2018-06-08

反グローバリズムの潮流(イタリアの反EU政権、やっと正式に樹立)

 

_101833112_047158150この間、二転三転したイタリアの連立政権ですが、国会の上院、下院でも多数決で承認され、やっと正式に樹立されました。マスコミの報道では、新政権がばらまき政策を行い、その結果イタリアの国債が暴落してEU経済、さらには世界経済に悪影響を与えるのではないかとか、イタリアのばらまき政策をEUが認めずイタリアがEU離脱に向かうのではないかなど、マイナスの評価一色と言う感じですが、大きな可能性もあります。

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そもそも、イタリアで反EU政権が成立したのは、イタリア経済がガタガタになってしまったからです。さらに言えば、イタリアだけではなく、ヨーロパ中で反EU勢力が選挙のたびに支持を増やしています。マスコミは移民問題が主原因かのように報道していますが、その本質は経済格差の拡大です。

EU内での国による格差の拡大、国内における経済格差の拡大が進んでいる原因は、明らかにEUという巨大単一市場にあります。自由競争が推し進められれば、勝組と負け組の格差が広がるのは必然的な結果です。移民問題も、移民に使うお金があれば、本来の国民の生活保障に使うべきと言う事であり、移民排斥の根本原因はEUによる経済格差の拡大に有ります。

イタリアで反EU政権が成立したのは、EUと言う制度自体が限界を迎えていて、改革が必要なことを示している。さらには、世界で進められてきたグローバリズムが間違っていて改革が必要であることを示す、新しい可能性と捉えることも出来ます。

グローバリズムは、自由競争こそが経済活性化の切り札で、これを推し進めれば世界が豊かになると信じ込まされてきましたが、現実は全く違っており、ごく少数の勝ち組と多数の負け組が生み出され、経済格差が開く一方です。

市場拡大が限界を迎え世界経済が停滞する中で、改革が必要なことは間違いないものの、その答えはグローバリズムではなかった事は最早明らかではないでしょうか。そして、別の可能性として登場して来ているのが、イタリアの新政権が提案しているベーシック・インカムの導入です。ベーシック・インカムが導入されると人々の意識はどう変わるのか、世界初の試みであり、今後のイタリアは注目の価値ありです。

 

■イタリア、新内閣発足へ コンテ氏がポピュリスト連立政権首相に2018年6月1日

イタリアのセルジオ・マッタレッラ大統領は5月31日、法学者のジュゼッペ・コンテ氏と会談し、同氏を次期首相に指名した。マッタレッラ大統領との会談後、コンテ氏は重要閣僚である経済相の新候補がトルベルガタ大学の経済学教授、ジョバンニ・トリア氏だとの報道を認めた。

新内閣の主要閣僚は以下の通り――。◾内務相(副首相兼任):マッテオ・サルビーニ(同盟)◾産業相(副首相兼任):ルイジ・ディ・マイオ(五つ星運動)◾外相:エンツォ・モアベロ・ミラネージ(無所属、元欧州担当相)◾防衛相:エリザベッタ・トレンタ(五つ星運動)◾欧州担当相:パオロ・サボーナ(無所属)※当初は経済相候補に挙がり、議論を呼んだ

コンテ氏はロイター通信に対し、「既に政権公約に掲げている政治的目標の実現に、我々は集中して取り組む」と述べた。両党が新たに選んだ経済相、ジョバンニ・トリア氏は、EU域内の単一通貨「ユーロ」へのイタリアの参加継続を支持している。ただし、両党とEUとの対立は完全には終結していない。五つ星運動と同盟の両党は、新たな福祉支出と減税を約束しているが、実施すればEUの歳出関連規則に抵触する可能性がある。同盟のサルビーニ書記長は、内務相に就任する。サルビーニ氏は移民に関する強硬な新政策を公約しており、欧州に議論を巻き起こすかもしれない。

■イタリア連立政権発足も欧州で金融不安くすぶる G7でも議題に2018年6月2日

先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、南欧の政局混迷も報告された。スペイン下院は首相の不信任決議案を可決。イタリアで発足したポピュリズム(大衆迎合主義)2党による連立政権は欧州連合(EU)の財政規律策に反対しており、金融システム不安を招く懸念もくすぶる。伊新政権の発足を受け金融市場では安心感が広がっており、政局混迷で広がったユーロ売りや株価下落の動きにはひとまず歯止めがかかる可能性が高い。ただ、先行きを懸念する声は強い。新政権は最低所得保障制度の導入など財源確保が不透明なばらまき政策を主張しており、財政規律を重視するEUと確執が起きるのは避けられない。

一方、市場の警戒感は今年9月に量的緩和の期限を迎える欧州中央銀行(ECB)にも向けられている。ECBが量的緩和で購入した国債の保有比率でイタリアはドイツやフランスに次ぐ3位(18.9%、4月末時点)と大きい。こうした公的な“買い支え”が伊国債の価格暴落(金利急騰)を抑制した面があり、みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「緩和終了を強行すれば、市場は動揺する」と指摘する。

■五つ星・同盟連立政権発足-イタリア政治は再び世界を揺らすか?2018年6月4日

6月1日、イタリアで「五つ星運動」と「同盟」による政権が発足、コンテ首相率いる新政権が発足した。マッタレッラ大統領が、両党が最初に提出した閣僚名簿のユーロ懐疑派の経済・財務相人事を拒否し、コンテ氏が組閣を断念したことをきっかけに、7月にも事実上のユーロ離脱の是非を問う国民投票として再選挙が実施され、EU懐疑派がさらに躍進、イタリアのユーロ離脱が現実味を帯びる」との懸念からイタリア売りが加速、世界株安を招いた。それだけに、とりあえず早期の再選挙が回避されたことに、とりあえず一息ついたようだ。

まず、「冷静に考えれば、イタリアがユーロを離脱することは考え難い」という見方に筆者は基本的に同意するし、少なくとも五つ星・同盟政権が実行に移すとは考えていない。それでも、イタリアのユーロ離脱リスクを意識させる材料に事欠かないことが、イタリアの政治の混乱に「市場が激しく反応した」理由だ。

ユーロ導入以来、イタリアの経済のパフォーマンスは冴えない。欧州委員会の世論調査でも「ユーロを支持しない割合」が30%と、ユーロを導入する19カ国で最も高い。「物価が上がった」、「通貨切下げというルートを封じられた」という理由に加え、「終わりなき財政緊縮」を迫られている点も不人気の理由だろう。五つ星・同盟政権が「政権綱領」に盛り込んだ「15%と20%の二段階のフラットタックス」、「月780ユーロのベーシック・インカム(最低所得保障)」、「年金支給開始年齢引き上げ撤回」などの大盤振る舞いは、EUのルールでは許容されない。

五つ星・同盟連立政権のリスクとして今後警戒されるのは、EUのルールを無視して「政権綱領」の実現に突き進み、EUとの対立が先鋭化することだ。EUの財政ルールでは、各国の財政運営のルールへの適合性評価は、超国家機関である欧州委員会が行うが、違反の認定や制裁等の決定は、加盟国の代表で構成する閣僚理事会が行う。ユーロ危機前は、ドイツ、フランスの二大国が違反を繰り返していたこともあり、閣僚理事会が違反を認定できず、ルールが形骸化していた。その反省から、反対意思を表明した国が多数を占めない限り、可決とする「逆多数決方式」に変更されたが、明確な違反国が出たときに、果たして有効に機能するのかどうか、まだ試されたことがない。

しかし、市場がイタリアの財政への懸念を強め、国債利回りが急騰した時、政策を大きく修正しなければ、欧州安定メカニズム(ESM)による予防的クレジットラインや国債買い入れ支援、欧州中央銀行(ECB)のOMTと称する国債買い入れは利用できない。市場の監視は、EUの財政ルールよりもより効果的に、イタリアの新政権に現実的な政策運営を促すことになると見ている。

■アングル:イタリア新政権、中枢に陣取る「ユーロ懐疑派」たち2018年6月4日

仮にイタリアがユーロ圏から離脱するならば、金曜日夜になるだろう。政府高官は極秘に計画を練り上げ、当日夜になってから欧州各国に通知すると同時に、資本の国外流出を防ぐため、銀行と金融市場の閉鎖を命じる──。これは2015年10月、経済問題専門のウェブサイトに投稿されたイタリアのユーロ圏離脱計画「イタリアのプランB」だ。計画の立案者の1人である81歳のエコノミスト、パオロ・サボーナ氏が連立政権の経済財政相候補として浮上した。

新経済相に指名されたトルベルガタ大学のジョバンニ・トリア教授は「プランB」の策定には参加していないが、ユーロの支持者というわけでもない。トリア氏は昨年、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁がユーロは「不可逆的だ」と述べた際、「ユーロを維持するために必要な改革の条件と時期を明確にしない限りは、ドラギ総裁さえも正しいとはいえない」と主張した。だがトリア氏は1日夜、ロイターに「イタリアがユーロ圏を離脱しなければならないと言ったわけではない」と語った。

またサルビーニ書記長のユーロ懐疑派サークルの中心的人物が、同盟で経済政策の責任者であるクラウディオ・ボルギ氏だ。かつてドイツ銀行でマネジングディレクターを務めた同氏は、単一通貨に対する党政策「ユーロはもううんざり」を執筆。その中で同氏は、ユーロの終焉は避けられず、比較的早期に起こってほしいと書いている。

もっとも同盟内部では、サルビーニ書記長が実際にユーロ離脱を試みるとの見方は乏しい。

■イタリア:ポピュリスト政権が宣誓就任、信任投票へ-前途に難題も2018年6月4日

イタリアではポピュリスト政党の連立政権が1日、宣誓就任した。欧州連合(EU)規則を変え既存の秩序を覆す取り組みに本格的に着手する前に、最後のハードルである議会での信任投票に臨む。反エスタブリッシュメント政党「五つ星運動」と反移民の「同盟」は現在、上下両院ともに過半数を握っている。両党が既に閣僚人事と政策で合意しているため、信任投票は問題なくクリアされる見通しだが、その後の個別の法案については政策の優先順位などを巡り分裂もあり得るとアナリストはみている。

ジョージ・ソロス氏は「連立政権を構成する2党は基盤とする選挙区も違えば歳出についての要求も異なる。政権が倒れ、年内または来年の早期に選挙となる可能性は十分にある」とした。

五つ星のディマイオ党首は3日、最低所得保障の成立を目指すと発言。大規模減税を公約に掲げていた同盟のサルビーニ書記長は週末に、そのために難民救済のための予算を50億ユーロ削減する計画を明らかにした。

■「移民達は出国の準備をするべきである!」イタリア新政府内相、反移民姿勢を鮮明に打ち出す[海外の反応] 2018年6月4日

先週土曜日、イタリアで発足した新内閣の内務大臣に選出されたマッテオ・サルビーニ氏が軍事パレードに出席、その席において「イタリア国民の為の雇用創出」及び「移民の追放」を行う決意を強く示した。サルビーニ氏は「移民の(社会保障などに対する)タダ乗りはもう終わりだ!(-中略-)移民達は出国の準備をするべきである!(It’s time to pack your bags)」などと述べ、反移民姿勢を鮮明に打ち出したという。

■イタリアとスペインの政治リスクがひとまず後退、世界的にリスク回避の巻き戻しの動きに2018年6月5日

五つ星運動と同盟は連立政権樹立で合意し、経済相のポストに経済学教授のジョバンニ・トリア氏を起用することで、ジュセッペ・コンテ氏が首相に再指名され、サボーナ氏は欧州担当相に就く見込みとされている。これを受けて約3か月にわたるイタリアでの政治空白が解消されることになる。市場ではリスク要因としていた総選挙の可能性も後退した。連立政権はひとまずユーロ離脱に向けた動きを封印するとみられるが、財政拡大への懸念は残る。現実的な政策を取ることができるのかという不安はあるが、いったんイタリアの政局への懸念は後退した。

4日のイタリアの国債利回りは2.50%に低下した。5月29日にイタリアの10年債利回りは3.13%まで急上昇しており、ひとまずイタリア国債の利回り上昇にはブレーキが掛かった。EU内のリスクとしての火種は残る格好だが、その火種が再び炎上するのか、それとも火種を抱えながらも、リスクが顕在化させないような行動を取るのか。これは今後の金融政策にも影響を与えかねないECBとしても注意が怠れない。

■イタリア、ポピュリズム政権が正式発足2018年6月7日

イタリア下院は6日、ジュゼッペ・コンテ(Giuseppe Conte)首相率いる新政権の信任投票を行い、賛成多数で可決した。これにより、ユーロ圏第3位の経済大国である同国でポピュリズム(大衆迎合主義)政権が正式に発足した。信任投票を行い、賛成350、反対236、棄権35で可決。新政権は5日、上院でも信任を得ていた。

List    投稿者 dairinin | 2018-06-08 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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