2009-10-13

ドルに代わる通貨システムは?〜1.『通貨バスケット』とはなにか?〜

basket_of_money.jpg前回記事でも紹介したが、英インディペンデント紙による「アラブ諸国が原油の支払いに米ドルを使うのを止めようとの提案を、ロシア、日本、中国、フランスにしている」との記事が、世界で波紋を呼んでいる。この記事でも新たな決済手段として挙げられている湾岸共通通貨についてはこの『ドルに代わる通貨システムは?』シリーズでも近く取り上げたいが、今回、シリーズの最初は、湾岸共通通貨を含む多くの通貨構想で採用が見込まれている「通貨バスケット」という仕組みについて、まずは基礎から押さえてみたい。
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■「通貨バスケット」の基本
こちらの記事が簡潔なので引用する。

ドルやユーロ、円といった複数の主要通貨で構成する「バスケット(かご)」に自国通貨を連動させる制度。貿易など自国との関係の深さに応じて通貨ごとの比重を決めて、バスケットを作る。組み入れられた各通貨の強弱が相場の動きを相殺するため、ドルなど単一通貨に連動させるより為替相場は安定する。アジアでは、シンガポールなどが採用しており、ロシアも2005年2月、ドルとユーロを組み合わせた通貨バスケットを導入

このほか、中国の人民元も大半がドルで構成されているが、実は通貨バスケットである。

現在世界で採用されている為替相場制度は大きく3つに分類できる。
ⅰ.外国為替市場の需給関係によって自由に為替相場が決定される
   自由変動為替相場制(フロート制)
ⅱ.通貨当局の管理の下,何らかの基準相場を中心とする一定幅の範囲内に変動が
   制限される管理変動為替相場制(管理フロート制)
ⅲ.通貨当局が為替市場介入によって為替相場を一定の水準に保つ
   固定為替相場制(ペッグ制)
さらに、固定為替相場制には,特定の一通貨に対して為替相場を固定するものと,複数の通貨によって構成されるバスケットに対して為替相場を固定するものとがあり,後者が「通貨バスケット制」あるいは「バスケット・ペッグ制」と呼ばれている。

通貨バスケットは固定相場制の一種だということ。但し、人民元はⅱの管理フロート制と組み合わされている。
■バスケットの効果
バスケット内で通貨が加重平均される仕組みを単純に整理してみた。
ドル50%、円30%、ユーロ20%のバスケット通貨をつくる。当初の為替相場が1ドル=100円、1ユーロ=2ドルだったとして、1バスケットを「5ドル+300円+1ユーロ」と決める。この時のレートでの構成比率がその後の変動の基準になる。下図で、自国通貨1A=1バスケットとすると、自国通貨の構成通貨に対するレートは1A=10ドル=1000円=5ユーロになる。
basket.gif
上図下段はドルが円に対してのみ上昇し、1ドル=200円になった時だが、この時、自国通貨の各国通貨との間のレートは図の右のように1A=8.5ドル=1700円=4.25ユーロに変わる。
もしこれが、自国通貨がドルのみとのペッグなら、同じレート変動で1A=10ドル=2000円=5ユーロとなり、円に対して大幅に上昇する。円のみとのペッグなら、1A=5ドル=1000円=2.5ユーロとなり、ドル、ユーロに対して大幅に下落する。このような偏った変動を回避し変動幅を分散させるのがバスケット制というわけだ。
為替変動緩和のメリットの他に、現在採用されているバスケット制の多くは、通貨の構成比率が公表されていないという特徴がある。この特徴はバスケット制の不透明性というデメリットとして語られることが多いが、投機筋からの攻撃を受けにくいという点でメリットだとも言える。
■後進国のバスケットと世界通貨としてのバスケット?
もう一つ、意外と盲点(というかあまりに当然過ぎて意識されない?)なのが、バスケット制とは、バスケットを構成する主要通貨が変動相場制で存在していることを前提としている仕組みだということだ。
通貨バスケット制は、金融・経済的にあまり強くない国々が、貿易の多様化が進む中で主要通貨間の為替変動リスクや通貨攻撃リスクをヘッジするために、単一通貨へのペッグ(固定相場)に代わる仕組みとして生み出されたものだ。実際、現在主にバスケット制を採用しているのはそのような国々だ。
だから、SDRのような新たな国際決済通貨としてのバスケット制は、これとはやや意味が変わってくると思われる。もしバスケット方式の国際決済通貨が主流になり、構成通貨との地位が逆転したら、その時、構成通貨の方の為替変動はどうなるのか?それがバスケット通貨にどのような影響を与えるのか?という点は考えてみる必要があるだろう。
■コモディティ・バスケット
バスケット方式を通貨以外にも適用する考え方もある。「コモディティ」とは、貴金属や原油、食糧などの現物資産のことで、「コモディティ・バスケット」とは、バスケットの中に主要通貨ではなくこれらの現物資産を放り込んで通貨を構成するもので、副島隆彦なども将来の国際通貨はコモディティ・バスケットになると主張している。
これはかつての金兌換制のバスケット版とでもいうものだ。現在、金の高騰が続いているが、金そのものにはもはや量的限界があり、世界の必要通貨量を担保することは困難だ。そこで、金以外の現物資産を含めれば、現物とリンクした信用性の高い通貨になるという発想だ。
ペーパーマネーの信用は今、とことん失墜に向かっている。だとすると、新しい兌換紙幣としてのコモディティ・バスケットは、今後かなり有力な案として浮上してくる可能性がある。ただし、それは同時に、国際資本勢力や各国の激しい資源争奪戦の呼び水になる可能性が高い。結局、新しく強力な通貨をつくろうとすれば、それが通貨発行権や担保資産を巡る私権闘争を引きおこすのであり、これを可能な限り抑止できる通貨システムが構築できるかどうかに世界の安定はかかっているのだろう。
次回は、現在、国連を中心に存在感を増しているバスケット通貨の一つ、IMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出権)について扱い、新通貨システムの追求を進めてみる。

List    投稿者 s.tanaka | 2009-10-13 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨4 Comments » 

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