2022-06-14

消費税を上げると大企業が儲かる!? ~消費税が下がる恩恵は法人税減だけではない~

消費増税すればするほど、大企業が得をする。輸出企業への優遇措置、つまり消費税の還付金が、大企業へ莫大な恩恵を与えている。その名も「輸出免税制度」。製品の輸出時に、消費税が企業に払い戻される制度だ。以下の金額は各企業が輸出免税制度により払い戻された金額である。

トヨタ:3683億円    マツダ:790億円            スバル:507億円     シャープ:381億円

日産:1587億円     新日鐵住金(現日本製鉄):750億円   村田製作所:494億円   パナソニック:313億円

ホンダ:1565億円    三菱自動車:683億円          キヤノン:482億円    日立製作所:248億円

売上高に対する輸出割合を見ると、トヨタで67.6%、日立製作所で53%、村田製作所に至っては90.8%と、売り上げの多くを海外輸出から得ている企業が並ぶ。今回の消費増税では、5.6兆円の増収が見込まれるが、その約20%にあたる金額が、これら大手企業に還流している。どのような理屈で、輸出大企業はこうした優遇措置を受けているのか。

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◆消費税と還付金の仕組み

消費税は、商品を購入した人が税務署に直接納めるものではない。企業が受け取った消費税額から、仕入れ税額を引いたものをアバウトに年間計算して納税する。しかし、国際的ルール上、消費税は輸出した商品には転嫁できない。税務署に申請するとその転嫁できない分が還付金として戻ってくる。特に大手の輸出企業だと、数千億円単位の莫大な金額になる。実質的な『輸出補助金』と言っても過言ではない。

具体的に整理すると、下の図のようになる。50万円のリンゴを下請けから仕入れたとき、大企業は消費税率10%を上乗せし、55万円を下請けに支払う。下請けはこの売り上げから5万円を税務署に納める。大企業は下請けから買ったリンゴを加工し、税込み110万円の羽が生えたリンゴを作ったとする。国内では販売に際し、消費税10万円を消費者から受け取る。10万円から仕入れの際、下請けに払った5万円を引き、残る5万円を大企業が税務署に納める。これを年間でまとめて計算して支払う。一方、海外に輸出する場合は輸出免税により価格は税抜きの100万円となるため、仕入れの際に支払った5万円が相殺できない。これを国庫から還付金として補填する、というのが、輸出免税制度の仕組み。輸出を行う企業であれば、大手に限らず還付自体は受けられる。だが、輸出金額が大きいほど、企業が得をする可能性が高い。というのも、この消費税還付金には、年率1.6%の利息に相当する「還付加算金」が上乗せされて戻ってくるからだ。’18年度分で3683億円の還付を受けるトヨタを例に取れば、単純計算で約59億円が利息として入ってくることになる。同社の’18年度の純利益は約1.9兆円。これだけ稼いでいて、なおも利息を苦労なく手にするわけだ。

輸出免税制度は、企業間格差を広げる一因にもなっている。大企業が優遇される一方で、その下請け企業は増税の影響をモロに受けるからだ。消費増税分を価格に転嫁し、値上げしようとすれば、大企業から「消費税増税分は値下げしろ」と、値下げ圧力を受けている。ほとんどの下請けは自ら商品を輸出するわけではないので、還付金は受けられない。それでも法人税などはきっちりと税務署が取っていく。

本来であれば消費税還付金は下請けにも還元されるべきものだが、実際には税金を商品に転嫁しづらい圧力があるよう。「特に下請け中小企業は、商品を納める大企業に対しては消費税を上乗せできず、一方で税務署からは消費税の納付を要求される。当然のことながら、税率が上がれば上がるほど中小企業は苦しくなる。下請け、孫請けの中小企業が身銭を切って払った消費税が、巡り巡って大企業の懐に入っている。おまけに労せずして、利息までついてくる。所得が増えれば増えるほど、さまざまな優遇措置があり、低所得者は一向に貧困から抜け出せない格差社会が深刻化する日本。消費税の還付金は、まさにこの構図を作り出す一因となっている。

◆アメリカは消費税・輸出免税を批判

トランプ政権は日米貿易交渉のテーブルで、車などの日本の輸出産業を「ダンピングだ」と痛烈に批判してきた。その理由こそ、消費税とその還付金にある。アメリカは消費税制度は一部の企業だけが恩恵を受けるものだとも考えている。日本の消費税と輸出免税措置の組み合わせは、あくまで輸出企業へ補助金を与えるために作り出された、と見ている。だからアメリカは日本の消費税を批判しているのです。アメリカの批判を受けても、日本政府は特に還付金を見直すつもりはない様子。

◆今後の追求

次回はこの輸出還付金の正体・歴史について探っていこうと思う。なぜこのような制度ができたのか。なぜ、他国から批判を受けてなお、続けていく必要があるのか。また、アメリカの批判の意図も気になる。上述した通り、アメリカは日本の消費税・輸出免税措置について批判している。日本の企業格差を心配してのことではない。おそらく、この制度が続くことでアメリカに何等かの不利益が被る可能性があるよう。おそらく、日本の輸出免税が続けば日本企業の輸出が活発化し、アメリカの国税に影響が出ることを恐れてのことだと考えられる。真相はさらなる調査が必要。

List    投稿者 itou-t | 2022-06-14 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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