反グローバリズムの潮流(フランスの国民戦線)
反グローバリズムの潮流、今週はドイツと共にEUを中心となって支えているフランスの状況です。フランスでは今年の4月に大統領選挙が行われますが、反グローバリズム、反EU、反移民を主要な政策として主張する極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ル・ルペン党首(48歳)が第1回目の選挙で1位になるかもしれないと予想されています。
国民戦線はマリーヌ・ル・ルペンの父、ジャン=マリー・ル・ペンが1974年に設立した政党ですが、マリーヌが党首に就任し、強硬な人種差別的発言を繰り返す父親を除名処分としソフト路線に転換していから急速に支持を伸ばしています。その背景には、フランスがEUの政策=グローバリズムにより、経済的にも治安維持の面でも、ガタガタになっているという事実があります。フランスの農村は国際競争による敗北で疲弊し、2日に一人自殺者が出ると言われています。国内総生産は2010年からの5年間で7%から3.6%へ半減、失業率も10%を超えて高止まり。そこにテロと難民流入危機が相次ぎ、オランド大統領は支持率が20%を下回り12月1日に次期大統領選への不出馬を表明しました。
ここまで、状況が悪化しているにもかかわらず、これまでの政策を変えられないのでは、国民の支持を失うのは当然だと言えます。国民戦線は前党首のマイナスイメージもあり、大統領選挙の第1回投票で1位になっても、決選投票で反国民戦線の連合が組まれ、第二回投票で敗北すると予測されていますが、現党首になってイメージを改善してきており、今後のフランスの経済や治安の状況によっては、国民戦線が勝利する可能性も十分にあります。
■シリーズ『2017世界は…』 (1)右派台頭・欧州はどこへ
4月から予定されているフランスの大統領選挙で注目を集めているのが、極右政党を率いるルペン党首への支持の広がり。差別的な主張は控え、国民の生活を守ることを第一に掲げ、歴代政権にかえりみられなかった人たちが集まる。その1つが農村部。多くの農家が経営難に陥り廃業を余儀なくされていて、2日に1人のペースで自殺者が出ているといわれている。食品の品質管理に厳しいEUから毎年新たな設備投資を迫られる一方で、乳製品は各国との競争にさらされ、価格が大幅に下落。収入は11年前の半分に減った。
オランド大統領は、12月1日に次期大統領選への不出馬を表明。財政緊縮へとかじを切った13年夏以降に支持率が30%を切り、翌年夏には20%を下回り、出馬しても当選が見込めなかった。
リーマン・ショックと、続くユーロ危機による超緊縮政策が政治の混乱要因。10年に国内総生産(GDP)比で7%超あった財政赤字は15年に3.6%と約半分に圧縮され、失業率は12年に10%を超えて高止まりしたまま。その中でテロと難民流入危機が相次ぎ、経済政策と治安強化の在り方をめぐって場当たり的な対応に終始し、世論の不信感を高めることになった。
パリ郊外に住むフジュロール(34)は国民戦線(FN)投票すべきか真剣に検討している。フジュロールさんがルペン氏に関心を持ち始めたのは、イスラム過激派の男に警察官とそのパートナーが殺害された事件だ。現場は自宅から数キロしか離れていない。
ルペン氏は景気低迷と、欧州にとって第2次世界大戦以降最大の移民危機に起因する懸念を逆手に取ろうとしている。また、攻撃事件を受けて国民の間に広がった恐怖心に付け込み、警備態勢を強化し、フランス社会へのイスラム教文化の広がりを阻止することを公約に掲げている。
今年4月に行われる大統領選の第1回投票では、ルペン氏が2位、場合によっては1位になる。決選投票では、右派候補のフランソワ・フィヨン氏に敗れると予想されているが、ルペン氏勝利の可能性も完全には捨て切れない。
国民戦線創始者で初代党首のジャン=マリー・ル・ペンの第3女で、2011年より同党党首(第2代)。1965年生(48歳)パリ第二大学で法学の学位を修得した後、弁護士として働いた。欧州議会議員、イル=ド=フランス地域圏議会議員。2012年の大統領選挙では第1回投票で3位に食い込んだ。この時の得票率17.90%。
妊娠中絶や同性愛を容認。反ユダヤ主義的発言を理由に父親を除名、最近は反イスラーム主義的姿勢に舵を切っている。
■仏極右FNのルペン党首、選挙戦費用は父親から-銀行が融資拒否
フランス極右政党、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首は仏大統領選の選挙戦費用を賄うため、父親のジャンマリ・ルペン前党首の政治基金から600万ユーロ(約7億3700万円)を借りる。同国の銀行がFNへの融資を拒否しているためだ。
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