反グローバリズムの潮流(カタルーニャ独立問題その後、独立派選挙勝利までの状況)
前回はベルギーに国外逃亡したカタルーニャ州のプッチダモン前州首相と州の元幹部ら4人がベルギーの司法当局に身柄を拘束され、独立宣言が中央政府によって無効とされたところまで紹介しました。今回の州選挙は、独立賛成派が敗北すると予想されていましたが、結果は独立賛成派が2議席減らしたものの70議席を確保、反対派57議席を大きく上回る勝利でした。何故このような結果になったのか、この間の動きを調べてみました。
11月5日にベルギー司法当局に身柄を拘束されたプッチダモン前州首相ですが、その日の深夜にスペイン送還か否かを決めるまで保釈されました。そして、その審理と並行しながら州選挙の準備を進め、11月26日には逃亡先のベルギーで自身が率いる独立派勢力の候補者名簿を発表しました。選挙に向けて、それまでのような強硬な独立姿勢は崩して、中央政府との対話により実質的な自治権の拡大を目指す方向に方針を転換しています。そして12月5日に、スペイン政府はベルギーに滞在しているプチデモン前州首相ら前州閣僚5人に発付された「欧州逮捕状(EAW)」を取り下げる決定をします。但し、スペイン国内での拘束令状は有効としており、5人が帰国すれば身柄を拘束する方針ということで、帰国は認められていません。
このように、党首不在と言う不利な状況の中で選挙が始まり、選挙の事前予想は、独立反対派が優位とする世論調査などが発表されていましたが、結果的に独立派が勝利しました。そして反対派の中でもラホイ首相の国民党(PP)は大敗し、現有11議席のうち8議席を失いたった3議席に後退します。
独立賛成派の得票は48%で過半数には届いていないものの半数近くが独立を支持しています。単純に経済的利益だけを考えれば、独立問題でもめるよりも現状維持とした方が良いことは明らかであり、カタルーニャ州民の半数近くが経済的安定よりも独立を指示したと言う結果は、注目に値すると思います。
前回の国民投票は憲法違反で無効とすることが出来ましたが、今回の選挙は憲法にのっとって実施されており、そもそも、中央政府が州議会の解散と選挙を決めており、この結果を無効とすることは中央政府も不可能です。新たな州政府が成立すれば、ラホイ首相も無視することはできないはずで、これから、カタルーニャの独立問題がどう動くのか、目が離せません。
■カタルーニャ前州首相保釈 ベルギー、送還決定まで2017年11月06日
ベルギー司法当局は5日深夜、スペイン当局の要請で拘束したプチデモン前州首相と前州閣僚の計5人について、スペイン送還か否かを決めるまで保釈した。欧州メディアが伝えた。5人は送還の可否を決める手続きのため、15日以内にベルギーの裁判所に出廷する。保釈に当たり、許可なくベルギー国外に出ないことや、滞在先を明らかにするなどの条件が付けられた。
■カタルーニャ独立投票にロシアから干渉、スペイン政府が「確認」2017年11月14日
スペイン政府は13日、カタルーニャ州の独立問題を巡り、ロシアを拠点とする集団がソーシャルメディアを使って独立の是非を問う住民投票に関するデマを流していた痕跡があると明らかにした。ただ、デコスペダル国防相は、ロシア政府が関与していたかどうかは「確言」できないと述べている
住民投票は、スペイン軍と有権者の衝突に発展。その後ソーシャルメディアでは、「EU当局者がカタルーニャの暴力を支持」「世界の大国が欧州での戦争に備えて準備」といった偽ニュースが出回った。
ダスティス外相は、偽ニュースの狙いはEUを弱体化させることにあると訴えて欧州各国に警戒を促すとともに、EU加盟国間の連携強化を呼びかけた。
■プチデモン前カタルーニャ首相のスペイン移送問題、判断持ち越し ベルギー裁判所 2017年11月18日
ベルギーの首都ブリュッセルの裁判所は17日、スペイン司法当局から逮捕状が出ている、同国カタルーニャ自治州政府のプチデモン前首相と元幹部4人について、スペインに移送するかどうかを判断するための審理を開いた。出廷した5人の弁護士によると、検察は逮捕状の執行を求めたが、判事は判断を後日に持ち越した。ベルギーのメディアなどによると、弁護士は記者団に、12月4日に改めて審理が開かれることを明らかにした。
■プチデモン前州首相が逃亡先で始動 候補者名簿を発表 カタルーニャ自治停止から1カ月2017年11月26日
プチデモン前州首相は25日、12月21日の州議会選挙に向け、逃亡先のベルギーで自身が率いる独立派勢力の候補者名簿を発表した。プチデモン前首相は25日、ベルギー西部の支持者集会で「選挙で勝利し、ラホイ首相の中央政府、彼を支える欧州連合(EU)に『われわれの民主主義は負けない』と示してやろう」と気勢をあげた。候補者名簿は、プチデモン前首相が属するカタルーニャ欧州民主党が中心。共にベルギーにとどまる前州閣僚、反逆容疑で身柄拘束された独立派指導者らが名を連ねる。
■カタルーニャ州 来月議会選 独立派、強硬一転「対話を」2017年11月26日
十月末の一方的な独立宣言に関わった州政府の前閣僚八人が逮捕されるなど独立が事実上、困難になる中、独立派の多くは対話を優先する現実路線に移行しつつある。
「中央政府が対等な交渉に合意するのであれば、選挙公約から独立宣言を削除することもできる」。ベルギーに滞在しているプチデモン前州首相が率いる独立派政党「カタルーニャ欧州民主党」の幹部マルタ・パスカル氏は二十三日、スペインのラジオ局カデナ・セールの番組で語った。
十七日に締め切られた立候補届け出で、同党が母体になる選挙連合「共にカタルーニャ」は従来の政治家に加え、学者やジャーナリストらを擁立。プチデモン氏はベルギー紙ル・ソワールのインタビューで「中央政府と、より現実的な関係を築く用意がある」と述べ、柔軟な姿勢も見せた。
強硬な独立派だったジュンケラス前州副首相が率いるカタルーニャ共和主義左翼(ERC)も、対話路線を模索。広報担当者はAFP通信に「カタルーニャ共和国の建設は始まったばかり。交渉によって実現されることを望む」と述べた。
実際に、独立を実現させるのは極めて難しい。中央政府は一方的な独立宣言の直後、「法の秩序を取り戻すため」に自治権停止を決め、州政府と州議会を解散させた。前閣僚らを反逆罪などで訴追する準備を進め、選挙で独立派を過半数割れに追い込みたい考えだ。
■プチデモン氏、送還に反論 ベルギー裁判所で再尋問2017年12月04日
保釈したプチデモン前州首相らをスペインに引き渡すか否かを巡り、ベルギーの裁判所は4日、プチデモン氏への2度目の尋問を行った。検察側は11月の初尋問の際、送還を主張、今回は弁護側が反論する予定。裁判所は近日中に送還の是非の判断を発表するが、不服申し立てができるため、手続きは時間がかかりそうだ。プチデモン氏の弁護士は2日、欧州メディアに対し、プチデモン氏も立候補している21日の州議会選挙までに引き渡されることはないと話した。
■カタルーニャ州議会選、独立賛成派が過半数割れへ=世論調査2017年12月5日
世論調査によると、スペイン北東部カタルーニャ自治州の州議会選挙(定数135)を21日に控え、独立賛成派の政党が過半数を割り込む見通しであることが分かった。政府系調査機関CISが4日明らかにした。
独立賛成派の政党では、ジュンツ・パル・カタルーニャ(カタルーニャのための連合)が25―26議席、カタルーニャ共和左派(ERC)が32議席、独立強硬派の左派である人民連合(CUP)が9議席獲得する見通し。合計すると66―67議席となり、過半数をわずかに割り込むことになる。
■スペイン、欧州逮捕状を取り下げ プチデモン前州首相らに発付2017年12月05日
スペイン司法当局は5日、反逆容疑などでの出頭命令を拒み、ベルギーに滞在しているプチデモン前州首相ら前州閣僚5人に発付された「欧州逮捕状(EAW)」を取り下げる決定をした。スペインのメディアが伝えた。EAWは欧州連合(EU)各国に拘束と引き渡しを求めることができる。取り下げにより欧州内でプチデモン氏らの身柄引き渡しの可能性はほぼなくなったとみられる。一方、司法当局はスペイン国内での拘束令状は有効としており、5人が帰国すれば身柄を拘束する方針という。
■21日州議会選挙 独立派、反独立派とも過半数困難か2017年12月18日
投票前の最後の日曜日となった17日、中央政府のラホイ首相は独立反対派のテコ入れのため同州を訪問した。「安定を回復し、経済を復興させよう」と訴えた。一方、プチデモン前州首相は17日、逃亡先のベルギーからビデオを通じて独立派集会で演説し、選挙は「よりよい国を造るか否かの選択だ」と述べた。
17日に地元紙が発表した世論調査では、州議会定数135のうち、独立派3党は66~69議席を獲得の見込み。改選前の72を下回り、過半数に届かない可能性が出てきた。
■カタルーニャ州独立派が議会選挙で勝利-3党で70議席獲得2017年12月22日
独立支持派の3党は定数135の州議会で合計70議席を獲得。10月にラホイ首相が憲法155条に基づいて同州全閣僚を解任した際に独立支持派が有していた過半数議席を回復した。ラホイ首相の国民党(PP)は大敗し、現有11議席のうち8議席を失った。独立反対の有権者は独立支持派に対してより厳しい措置を求めているシウダダノスに流れた。
ラホイ首相に解任されたプチデモン前州首相は亡命先のブリュッセルから支持者に向けて、「ラホイ氏と支持者らは敗北した。カタルーニャの人々に負けた」と指摘した。
プチデモン氏率いる「共にカタルーニャのために」は予想を上回る34議席を押さえ、カタルーニャ共和左派(ERC)は32議席、急進左派CUPは4議席をそれぞれ獲得。独立支持政党の得票は合計48%で、州議会を支配するには十分だが、過半数には届いていない。投票率は過去最高の82%だった。
■「独立派勝利ではない」首相 カタルーニャ独立問題2017年12月23日
スペイン・カタルーニャ州の議会選挙で独立派が過半数を獲得したことについて、スペイン政府のラホイ首相は独立派の勝利ではないとの考えを示しました。 今回の選挙では、独立派の3つの政党で作る連立与党が合わせて過半数の議席を獲得しました。
■独立派が勝利、前カタルーニャ州首相が会談要求2017年12月23日
スペイン・カタルーニャ州のプチデモン前州首相は、州議会選挙で独立派が過半数を獲得したことを受け、スペインのラホイ首相に会談を要求しました。
逮捕を免れるためベルギーに滞在しているカタルーニャ州のプチデモン前州首相は22日、「政治的解決を探る機会だ」と述べ、選挙結果を受け、ラホイ首相にスペイン国外で会談を行うよう呼びかけました。しかし、このあと会見したラホイ首相は「憲法を守らない人間は受け入れられない」と述べ、プチデモン前州首相との対話を拒否する考えを示しました。 ラホイ首相は「新しい州政府のリーダーが憲法を守るのであれば、対話する用意がある」と述べ、改めて独立を認めない考えを強調しました。
■カタルーニャ州議会・独立派3党・首班指名で難航 2017年12月28日
カタルーニャの議会選挙から6日も経つがカタルーニャ独立推進党とカタルーニャ左翼共和党は水面下で政権樹立への話合いを進めているが一番の問題は州首相の指名に誰を推すかでなかなか決まらない。独立派の3つは12月21日に電話会議を行ったあと27日、議会で人民連合も含めて新たな議会運営委員会と州政府の組閣について話し合った。
ジュンツペルカタルーニャ独立推進党は相互とも憲法155条が適用される前の形に戻されることを提案し前州政府広報担当・トゥルルはプチデモンが再び州首相として就任するためには国外からの州政府参加を含めあらゆる方策を考えたいとした。
左翼共和党はプチデモンを首班指名する意思があるものの万が一国外での就任が無理だと判断された場合には誰を首班指名するのかジュンツペルカタルーニャと話し合わなければならないとした。
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