2022-08-18

中露主導の拡張BRICSによる経済圏構築、新国際決済通貨(バスケット通貨)導入へ

いよいよ中露主導・BRICSによる経済圏構築と、ドルに代わる国際決済通貨が動き出している。

以下の記事にあるように、この通貨は、様々な評価基準(各国の人口や領土)に基づく通貨バスケットと商品や資源に基づく価格インデックスに基づくバスケットから構想されている。私有銀行である中央銀行システムに代わる、各国の力を総合化した画期的なシステムとも見られる。

 

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以下ドル覇権は崩壊寸前。中ロ主導の「新国際決済通貨」が新興・途上国を巻き込み金融危機を引き起こす より引用

ウクライナ戦争による対ロシア経済の発動以降、ルーブルや人民元を使って決済を行う脱ドル化の動きが確実に加速しつつある。

そうしたなか、中ロによる新国際決済通の導入が現実化しつつある。しかし、その本格的な導入は既存のドルベースの世界経済の体制を揺るがせ、最終的には金融危機を引き起こす可能性がささやかれている。

新国際決済通貨導入への動きを見るためには、時計の針を2カ月ほど前に戻し、今年の6月に開催されたロシアと中国が主導する2つの国際会議を見る必要がある。

サンクトペテルブルグ経済フォーラム
2022年6月15日から18日にかけて、恒例のサンクトペテルブルグ経済フォーラムが開催された。主役は例年のようにプーチン大統領だった。プーチンはスピーチの中で、西側先進国に住むいわゆる「黄金十億人」(世界人口の12%にすぎない)の幻想と、「G7諸国の無責任なマクロ経済政策」を批判した。そして、ウクライナ戦争による「対ロシア制裁のEUの損失」が年間4000億ドルを超える可能性があること、また、ヨーロッパのエネルギー価格の高騰は、実は「昨年の第3四半期から」始まっていることで、「再生可能エネルギーを盲信している」ことが原因であると指摘した。

また、西側の「プーチン値上げ」プロパガンダをきちんと否定し、食糧・エネルギー危機は西側の誤った経済政策、つまり西側に不利な「ロシアの穀物と肥料が制裁されている」ことと関係があるとした。一言で言えば、西側はロシアの主権を見誤って制裁し、今、非常に大きな代償を払っていると批判したのだ。

(中略)

新しい国際ルールの形成という理念こそ、プーチンが全体演説で展開したメッセージの根底にある重要なテーマである。

具体的には次のような点が討議されている。

・上海協力機構(SCO)の範囲内でのビジネス
・ロシアと中国の戦略的パートナーシップの確認
・BRICSの今後
・ロシアの金融セクターの展望
・ユーラシア経済連合(EAEU)とASEANの交流の拡大
・ユーラシア大陸横断企業の発展
・グローバル経済のシステムにおけるEAEUの役割

これらの諸点を踏まえ、ロシアのアレクセイ・オーバーチャック副首相は、東南アジア、アフリカ、ペルシャ湾の新市場に参入するために、完全な自由貿易・関税・経済連合の実施と統一決済システム、そしてロシアのミール決済カードを使った簡素化された直接決済について説明した。

第14回BRICSサミット
さらに6月23日には、サマルカンドで第14回BRICSサミットが開催された。この会議ではサンクトペテルブルグ経済フォーラムよりもさらに一歩進み、プーチン大統領は、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国の経済圏が、「新しい国際基軸通貨 」を発行する計画であることを明らかにした。プーチンは、「我々の国の通貨バスケットに基づく国際基軸通貨を創設する件は、現在検討中である。我々は、すべての公正なパートナーとオープンに協力する用意がある」と述べた。さらに、トルコ、エジプト、サウジアラビアがBRICSグループへの加盟を検討していることも明らかにした。

この動きは、これはIMFを使ったアメリカの覇権主義に対処するための動きであり、BRICSが独自の勢力圏とその中での通貨単位を構築することができるようになる一歩である。

一方、中国の習近平主席も、「世界金融システムの支配的地位を利用して世界経済を政治化、道具化、武器化し、やみくもに制裁を加えることは、自らを傷つけるだけでなく他者をも傷つけ、世界中の人々を苦しめるだけだ」と述べた。そして、「強者の立場に執着し、軍事同盟を拡大し、他者を犠牲にして自国の安全を求める者は、安全保障の難局に陥るのみだ」と言いアメリカを強く非難した。

ユーラシア全域を結ぶ経済ルート
このように、サンクトペテルブルグ経済フォーラムとその直後に開催されたBRICS首脳会議では、ウクライナ戦争後の状況を踏まえ、中ロ主導の拡張BRICSを中心とする経済ルートの急ピッチの建設が宣言された。ユーラシア大陸を横断する6つの陸上回廊と、南シナ海、インド洋からヨーロッパに至る海上シルクロードに沿って発展している既存の一帯一路に加えて、次のようなルートが加わわるとしている。

<国際北南輸送回廊(INSTC)>
インド、アフガニスタン、中央アジア、イラン、アゼルバイジャン、ロシアを結び、バルト海のフィンランドに至る全長7,200kmの船舶、鉄道、道路の複合輸送ネットワークであり、典型的な南と南を結ぶ統合プロジェクト。

ロシアのサンクトペテルブルクからアストラハンまで、陸路でコンテナを運び、その後、カスピ海を経由してイランのバンダル・アンゼリ港に入港。そして、陸路でバンダルアッバス港から、インド最大の港であるナヴァシェバまで海外輸送する。運営主体は、ロシアとインドに支社を持つイラン・イスラム共和国船舶会社(IRISLグループ)だ。

<北方海路>
中国の大連を起点にロシアの海岸線に沿ってバレンツ海から北極圏を回り、オランダのロッテルダムに行く航路。中国の海上シルクロードと相互作用し、これを補完する。ロシアと共同で開発が進む。欧米の影響下にあるスエズ運河回りの南航路よりも、日数は10日も短く、またコストも安い。

新しい国際決済通貨の導入
すでに中国の一帯一路に加えて、これだけの規模の経済ルートが加わる。それはユーラシア全域を包括すると同時に、北極を通してユーラシアをヨーロッパに接続する。この経済ルートの運営主体は、中国、ロシア、イラン、インドなどの拡張BRICS諸国の企業群であり、その意味では既存のアメリカ主導の国際ルールに従う必要はない。

そして、欧米主導ではないこうした新しい経済圏で導入が期待されているのが、新国際決済通貨システムである。それは、ユーラシア経済委員会の統合・マクロ経済担当委員で、ロシアの政治家で経済学者のセルゲイ・グラジェフが構想し、いま本格的な導入が検討されている新国際決済通貨である。第697回の記事で説明したが、これはいくつかの評価基準(GDP、領土と人口の大きさ、国際貿易におけるシェア)にしたがって表されるBRICS各国の通貨のバスケットと、さまざまな商品(金などの貴金属、主要工業金属、炭化水素、穀物、砂糖、さらに水などの天然資源)の価格インデックスのバスケットに基づくとされている。

この新決済通貨の狙いは2つある。

ユーラシアで、ドルの覇権に対抗して多極化のシステム(国際通貨バスケット)を復活させること。そして次は、中央銀行と市場を唯一の決定とする現行のシステムに対抗して、より合理的なシステム(実体経済が適切に機能するために必要な物理的商品価値のバスケット)に回帰することだ。

もしこれが、いま急速に台頭しているユーラシア経済圏に導入されるなら、アメリカのワシントンコンセンサスとは異なるルールに基づくグローバルな金融システムが樹立されるだあろう。

もちろんこれは、ドルにはまったく存在しないシステムとなる。しかし、構想としてはそのようなものが存在しても、果たしてこの通貨が実際に導入される可能性はあるのだろうか?

新興国と発展途上国は導入せざるを得ない
実は現状から見ると、脱ドル化であるこの新基軸通貨は、新興国と発展途上国であれば、かならず導入せざるを得ない状況にあるのだ。そしてその導入こそ、2023年から24年頃に必然的に起こる金融危機を準備することになる。

もはや説明するまでもないだろうが、いま世界的にインフレのコントロールができない状態になっている。インフレはアメリカやイギリスでは9%を越え、EU諸国全体では8.9%の上昇だ。どの地域でも約40年ぶりの高水準のインフレだ。特に石油とガスのエネルギー価格の上昇は極端だ。EU諸国では軒並み三倍にもなっている。冬になるとヨーロッパでは、食事の回数を減らすのか、それとも暖房を取るのかの選択にもなると言われている。

このような高インフレの原因ははっきりしている。新型コロナのパンデミックが終わり、急速に需要が回復しつつあるときに、中国のゼロコロナ政策などによってサプライチェーンの寸断が続き、供給がまったく追いついていないことだ。

そして、ちょうどそのタイミングでウクライナ戦争が勃発し、ロシアに対する厳しい経済制裁によって、ロシア産の石油と天然ガス、さらに小麦や飼料を含む幅広い製品の実質的な禁輸が続いたからだ。さらに折からの気候変動による農業生産の低迷もあいまって、エネルギーと食料価格は極端に高騰した。

そして、周知のように、アメリカを始めとした主要国は、高インフレに対処するため、前例のないペースで利上げに踏み切った。新型コロナのパンデミックの痛手からの回復を目的に実施した大規模な金融緩和策からの全面的な方向転換である。

このアメリカやイギリス、そしてEUの利上げは思っても見ない状況を招いている。それは、利上げに消極的な国々との間の金利差による通貨安である。国内の資金は金利の高いアメリカでの運用のために流出するので、ドル買いが盛んになり、自国通貨の価値が大きく下落するのだ。

特にこれは、新興国と発展途上国には大きな痛手となっている。折からのエネルギーと食料の高騰に、さらに自国通貨下落による輸入物価の上昇で、国内のインフレは高騰した。トルコは80%、スリランカは70%、ナイジェリアは17%だ。この高インフレでは国民の生活水準は急低下するので、国民の不満はとても高まる。

しかし問題は、高インフレに苦しむ新興国や発展途上国の政府の多くが、ドル建ての債務を抱えていることである。新興国や発展途上国の場合、信用力のない自国通貨建てで国債を発行できる国は非常に少ない。ほとんど場合、信用力のあるドル建てで国債を発行し、利回りも米国債と同じ水準になっている。こうした状況で、もしインフレ退治のためにアメリカの金利が上昇すると、ドル建ての国債を発行している国々の利払い費も同様に高くなる。ただでさえ高インフレに対処するために財政が逼迫している新興国や発展途上国は、利払い費の増大でさらに苦しくなる。

このような状況に陥ると、これらの国々は、収入と輸出収入の多くを対外債務の返済に充てなければならない。すると、デフォルトする国々も出てくるだろう。そのときは、IMFに支援を求めることができる。しかしこれを行うと、IMFにる極端な緊縮政策の強要で、国内の貴重な天然資源、森林、水源が欧米資本に売却されることなる。この結果、さらに困窮した国々は、さらにドル建て債務に走ることになる。そして、同じ悪循環を繰り返す。

10年前であれば、一度この悪循環に陥ってしまうと、これから抜け出すことは基本的に困難だった。しかし、中ロが主導するユーラシア経済圏の新国際決済通貨が導入されると、この悪循環に対処できる強力な選択肢ができる。それは、脱ドル化の方向である。

引用以上

List    投稿者 inoue-hi | 2022-08-18 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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