2017-02-23

NATOをめぐるトランプ氏の発言と報道

7d8a5_1351_86d291a7_a6a77540

大統領就任直前の1月16日に、NATOは時代遅れと批判したトランプ氏ですが、大統領就任後の報道を見ると、NATOを100%支持すると180度姿勢を転換したかのように報道されています。トランプ大統領の意図はどこにあるのでしょうか。

NATOに関する報道のポイントを並べてみると以下のように、大統領就任後に大きく変わっています。

1/15:トランプ氏はNATOについて、時代遅れだ。加盟国が相応の負担をしていない。テロに対応してこなかった、と指摘した。

1/20:大統領就任演説、私たちは古い同盟関係を強化し、新たなものを形づくります。イスラム過激派のテロに対し世界を結束させ、地球上から完全に根絶させます。

1/27:メイ首相はこの日の会見で、トランプ氏は「100%」NATOを支持していると言明した。

2/5:ホワイトハウスによると、トランプ氏はイタリア首相ジェンティローニとの電話会談でNATOに対する米国の責任ある関与を強調した。

2/15:マティス米国防長官は「米国が関与を低下させるのを目にしたくなければ、全加盟国が国防支出の形で示す必要がある」と述べ、NATO事務総長は記者会見で、米国の要求に応じることで各国が一致したことを明らかにした。

2/18:ペンス副大統領は「トランプ大統領はNATOを強く支持している」と述べ、欧州の加盟国の国防支出増加について、目に見える成果を要求した。

にほんブログ村 経済ブログへ

大統領就任前と後で、NATO批判からNATO支持に大きく変わっているように見えますが、すごく気になるのが大統領就任後のNATOに関する報道が、全て間接的発言であること。トランプ大統領はNATOを支持すると「言っている」という報道ばかりであることです。トランプ大統領がNATOについて直接発言していないか探しましたが見つかりませんでした。さらに、驚くのが、これまで緊縮財政で軍事費を圧縮してきたNATO加盟諸国が、国防費支出増加に合意したという所です。

トランプ大統領と言えば、就任前の暴言や、就任後の7か国からの入国を禁止する大統領令などで、何をするか分からないというイメージを創りだしていますが、NATOについては、各国が国防費支出増加に合意するという成果を上げています。トランプ大統領が自ら直接発言しないことで、どうなるか分からないという不安心理をさらに強化し、上手く欧州各国の譲歩を引き出したようにも見えます。トランプ大統領は、交渉術として意識して暴言を繰り返している、策謀家なのかもしれません。

トランプ氏が大統領就任前に言っていたように、NATOの軍事力を強化し、ロシアと組んでイスラム内戦の鎮圧に乗り出せば、ヨーロッパの移民問題も解決し、ロシアとヨーロッパの関係も改善でき、アメリカの発言力はさらに高まりそう。ついでに軍需産業も目先は儲かる。根っからの商売人だけに、イデオロギーに捉われず、メリットを追求する発想ができるのかもしれません。

■トランプ氏:NATOは時代遅れ、EU離脱続くと予想-ビルト紙(2017年1月15日)

トランプ氏は英国のEU離脱が成功例になると予想。EUは米国を国際貿易で打ち負かすことを目的としたドイツ支配のための道具だと主張した。トランプ氏はウクライナをめぐって実施されている対ロ制裁について、ロシアとの核軍縮交渉の材料として使う可能性を示唆した。NATOについて、「時代遅れだまず第1に、構想から何年もたっていることだ。第2には、加盟国が相応の負担をしていない」と語り、NATOが「テロに対応してこなかった」と指摘した。

■欧州各国、トランプ氏の批判に反論 「忠告必要ない」(2017年1月16日)

ドイツのメルケル首相は、「われわれ欧州人の運命はわれわれの手中にある」と言明。さらに、テロと難民という2つの問題を混同したトランプ氏の見解は間違いだと指摘した上で、EUが経済を強化しテロと戦っていけるよう尽力する意向を表明した。

フランスのオランド大統領も、あからさまな不快感を表明。「ここで言っておく、欧州は対米協力を常に積極的に追求していく構えだが、その道のりは欧州独自の利益と価値観に基づいて決めていく」とくぎを刺し、EUの内政に「外からの忠告は必要ない」と切り捨てた。

■スカラムッチ氏、トランプ氏の「NATOは時代遅れ」発言を擁護(2017年1月18日)

北大西洋条約機構(NATO)を「時代遅れ」としたトランプ氏の発言は、世界の変化を反映しているものの、NATOそのものを歴史のかなたに追いやるべきだという意味に捉えるべきではないと述べた。

またロシアとの共通目標の追求に注力すべきだとの見方を示し、「共産主義と戦うことよりも、今は急進的なイスラム勢力を阻むことに力を注ぐ必要がある」とした。スカラムッチ氏は、NATO加盟国が応分の資金拠出をすべきとしたトランプ氏の発言は、ビジネスマンで不動産業者としての経歴を反映しており、筋が通った指摘だと述べた。

■ポーランド、F-16戦闘機調達を検討(2017年01月24日)

ポーランド政府は、アメリカから中古のF-16戦闘機を購入する見通しだと発表したと1月20日付のDefense newsが報じた。

■トランプ米大統領とメイ英首相、NATO重視を強調(2017年1月27日)

ドナルド・トランプ米大統領とテリーザ・メイ英首相27日、北大西洋条約機構(NATO)を今後も重視していくと表明した。トランプ氏はこれまでNATOは時代遅れだと発言してきたが、メイ首相はこの日の会見で、トランプ氏は「100%」NATOを支持していると言明した。トランプ氏はさらに、ロシアは中国などと「すごくいい関係」を保つことは、「悪いことではなく、良いことだ」と述べた

一方でメイ首相は、EUの対ロ制裁は堅持すべきだと言明。「(ウクライナ停戦合意の)ミンスク協定の完全履行を求めていると、態度を明示してきた」と首相は述べ、これが実現するまで制裁は続くと強調した。

■NATOへの関与強調 トランプ氏、伊首相に(2017年2月5日)

トランプ米大統領は4日、イタリアのジェンティローニ首相と電話会談した。ホワイトハウスによると、トランプ氏はジェンティローニ氏に北大西洋条約機構(NATO)に対する米国の責任ある関与を強調

■NATO各国は国防費増を=理事会、受け入れで一致-米国防長官(2017年2月15日)

マティス米国防長官は15日、初参加したブリュッセルでの北大西洋条約機構(NATO)国防相理事会で、「米国が関与を低下させるのを目にしたくなければ、全加盟国が国防支出の形で示す必要がある」と述べ、NATO加盟各国に負担の増大を要求した。これに対しストルテンベルグNATO事務総長は記者会見で、米国の要求に応じることで各国が一致したことを明らかにした

■NATO関与を再確認=欧州に支出拡大要求-米副大統領(2017年2月21日)

ペンス副大統領は会談後の記者会見で「トランプ大統領はNATOを強く支持している」と述べ、米国のNATOへの強い関与を改めて確認した。トランプ大統領が求める欧州の加盟国の国防支出増加について、「大統領は今年末までに実際に進展することを期待している」と述べ、目に見える成果を要求した。

List    投稿者 dairinin | 2017-02-23 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2017/02/5185.html/trackback


Comment



Comment