反グローバリズムの潮流(EU議会選挙、EU懐疑派を含めて現状に批判的な勢力が躍進)
注目していたEU議会選挙、旧勢力が過半数割れになりました、リベラル派、ナショナリスト党(EU懐疑派)が伸びたことから、多くのEU市民が現状に否定的なことは明らかになりました。EU懐疑派だけを取りだしてみると、30%を超えることはできず、投票前の予想は下回る結果でしたが、確実に勢力は伸ばしました。
マスコミ報道では、EU懐疑派が伸び悩んだと否定的に報道している例が多く見られますが、詳しく見て行くと、EU懐疑派が第1党になったのは、フランス、イギリス、イタリア、ハンガリー、ポーランドと主要国で躍進が見られ、特にフランスでルペン氏率いる国民連合がマクロン大統領率いる共和国前進を破ったのは、大きな出来事です。
イギリスでは、ナイジェル・ファラージ氏率いるブレグジット党が開票序盤での得票率を32%としており、第1党となる見通し。
フランスではマリーヌ・ル・ペン氏が率いる国民連合(RN)が得票率24%で、マクロン大統領の共和国前進(22.5%)を破って第1党となった。
イタリアではサルヴィーニ氏の極右政党・同盟が30%の得票率を確保している。
ハンガリーでは、反移民を掲げる与党の右派フィデス・ハンガリー市民連盟が52%と大勝し、ハンガリーに割り当てられた21議席中13議席を獲得した。
ポーランドでは、国家運営を巡ってEUとの対立を繰り返す政権与党が他党を圧倒した。
ドイツでも極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は11議席で4位となり、議席を増やした。
スペインでも、極右のVOXは6.2%と5位だったが、前回ゼロから3議席を獲得している。
■欧州議会選での主流会派の大敗は、EU崩壊の予兆か2019年5月27日
26日に投票が終わった欧州議会選挙(定数751議席)では、各国でEU懐疑派が議席を伸ばした模様だ。イタリアではサルビーニ副首相が率いる「同盟」が第1党になり、フランスではルペン党首の「国民連合」がマクロン大統領率いる「共和国前進」を退け、第1党に。英国では強硬なEU離脱を目指す「ブレグジット党」がトップに立った。ドイツでは「ドイツのための選択肢(AfD)」が議席を伸ばした。今回の選挙結果を受けて、「EU離脱」の動きは加速するのだろうか。
欧州議会選挙ではEUを支えてきた2大会派の退潮が鮮明になった。だが、懐疑派内の主張の違いもあり、政治勢力としてまとまりある野党が台頭したとは言いづらい。さらに親EUの勢力としての環境政党の躍進という新たな動きもあった。今回の選挙結果を受けて欧州議会の機能不全やEU離脱が一気に進むとは考えにくい、と言えそうだ。
■欧州議会選、中道左右両派が過半数失う リベラル派、ナショナリスト党が台頭2019年5月27日
ポピュリスト政党もいくつかの国で票を伸ばしたものの、予想されていたほどの躍進には至らなかった。
イギリスでは、ナイジェル・ファラージ氏率いるブレグジット党が開票序盤での得票率を32%としており、第1党となる見通し。自由民主党も票を伸ばした一方、2大政党の保守党と労働党は議席を大きく減らすとみられている。
ドイツでは、中道政党が生き延びた。しかしアンゲラ・メルケル首相のキリスト教民主同盟(CDU、中道右派)は得票率を前回の35%から28%に下げ、中道左派の社会民主党(SPD)も27%から15.5%に落ち込んだ。極右ポピュリスト政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」も予想ほど票を伸ばさず、出口調査では得票率10.5%との結果が出た。ただ、初めて欧州議会選挙に出馬した2014年からは上昇している。
フランスではマリーヌ・ル・ペン氏が率いる国民連合(RN)が得票率24%で、マクロン大統領の共和国前進(22.5%)を破って第1党となった。
イタリアではサルヴィーニ氏の極右政党・同盟が30%の得票率を確保している。
ハンガリーでは、反移民を掲げる与党の右派フィデス・ハンガリー市民連盟が52%と大勝し、ハンガリーに割り当てられた21議席中13議席を獲得した。
スペインでは与党スペイン社会労働党(PSOE)が得票率32.8%で第1党。極右のVOXは6.2%と5位だったが、3議席を獲得している。
■欧州議会選、2大政党が後退 英仏伊などでEU懐疑派躍進2019年5月28日
欧州議会(定数751)選挙は、欧州連合(EU)の結束を支持する親EU派が過半数を確保した。ただ、中道右派と中道左派の2大会派が共に議席を減らす一方、各国でリベラル派政党と緑の党が躍進し、寄り合い所帯の色合いが増している。EU懐疑派のナショナリスト政党も各国で票を伸ばし、英国やフランス、イタリアなどでは最多議席を獲得した。
英国では、全73議席のうち「ブレグジット党」が29議席を押さえ首位に立った。一方、EU残留を訴える自由民主党も16議席で2位に浮上。メイ首相率いる与党・保守党と最大野党の労働党はそれぞれ4議席、10議席にとどまった。
フランスでは、マリーヌ・ルペン党首率いる極右政党・国民連合が全74議席中22議席を獲得。マクロン大統領率いる「共和国前進」の21議席を僅差で上回った。
ドイツでは、国政第1党のCDU・CSUが全96議席のうち29議席を確保して首位を維持したものの、得票率は歴史的低水準に落ち込んだ。連立相手の社会民主党は16議席で3位に転落。一方、緑の党は20議席を獲得し2位に浮上。ユーロ圏解体と反難民を訴える極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は11議席で4位となった。
イタリアでは、サルビーニ副首相率いる国政第2党のナショナリスト政党・同盟が全73議席のうち28議席を得て圧勝。一方、連立相手の反体制派政党「五つ星運動」は14議席で3位にとどまり、明暗を分けた。ポピュリズムへの対抗を掲げる中道左派・民主党は18議席で2位に食い込む健闘ぶりを見せた。
■欧州議会選挙~EU懐疑派勢力が伸びる当然の理由2019年5月28日
EUの議会があり、EU本部があります。ここはものすごく巨大な官僚機構です。この官僚機構が、頭で考えた典型的な設計主義なのです。「これが理想である」という方針を決めて、これを各国に押し付けて来るのです。イギリスでもドイツでも、EU本部で決められた方針に対しての反発はすごく大きい。例えばイギリスの人たちが、遠くブリュッセルでそのことを決められて押し付けられることなど、普通に考えて我慢するわけがないですよ。
■EUを離脱するのではなく、内から壊すポピュリスト政党の新たな戦略2019年5月28日
欧州議会選挙は、大衆迎合主義(ポピュリズム)や権威主義的な政党が各国で勢力を拡大した。イタリアとフランスでは移民の受け入れに批判的な右派系のポピュリズム政党が第1党となり、英国ではEUからの離脱実現を目指す結党間もないブレグジット党が圧倒的な勝利を収めた。ハンガリーやポーランドでは、国家運営を巡ってEUとの対立を繰り返す政権与党が他党を圧倒した。
これまで常にEU運営の中心にいた中道右派の欧州人民党(EPP)と中道左派の社会民主進歩同盟(S&D)の2大会派は、そろって改選前から大幅に議席を落とし、両会派の合計議席でも初めて議会の過半数を失った。
最近ではポピュリズム政党の多くがEUからの離脱を主張しなくなっている。こうした政党の多くは、EU官僚(エリート)による誤った政策が、人々(大衆)の生活困窮や社会の混乱を招いているとして批判する。現状に不満を抱える世論の支持を集めている。欧州議会でのプレゼンス拡大を足がかりに、EUを内から壊そうとするのが、ポピュリストたちの新たな戦略だ。
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