い影を落としている」と述べ、「連邦支出の削減で大幅な財源カットという結果となれば、われわれが毎年依存する資金が突如消え去る恐れがある」との懸念を示した。 
 
米歳出削減、州財政に打撃 債務上限法案、成立で補助金カットも

連邦債務の上限引上げの条件として、12月末までに、議会の特別委員会で10年間1兆4000億ドルの削減案をまとめることになっています。

巨額な軍事予算に本格的に手をつけない限り、連邦政府からの州政府への補助金は大幅に削減されるのです。

そして、カリフォルニア州のように、いくつもの州が借用証発行に追い込まれます。

しかし、ワシントン(連邦政府と議会)は、州政府や自治体を手助けするつもりは無く、大恐慌時の1933年以来起こっていなかった、州政府デフォルトに至る可能性が高まっています。

1月6日(ブルームバーグ):米下院予算委員会のポール・ライアン委員長(共和、ウィスコンシン州)は6日、共和党は州政府をデフォルト(債務不履行)から救うことはしない方針だと指摘した。 
 
ライアン委員長はワシントン近郊で開かれたフォーラムで、「われわれは救済に関心がない」と述べた。州政府がデフォルトにひんした際にどう対応するかとの質問に対しては、一部の州が「すでにそういう状況だと伝えてきている」と語った。 
 
米調査機関の予算・優先政策センターが先月16日公表した試算によると、州政府の財政赤字は来年度(2011年10月−12年9月)に計1400億ドル(約12兆円)に達する見通し。 
 
州政府のデフォルトはアーカンソー州が債務不履行に陥った1933年以来、起きていない。 
 
ライアン委員長は「つましい州の納税者が放漫な州の納税者を救済すべきだろうか」と疑問を投げかけた上で、「請求書を期日通りに支払い、手堅く財政運営してきたインディアナ州の納税者が、そうしてこなかったカリフォルニア州の納税者を救済すべきだろうか。答えはノーだ。それはモラルハザード(倫理観の欠如)で、こうした状況を生み出すことに関心はない」と強調した。 
 
ライアン米下院予算委員長:州政府をデフォルトから救済しない方針

連邦政府の財政は、2年間の猶予を確保しました。米国の政府債務の焦点は、連邦政府デフォルトから州政府のデフォルトへと移りました。それも大きな州政府のデフォルトです。

リーマンショック後の金融秩序崩壊を受け、ワシントン・連邦政府は、7000億ドルの金融救済資金を投入しました。この資金は、銀行と保険会社、住宅専門金融会社の救済とその役員の高額報酬に使われ、草の根(州及び地方自治体)レベルにまでは達していません。

苦境に陥っている州及び地方自治体レベルからみると、連邦政府(及び議会)は金貸し達の手先と見えるのです。それを象徴するのが、ロン・ポール議員の「FRB解体論」ですね。

この反ワシントンの感情の高まりが、ティーパーティ(茶会)運動の基底部にあります。

そこで、明日は、ティーパーティ(茶会)派を見てみます。

List    投稿者 leonrosa | 2011-08-22 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨1 Comment » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2011/08/1677.html/trackback


コメント1件

 keywords3 hermes bags | 2014.02.02 9:43

hermes zentrale 金貸しは、国家を相手に金を貸す | 新政権で2013年の日本どうなる?〜原発問題〜

Comment



Comment


*