2009-11-24

ドルに代わる通貨システムは?〜8.「東アジア共同体」は成立するか?

hatoyama_obama.jpg「東アジア共同体」の議論が再び注目され始めている。東アジア共同体構想はもともと、1990年にマレーシアのマハティール首相が提唱した「東アジア経済協議体(EAEC)」、1997年のアジア通貨危機の際に日本の橋本首相が提唱した「アジア通貨基金(AMF)構想」が源流にあるが、これまで米国の反対や中国の消極的な姿勢で殆んど進展が無かった。今年、民主党政権に代わって、鳩山首相が改めて東アジア共同体建設やアジア共通通貨創設への展望を表明した。90年代とは異なる状況の中、東アジア共同体の可能性は?
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●鳩山政権の東アジア共同体構想
東アジア共同体に関する鳩山由紀夫の主張は、論文『私の政治哲学』の中にある。政権交代直後にワシントンポストやNYタイムスなどの米紙から「反米的だ」と報道され、日本の従米マスコミが大騒ぎしたあの論文だ。

鳩山由紀夫HP「私の政治哲学」より
ナショナリズムを抑える東アジア共同体
(前略)マルクス主義とグローバリズムという、良くも悪くも、超国家的な政治経済理念が頓挫したいま、再びナショナリズムが諸国家の政策決定を大きく左右する時代となった。数年前の中国の反日暴動に象徴されるように、インターネットの普及は、ナショナリズムとポピュリズムの結合を加速し、時として制御不能の政治的混乱を引き起こしかねない。
 そうした時代認識に立つとき、われわれは、新たな国際協力の枠組みの構築をめざすなかで、各国の過剰なナショナリズムを克服し、経済協力と安全保障のルールを創りあげていく道を進むべきであろう。ヨーロッパと異なり、人口規模も発展段階も政治体制も異なるこの地域に、経済的な統合を実現することは、一朝一夕にできることではない。しかし、日本が先行し、韓国、台湾、香港がつづき、ASEANと中国が果たした高度経済成長の延長線上には、やはり地域的な通貨統合、「アジア共通通貨」の実現を目標としておくべきであり、その背景となる東アジア地域での恒久的な安全保障の枠組みを創出する努力を惜しんではならない。

冒頭に書いた通り、アジア共同体構想は’90年代初頭からASEANや日本の首脳が提唱してきた。だが、’94年にASEAN+3カ国による東アジア経済協議体(EAEC)の準備会議が開かれようとすれば、ベイカー米国務長官が日本がこれに反対するよう村山政権を書簡で脅し、’97年に橋本首相がアジア通貨基金(AMF)をつくろうとすればG7で米国の反対に遭い頓挫と、その動きは極めて遅いものだった。米国−IMF体制からアジアが独立するのは許さない、というわけだ。しかし、今回のアメリカの対応はこれまでとは違ったものになっているようだ。
●世界はEUとアジア太平洋地域に二分される?
11月13〜14日に訪日したオバマ大統領の東京演説(全文はこちら)で、オバマは「アメリカはアジア太平洋国家の一つ」と明快に規定した。

新・ベンチャー革命「オバマ東京宣言の成功は小沢流日本郵政人事にあり」より
この演説にて、オバマ政権(背後に欧米寡頭勢力(銀行屋系)あり)は明確にアジア太平洋地域を次期、有望市場と位置付けたことになります。まさにEUのアジア版を想定しており、欧州寡頭勢力によりEUからはずされている米国はEUではなく、アジア太平洋経済共同体に入るということです。(中略)
 筆者の専門、技術経営(MOT)におけるシナリオプランニングの開発者・ピーター・シュワルツ(元SRI研究員)が1990年に描いた15年後の2005年シナリオでは、世界経済はAPECとEUに2極化する(新しい帝国のシナリオ)と書かれています(注2)。(中略)
 当時のシナリオ想定時期の2005年より若干遅れてはいますが、2009年、このシナリオがオバマ・鳩山コンビで策動し始めたと認識することができます。(中略)
 ピーター・シュワルツはかつてSRIから英国ロンドンのロイヤル・ダッチシェル(ロスチャイルド系)に転職した経験があることから、欧州寡頭勢力に認められたシナリオプラニングの天才です。その意味で、彼の息のかかった上記NIC2025レポートは欧米寡頭勢力の長期的世界戦略とみなすことができます。オバマ政権は明らかにその戦略に沿っています。同時に鳩山政権もオバマ政権の戦略に沿っているとみなせます。

上記シナリオで登場する世界のもう一方の極であるEUでは19日、初代EU大統領にベルギー首相のヘルマン・ファンロンパイが選出された。英国はブレア前英首相を強く推していたが、選挙直前に開かれたビルダーバーグ会議の臨時会合での欧州貴族の意向によって今回の決着になったという。

2009112012551510.jpg
初代EU大統領ファンロンパイ現ベルギー首相

●鳩山首相のアジア圏は『ASEAN+6』

東アジア共同体構想を推進、アジア外交重視を宣言=鳩山首相
 [シンガポール 15日 ロイター]  鳩山由紀夫首相は15日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議後にシンガポールで講演し、「東アジア共同体構想」の実現に向けて抱負を語った。
 鳩山首相は、日本の新政府がアジア外交重視を宣言し、その柱になるのが東アジア共同体構想であると述べた。世界で多極化が進む現在、経済力に着目すれば、2008年時点で東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス6は世界の国内総生産(GDP)の約23%、APECでは52%以上を占め、これらの数字は今後もさらに増加する傾向にあると指摘。アジアの重要性を強調した。

ASEAN+6とは、東南アジア諸国連合10ヶ国(インドネシア・フィリピン・ベトナム・タイ・ミャンマー・マレーシア・カンボジア・ラオス・シンガポール・ブルネイ)に、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6ヶ国である。ここには今のところ米国は含まれていない。


アセアン10ヶ国(クリックで拡大)

●日本が再びキャスティング・ボードを握る?
「私の政治哲学」の中で鳩山は、「アジア共通通貨の実現には今後十年以上の歳月を要するだろう。それが政治的統合をもたらすまでには、さらなる歳月が必要であろう。」と書いている。“かなり先の話”とも読めるが、逆に10年程度のスパンで考えているとも読める。この鳩山の東アジア共同体構想はEUが原型にある。こうしてみると、欧州貴族勢力が中心となって日米の民主党政権と足並みを揃え、欧州連合(EU)とアジア共同体(もしくはアジア太平洋共同体)といった地域ブロック経済圏に世界を再編しようとしている、との見方は成り立つ。
先週の記事「ドル亡き後の世界」の副島氏の分析と合わせて考えると、米国にはオバマを潰し、米中のG2体制〜いずれは中国への覇権移転を果たそうとする勢力(D・ロックフェラー〜ヒラリー・クリントンの戦争屋勢力?)が存在していると思われる。中国を含むアジアを世界の極の一つに据えたいのは欧州勢も同じである。しかし、中国は、世界経済運営の責任を米国並みに担わされるのは時期早尚だと考えている節があり、米国からのG2提案や人民元切り上げの世界世論をまだのらりくらりとかわしている。かつ、米国の凋落が予想より早く進む中、その旺盛な購買力と金融力に依存してきた中国がこれまで通り順調に成長できる保証はない。
こうなると、改めて重要性を増してくるのが日本(民主党政権)の動向だ。米国がどのような体制で生き残るのか(G2かアジア太平洋か?)という観点からも、欧州貴族と戦争屋との勢力争い(その原資となる郵政資金の行方は?)という観点からも、今後の世界体制のキャスティング・ボードは再び日本が握ることになるのかも知れない。

List    投稿者 s.tanaka | 2009-11-24 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨3 Comments » 

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コメント3件

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