トランプ・習近平、米中首脳会談の成果は?
4月6日~7日には米中首脳会談が開かれ、アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席が会談しました。本来ならもっと注目されてしかるべきですが、アメリカのシリア空爆で誰も注目しなくなってしまいました。実は私も、何が話されてどのような成果があったのか、よく知りませんでした。
晩餐会中にトランプ大統領がミサイル発射を説明し、アメリカのマスコミは習近平主席は反論もできず良い所がなかったと報道しているようですが、中国メディアは今回の首脳会談を成功と報道しています。一体どちらが正しいのでしょうか。今回の米中首脳会談の成果は何かあったのでしょうか。
色々な報道の中で、特に重要と感じたのが次の4点です。
- 対北朝鮮対策で米中は協力する。(アメリカに先制攻撃をするなと言うなら、中国は北朝鮮に核を放棄させろ)
- 米国の輸出促進と対中貿易赤字縮小に向けた通商交渉のための100日計画に関して両首脳が合意した。
- 互いの国の微妙な問題(中国の南沙諸島や台湾問題、アメリカのシリア空爆)は、互いに本気で踏み込まない。
- 年内にトランプ大統領が中国を訪問する。
この内容で特に注目したのが、2と3です。中国は貿易面ではアメリカに譲歩し、その代わり覇権拡大の野心をアメリカに認めさせているのです。トランプ大統領は商売人ですから、領土的な覇権はたいして気にしておらず、それよりも経済面で譲歩を獲得したことで大きな進展があったと喜んでいます。
他方、中国の習近平国家主席からすると、中国は既に内需拡大政策に転換しており、アメリカへの輸出が減少するのは、政治的な譲歩ではなく既定路線なのです。従って、何も譲歩することなく、中国が領土面の覇権を求める動きを、アメリカが容認するという譲歩を引き出したことになります。
互いに重視しているものが違ったことから、双方にとって成果がある結論をそれぞれが受け取ることができたという結果になったようです。
これとは別に、興味深い分析をしている記事もありました。米中の両首脳は、レジェンド(伝説の人)となり安定した政権基盤を確保するために、北朝鮮の平和的統一で合意したという分析です。北朝鮮の存在は、米中にとって他国を牽制するための都合のよい存在でしたから、簡単に統一させるとは思えませんでしたが、グローバリズムが終焉し、米中露の対立の時代が終われば、北朝鮮の存在意義がなくなることも十分に考えられそうです。
■トランプ、習近平と「傑出した関係」構築 問題乗り越えられる
トランプ氏は貿易問題や北朝鮮の核開発プログラムなどについて習主席と意見を交換したとし、「米国は中国との関係で目覚しい進展が得られた」と指摘。「これまでに真の進展が見られたが、これからさらに進展させる。習主席との間で傑出した関係を築くことができた」と述べた。
習主席は「われわれは理解を深めるとともに、手始めとしての仕事の仲や友情、信頼を築くことができた」とした上で、「安定した形で友好関係を発展させていけると確信している。世界の平和と安定に向け、われわれは歴史的な責任を果たしていく」と述べた。
■中国・習近平、トランプ米大統領に鼻であしらわれる屈辱外交…北朝鮮と関係断絶か
具体的な「合意事項」をみてみよう。米側の発表では今回の「成果」として、トランプ大統領が年内に訪中することや貿易不均衡是正のための100日計画を策定すること、さらに対北朝鮮で協力を強化することのほか、双方で次の4点について対話のメカニズムを新設することを挙げている。それは、(1)外交・安全保障(2)経済全般(3)法執行とサイバーセキュリティー(4)社会・文化交流
習近平:トランプ政権としては、金正恩政権の転覆を目論んでいるのか? もしくは朝鮮という国家の崩壊を目指しているのか?
トランプ:われわれの目的は、北朝鮮に危険な核とミサイルの開発を止めさせることだ。金正恩が止めるというなら、レジームを存続させるし、あくまでも止めないというのなら、止める政権に代わってもらうことになるかもしれない。また、北朝鮮という国家を崩壊させることまでは考えていない。
習近平:わが国としても、できる限りの対応は取り、かつ金正恩政権を説得していくので、北朝鮮に対する先制攻撃のようなことだけは慎んでもらいたい。
トランプ:オバマ政権は中国を敵に見立てて、南シナ海で「航行の自由作戦」を繰り返したりしていたが、わが政権は中国を味方だと思っている。どうか北朝鮮に対して、しっかりと圧力をかけて核ミサイル開発をストップさせてほしい。
■トランプと習近平の一致した思惑。報道されない米中首脳会談の裏
仮に、朝鮮半島の平和的な統一が実現すれば、それは同時に、米国に対する北朝鮮の脅威が消滅するに等しい。そして、それが米中の功績であったなら、まさに両首脳は偉業を遂げた人物として、国際社会から歴史的な評価を受ける。そして、この伝説の人物は大きな未来を切り開くことになる。
こう考えると、その主張を一転させたトランプ氏の「一つの中国」支持表明や、米国は拒み続けてきた6ヵ国協議の再開で中国の誘いに応じるなど、朝鮮半島を巡っては、ある時点で連携が始まっていたと見ることができる。
第1に、双方は新しい起点に立って中米関係がより大きな発展を得られるよう推進することで同意した。
第2に、双方は次の段階のトップレベルの交流と対話メカニズムについて共通認識に達した。トランプ大統領は習近平国家主席の招待に応じて中国を公式訪問する。
第3に、双方は今後、二国間投資協定交渉を引き続き推進し、インフラ建設やエネルギーなどの分野での実務協力を模索し展開していく。
第4に、双方は敏感な問題を適切に処理し、建設的なやり方で食い違いを管理コントロールすることで同意した。台湾、朝鮮の核、南中国海などの問題では異なる立場に立っている。両国は衝突せず、対抗せず、相互尊重、協力・ウィンウィンの原則を遵守してお互いが関心を寄せる議題を処理しなければならない。トランプ政権がこの原則を承認したことは、中米関係にとって積極的な進展といえる
香港の親中メディア「明報」(9日付)は社説において、トランプ大統領と個人的に良好な関係を築くことで、米中関係を安定させるとの目的を果たした習近平氏は、今年秋に開催される中国共産党第19回全国代表大会(19大)でより一層核心的地位を得ることができ、党内最高指導部人事の選定で主導権を掌握していくとの見解を示した。
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