2017-06-29

アメリカ大統領選挙以降の世界の選挙の共通点

仏大統領選、マクロン氏とルペン氏が決選投票へ2016年11月8日のアメリカ大統領選挙以降、2017年5月7日フランス大統領選挙、2017年5月9日韓国大統領選挙、2017年6月9日イギリス総選挙と世界で大きな選挙が続きました。勝者を右派左派とグローバリズム、ナショナリズムで大きく分けてみると、それぞれの政治姿勢が結構バラバラなのには驚かされます。

アメリカのトランプ大統領は右派、ナショナリズム。フランスのマクロン大統領は中道(左派?)、グローバリズム。韓国のムン(文)大統領は左派、グローバリズム?(明確な主張は見当たらないが貿易抜きで韓国経済は成り立たない)。イギリスは右派保守党が勝ったとはいえ大きく議席を減らし左派労働党が躍進。どちらもEU離脱を支持しナショナリズム。

こんな状況で、右も左も、グローバリズムもナショナリズムも入り乱れ、世界がどこに向かって行こうとしているのか、明確な方向は見えてきません。しかし、唯一共通していることがあります。それが、これまでの政治への失望=変革期待です。

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各国に共通する変革期待の発生原因は何でしょうか。韓国では、朴大統領が罷免されたり、イギリスでは国民投票でEU離脱が決まったり、フランスはEU離脱派の極右勢力に対する危機感があったり、国ごとに特殊な要因も色々ありますが、どの国にも共通しているのが経済の行き詰まりと経済格差の拡大です。

なぜ、こんなことになったのかは明らかで、全世界がグローバリズムの波に飲み込まれたからです。グローバリズムという言葉は、世界が一つになるようなイメージで、言葉だけ聞くと良いことのように錯覚させられてしまいますが、その正体は、全世界を巻き込んだ弱肉強食の自由競争です。

何故、グローバリズムが世界を席巻したのか。出発点は貧困の消滅と消費の停滞でした。1970年日本は世界に先駆けて物的な豊かさを実現しました。すると、各家庭に様々な商品があふれるようになり、物的欠乏=消費意欲は衰弱し、高度経済成長は終わり経済の停滞期に入ります。世界の先進国が同じような状況になったのが現代で、世界的な経済停滞が発生しました。その突破口として期待されたのがグローバリズムでした。

世界の経済障壁を無くせば、世界経済の活力は再生するのではないかと期待され、世界中がグローバリズム頼みの経済政策を採用しました。しかし、経済の衰退の原因は貿易障壁ではなく、物的欠乏=消費意欲の衰弱ですから、経済は再生しません。それどころか、自由競争で富が一部の大金持ちにさらに集中し、大多数の大衆は貧しくなり、さらに消費が減退すると言う悪循環にはまり込んでいます。

この結果、世界中で経済の停滞と貧富の格差が拡大し、大衆はどの国でも、これまでの政治に失望し変革期待を強く持っているのです。しかし、誰もこの壁を超える新たな政策を打ち出せないために、従来の政治に反対する声の大きさだけで選ばれ、右も左も、グローバリズムもナショナリズムも入り乱れた世界になってしまっているのです。

市場経済の発展は人間の物欲の限界、地球環境の限界の両面から最早限界であり、本当に社会を変革するためには、物的豊かさ=経済追求に変わる新たな活力源を見出す必要があります。経済拡大を目標にし続けている限り、どんな政策も上手く行かず、当分の間、この混乱状態が続くのでしょう。

 

■イギリス総選挙2017年6月9日

若者が動かしたイギリス総選挙。コービンが選ばれた理由と日本への示唆

メイ首相は保守党の高い支持率を背景に(解散当時は保守党の支持率は44%、労働党は23%)、EU離脱を円滑に進めるため解散・総選挙を打ち出したが、結果は見事に失敗、逆に議席を失うこととなった。一方、最大野党であり ジェレミー・コービン率いる労働党は躍進。この躍進を支えたのが若者の動きにある。ではなぜ今回若者はコービンを支持し、投票に行ったのか。最大の理由は「反緊縮」という強いメッセージだ。

保守党のマニフェストは、「現実主義的」に社会保障での国民負担を増やし、子どもや看護師の貧困削減よりも財政健全化を目指すものであり、Brexitについて多くのページが割かれたものであった。

対する労働党のマニフェストは、医療サービス(NHS)への大規模支出と大学授業料の再無償化(+奨学金返済の清算・減免も検討)など、国民の不満をいかに解消するかという「希望に満ちた」政策パッケージであり、緊縮政策を止めようという強いメッセージであった。

また、増税の対象として、労働党は高所得層への増税や大企業への負担増加を訴えたが、保守党は法人税の引き下げを主張するなど、大きな違いが見られた 。

■韓国大統領選挙2017年5月9日

革新系の最大政党「共に民主党」のムン・ジェイン(文在寅)氏が当選。ムン氏は勝利宣言の中で、「私を支持しなかった人たちのためにも働く」と述べ、選挙戦で改めて浮き彫りになった保守と革新との対立を和らげ、国の統合を図る姿勢を強調しました。

罷免されたパク・クネ前大統領を厳しく批判し、政権交代が必要だと訴えたことで、これまでの政治に失望し新しい政治を望む国民から幅広い支持を集めたことが挙げられます。ムン氏は、パク前大統領の弾劾を求める大規模な集会に参加して、先頭に立って前大統領を罷免に追い込んだとして、特に若い世代や、ソウルや首都圏の無党派層から人気を集めました。

■フランス大統領選挙2017年5月7日

今回のフランス大統領選挙は、これまでにない異例づくしの展開となりました。現職のオランド大統領は支持率が10%台と、過去最低の水準で低迷し、2期目を目指す立候補を断念したほか、与党の社会党や最大野党の共和党の統一候補を決める予備選挙で、最有力の候補が相次いで敗れる波乱が起きました。

予備選挙で決まった社会党と共和党のそれぞれの統一候補も1回目の投票で得票を伸ばせず敗れ去り、長い間、政権を交代で担ってきた左派と右派の伝統的な2大政党が、いずれも決選投票にすら進めないという事態となりました。二大政党の候補者がいずれも決選投票に進めなかったのは、現在の制度での大統領選挙が始まった1965年以来初めてです。

既存の政党に対する根強い不満が表面化した形で、決選投票では「右でも左でもない」と訴える中道で無所属のマクロン候補と、「右も左も結集しよう」として急進左派の支持者にまで支持を呼びかける極右政党・国民戦線のルペン候補の2人が大統領の座を争いました。

■アメリカ大統領選挙2016年11月8日

トランプ氏の勝因は。共和党のトランプ氏は、政治経験がない、いわゆる「アウトサイダー」であることをアピールし、既存の政治に強い不満を抱く有権者から熱狂的な支持を集めました。「メキシコとの国境に壁を築く」といった過激な主張を繰り返し、共和党の主流派から反発を招きましたが、こうした主張やオバマ政権の8年間の政策について厳しい批判を繰り返したことが、現状に不満を抱く有権者の共感を得たものとみられます。また、「アメリカを再び偉大にする」というスローガンを掲げるなど、トランプ氏は、外交と内政の両面でアメリカの国益を最優先にする方針を示してきました。

こうした主張が、かつて盛んだった製造業が衰退しているオハイオ州など中西部の地域の特に白人の労働者層の間で支持を拡大し、これまで民主党が優勢だった州でもトランプ氏が支持を獲得する結果となりました。

民主党のクリントン氏は、ファーストレディーや上院議員、国務長官を歴任しましたが、共和党のトランプ氏から「既存の政治家」と位置づけられ、現状に不満を抱く有権者が離れて幅広い支持を得られなかったものと見られます。また、ウォール街から多額の献金を受けるなど「富裕層の代表」とも見られ、格差の拡大に不満を抱く若者を中心に根強い反発がありました。

List    投稿者 dairinin | 2017-06-29 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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