追い詰められたアメリカ〜州財政が崩壊寸前!?
アメリカが金融危機のインパクトの大きさから、内部崩壊する様相を見せ始めた。
昨年来から徐々に騒がれだした、GDPにすると世界第8位の国家に相当する「カリフォルニア州」の財政危機がいよいよ深刻化し、今月末にも破綻を迎える可能性が高い。
元映画俳優で、同州知事を務めるシュワルツネッガー氏(共和党)が、財政建て直しのために対策案を出しては奔走しているが、議会や市民は笛吹けど踊らずの状態。
歳入を見込んだ増税案は住民投票で否決され(2009年5月19日)、6月15日までに州議会が予算を決議しなければ、6月27日には現金が枯渇するという異常事態となっている。(参考記事:アメリカ経済ニュースBlog)
しかも、歳入の可能性がほぼ閉ざされた以上、次に諮られる予算の歳出カットは非常に厳しい内容になっているようだ。
具体的に見てみると… 🙄
・低所得者、失業、障害者の医療保険「Medi-Cal」を削除
・高校までの義務教育を廃止
・軽犯罪者を対象にした約4万人の囚人を釈放
・公共交通機関の支出削減
・1700人の消防隊員のリストラ。20万人いる州職員の5%給与カット
特に州が資金を搬出する「Medi-Gal」の大幅な予算削減が見込まれている点は注目される。
州人口約3,500万人の内、約200万人の住民が、十分な医療保険を持たない状況に陥る。低所得者が病気にかかっても、まともに医療を受けることができず、苦しむことになる。
また、囚人が街中に解放されていく法案が公に議会に諮られている状況に、カリフォルニア州が今、相当追い詰められている状況が理解できる。
なぜ、ここまで財政が悪化したのだろうか?
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Point.1 州議会3分の2ルール
予算を承認するためには、州議会で3分の2の多数票が必要。これはカリフォルニア州を含め全米で3つしかない。
州議会の上下両院で共和党と民主党の議席が拮抗しているため、ありきたりの議案を別にすれば、3分の2の多数票を獲得するのは至難の業。(参考記事:JB PRESS6月4日)
Point.2 住民投票システムが足かせに
カリフォルニア州では1911年以来、住民投票のシステムを採用している。
この機能としては、大きく3点。
「イニシアチブ」…州議会を通さず、住民投票で州法の制定や改正を行う
「レファンダム」…州議会が可決した法律を否決する
「リコール」…州政府職員を住民投票で罷免
と、時に議会以上の強力なパワーを持つ。⇒歳入アップのための増税案も否決
50万人以上の署名が一般的に必要。
Point.3 歳出の7割は既に使い途が決まっている
上記住民投票により、1998年に歳入の最低4割は教育に割り当てなければならなくなった法改正が代表例。他にメディケアなどの既に支出先が決まっているコストを加えると、実に7割の支出先が決まってしまう。よって、財政赤字に取り組まねばならない予算は、残り3割に限られる。
Point.4 個人所得税に依存する歳入
カリフォルニア州に限った話では無いが、州財政では、景気の動きに連動しやすい個人所得税への依存度が高い。少しデータは古いが、2002年12月段階での財政赤字380億ドルの内、半分の177億ドルは税収減。その69.5%=123億ドルは、個人所得税が占める。
特に年収50万ドル以上の州民が、州所得税の40%を占め、バブル崩壊から金融危機をきっかけに、株や不動産・建設業で稼いでいた州民の収入が急減。それに比例して歳入も減少していった。
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金融崩壊で減り続ける歳入。過去の法律や制度で固められた歳出。
一方で、与野党で膠着する議会。市民からの増税反対要求。
もはや州単位での財政解決策はガンジガラメで身動き取れないのだろう。
最終的には連邦政府(国家)が何らかの支援に乗り出さざるを得ないと思われるが、全米50州の内、46州が大幅な財政赤字状態に陥っているという情報もある。(参考記事:田中宇の国際ニュース解説)よって、カリフォルニア州だけ特別扱いというわけにもいかないだろう。
さらに、政府とて財源不足⇒米国債発行⇒信用不安から金利上昇⇒資金調達コストアップ、
という追い詰められた財政事情の中で、州の財政を抱える余裕はあるのか?
※アメリカの州財政の約8割は自主財源によって賄われている
残された歳出カットの可能性として、低所得者層がターゲットになっていると思われるが、医療を初めとする支援制度が細り、囚人解放の話も出る中、追い詰められた州から暴動へと発展→内部から崩壊してく可能性が、現実味を帯びている。
参考資料
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コメント13件
ふぇりちゃん | 2009.12.24 14:33
TVの街頭インタビューで、「景気回復、どうにかして欲しい」「給料もボーナスも減って、今後どうなっていくのか不安だ」「政権交代したけど、この先どうなる!?」などと言われている国民が多いと感じました。
この国民の想いと、国のバラマキ政策やエコ減税、企業の新商品発掘などの目先的な活動はまったくズレていると想います。目先的なものなんて、誰も求めていない。
このカチコチ頭の国や私権企業に、国民の意識や新たな可能性(類的供給)に気付いてもらうために、私たちにできること。
ネットでの発信も、その手段の1つなんですね♪
にしか | 2009.12.24 19:25
>この類的需要とは、皆の役に立ちたいという欠乏で
もあり、供給者を育成することそのものが新たな需要となる。
『皆の役に立ちたい』という欠乏は、多かれ少なかれみんな感じてますよね☆
「どうすれば、皆の役に立てるか』という答えを提示することが、新たな需要になるんですね!
記事を読んで、『物を売る』市場から『認識生産』の場へ転換の時なんだって、気づきになりました☆
クリスマス体操 | 2009.12.24 19:27
今必要なのは、「金」の供給ではなく、「答え」の供給ですね!
minezo | 2009.12.24 19:30
経済を回復させることとはお金の循環を良くすること、経済を回復させる目的は人々の活力を高めること、というふうに考えられれば、筆者の言う供給発への発想の転換の重要性が良くわかるような気がします。
shushu | 2009.12.24 19:31
「需要」ではなく、「供給」という視点から考えると、確かに、今までとは違った物の見方が出来そうな気になってきます。景気回復ではなく、社会の活力をUPするにはと問題を置き換えるためにも、「供給」発という発想は可能性が膨らむと思います。
kaku | 2009.12.24 19:36
肉じゃがさん コメントありがとうございます
どうすれば現在の経済理論や経済指標から転換できるか?というのはなかなか難しい課題ですね。
しかしGDP信仰や市場拡大絶対を唱えているのは経済学者や官僚やマスコミなど統合階級で、彼らの発信する観念によって、社会全体が閉塞しているのです。
まずは「こうすればうまくいく」という具体的な方針を提示して広めていき、最終的には統合階級との認識闘争で勝っていく、そして制度を変えることによって、社会全体が転換できると思います。
そのためにも、類的供給に着目して成功している実現体を、どれだけ作っていけるかがカギになります。
kaku | 2009.12.24 23:01
ふぇりちゃん コメントありがとうございます☆
「こうすればうまくいく」という発想の転換や、答えを広めていけば、みんな可能性に気づいてくれるはず。ネットはもちろんいろんな場面で発信していって、連鎖的に供給者を増やしていきたいですね!
kaku | 2009.12.24 23:16
にしかさん コメントありがとうございます☆
みんなの期待に応えていく「供給者」を育成していくことって可能性ありそうですよね。新しい事業として成立すれば、経済活動の停滞を突破できると思います。
kaku | 2009.12.24 23:36
>クリスマス体操さん
類的需要に対しては、供給(答え)が圧倒的に不足しています。その答えを作り出して広めていく活動に対してお金を使っていけば、供給がもっと拡大していくと思います。
kaku | 2009.12.25 0:32
minezoさん コメントありがとうございます
今の社会が、お金を使って経済活動を営んでいる以上、お金の循環をよくすることは活力上昇のためには必要です。
お金の循環を良くするためにも、すでに衰弱した物的欠乏にではなく、みなの期待に応えていくことにお金を使っていくような経済システムに換えていくことが求められます。
供給者になりたい人は、新認識を学ぶ場にお金を払うようになる。またそのような場を運営している企業に支援金を出す。そのようにして経済システムも変わっていくと思います。
kaku | 2009.12.25 0:44
shushuさん コメントありがとうございます
需要と供給という概念自体、これからの時代にはそぐわなくなってきていると思います。一方的に消費したり、稼ぐために生産するというのはもはや活力にならないですよね。
ただし過渡期の今は、物的供給は過剰なのに、類的需要は不足しているという極めて偏った状況です。
それを突破するためにも、敢えて、類的価値の供給が足りないんだという「供給発」の視点に立つことが重要なんだと思います。
wholesale bags | 2014.02.09 14:17
金貸しは、国家を相手に金を貸す | 【需要発から供給発へ】4.「需要発から供給発へ」
肉じゃが | 2009.12.24 13:13
今の市場の評価指標もGDP(どれだけ”消費”が行われたかどうか)である限り、筆者が言われている”需要発の発想”から抜け出すのは難しいのかなと思います。
需要があって初めて供給が成り立つ経済理論も”類的生産の供給者になりたい”という潜在的な需要に気づくことができれば、新たな経済理論も構築されうるのかも。
(これが、需要発から供給発という発想の転換か!)
新たな”必要か否か”とういう評価指標が、現経済理論(旧経済理論)を突破するにはどうすれば良いのでしょうか?