2023-02-28

トルコ地震で多くの建物が倒壊 ~背景にある「免除法」犯罪的精制度~

2月6日早朝、トルコ南東部とシリア北部の広い範囲で、強い地震が発生。その数時間後、先の地震の震源地から約60マイル離れた場所で、2度目の大きな地震が発生した。多くの被害者が出た大災害となり、今まさに避難、支援が続いている状況。今回の地震ではバイラクル地区のビル約20棟が倒壊し、犠牲者のほとんどが倒壊に巻き込まれた人だった。現地の声として多いのは「建物が怖い」「家に入れない」というもの。最近作られた新しいものも含めて大量の建物が倒壊した実態から、違法建築が横行していた疑いが濃厚になっている。

その背景には犯罪的ともいえる制度があった。

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マグニチュード(M)7.8と7.5の2つの地震が6日未明と同日午後にトルコ南東部で発生。トルコ南部とシリア北部にまたがる広い地域で数千棟の様々な建物が倒壊。2万人以上が死亡した。全壊した建物の中には、新築の集合住宅も含まれていた。このため、建物の建築基準について喫緊の深刻な懸念が立ち上っている。

今の時代の建築工法なら、今回のような揺れの強さに建物は耐えられるはずだった。そして、過去の震災の経験から、トルコでは地震に備えた耐震基準が徹底されているはずだった。

トルコ・マラティヤに建っていたマンションの下半分が崩れた。この建物は最新の耐震基準に準拠していたとされているこのマンションは昨年建てられたばかりで、「最新の耐震規制をすべて順守して完成」したとうたう不動産広告のスクリーンショットがソーシャルメディアに投稿されている。広告は、建築資材も技術者も「一級」のものを使ったとうたっていた。

昨年完成した新築の建物ならば、2018年に刷新された最新の建築基準に沿って建てられたはずだ。地震多発地帯の建物は、鉄骨・鉄筋で補強した高品質コンクリートの使用が義務づけられている。

ただし、このマンションでどのような建築工法が使われていたか、確認できていない。地中海沿岸にある港湾都市イスケンデルンでも、比較的新しい集合住宅が大きく崩れた様子が撮影された。16階建ての建物と横面と後ろ側が完全に崩れ、建物の一部だけがわずかに残っている。

イスケンデルンの南にあるハタイ県の県庁所在地アンタキヤでも、9階建ての集合住宅が大きく崩壊した。写真には、この建物が含まれるマンション群の名前「ギュチュル・バフチェ」が書かれた看板も見える。それによると、2019年11月に完成したという。セルアル建設のオーナー、セルヴェト・アトラス氏は、「ギュチュル・バフチェ・シティーは、その場所と施工の品質から、他の物件に比べて特に特別なものです」と話している。

★被災地であまりに多くの建物が倒壊したことから、トルコでは多くの人が、建築基準法の内容を疑問視するようになっている。確かに今回の地震は強力だったが、適切に建てられた建物ならば倒壊はしなかったはずだと、複数の専門家が指摘している。

英ユニヴァーシティ・コレッジ・ロンドンで緊急事態対応の計画と管理を専門にするデイヴィッド・アレクサンダー教授は、「今回の地震の最大強度は激しかったが、しっかり造られた建物を崩壊させるほどではなかった」と話す。「ほとんどの場所で揺れの程度は最大限のものではなかったので、倒壊した数千棟のほとんどが、合理的に想定される耐震建築基準に見合っていなかったのだろう」

トルコではこれまでの被災経験から、建築規制が強化されてきた。1999年に北西部イズミットで起きた地震では、1万7000人が死亡している。しかし、2018年の最新基準を含めた建築基準は、十分に徹底されていない。

「以前からある建物がほとんど改修されていないのに加えて、新築の建物についても建築基準がほとんど徹底されていない」と、アレクサンダー教授は言う。

一方、日本は地震が多いにも関わらず、数百万人が高層集合住宅に暮らしている。そうした国の事例を見ると、建築基準がいかに被災時の安全確保に関係するかうかがえる。日本の建物の安全基準は、建物の用途や、地震によるリスクが高い地域との距離で決まる。単純に建物を強化する「耐震構造」のほか、「制震構造」、「免震構造」方式がある。

★なぜ建築基準の徹底が不十分だったのか

トルコでは、安全基準を満たさない違法建築に対し、政府が「行政処分免除」を繰り返し提供してきた。安全基準を満たさなくても、一定の金額を払えば、法的に見逃されるという仕組みだ。これは1960年代から続き、最近では2018年にこうした「処分免除」が実施された。

いざ大地震が起きれば、政府のこの政策が大惨事を引き起こす危険があると、長いこと批判されていた。トルコ技師・建築家組合連合(TMMOB)の都市計画協議会のイスタンブール主任、ペリン・ピナル・ギリトリオール氏によると、トルコ南部の被災地では、7万5000棟の建物にこの「処分免除」が与えられていたという。

地質学者のセラル・センゴル氏は今年初め、断層線上にあるこの国でこうした免除法を成立させることは「犯罪」に等しいと指摘していた。

BBCトルコ語は2020年に西部イズミル県で大地震が発生した後、同県で67万2000棟が直近の免除の恩恵を受けていたと報じている。この報道では、2018年時点でトルコの建物の50%以上に当たる約1300万棟が建築基準違反だという、環境・都市省の話も引用している。

※建物の壊れ方の特徴

パンケーキクラッシュが多かったよう。中層以上の建物が1階・2階・3階と何層にもわたり層崩壊を繰り返し、床・天井がパンケーキのように重なって崩壊してしまう現象。この現象が起きると、建物が数秒(一瞬)で崩れるため、避難が難しい。上から面で崩落するため、生存空間がなくなり、生命への危険度が高くなってしまいます。原因の1つは、細い柱であったり、鉄筋の量が少なかったり、コンクリートの強度が不十分だったり、といったことによる「柱の耐震強度不足」。鉄筋コンクリートではなく、中空レンガの組積造が多かった様子。

金がかかるため、RCは使えなかった。

追求ポイント → 行政処分免除の背景とは

処分免除を受けている建物が多い理由は?

List    投稿者 itou-t | 2023-02-28 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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