2019-07-18

反グローバリズムの潮流(デンマークでは極右政党支持が半減、これはEUの転換点か?)

REUTERS190605_Denmark-thumb-720xauto-161015今年6月に行われたデンマークの総選挙では、反EU的な政策を掲げた国民党が大きく議席を減らしました。その前のEU議会選挙でも予想したほどには反EU勢力は伸びていません。何か大きな変化があったのでしょうか。デンマークの状況を調べてみました。

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まず、極右勢力の国民党ですが、5月末のEU議会選挙では得票率21%~12%に半減、6月5日の総選挙では37議席から16議席へとこれも半減しています。ここまで大きく得票を減らした原因ですが、移民や難民受け入れ拒否政策は社会民主党、自由党も同じ方向性を示しだしたことで、デンマーク国民党の目玉政策ではなくなったことです。

そして、社会民主党が勝利したのは、反移民に加えて、歴代政権が縮小してきた福祉政策を復活させることを公約に掲げた結果でした。社会民主党は他にも環境政策の推進も掲げています。これはEUが掲げる自由市場経済とは大きく異なる価値観だと思われます。

EU議会選挙を受けて、マスコミはEU崩壊の危機は去ったと報道しています。表面的には確かにその通りなのかもしれませんが、その奥で大きな変化が起きていると思われます。もともとのEUはグローバリズムの思想に基づいて自由市場を拡大する事が目的でしたが、デンマークで起こっている動きは、自由市場を抑制する方向の動きです。

EUと言う組織も、使い方によっては、移民の抑制や、自由競争による格差拡大の是正、環境保護のための生産抑制など、市場の問題を抑止する方向で使えるのかもしれない。従来のように移民反対だけを主張しているだけではなく、これに加えて積極的にグローバリズムの問題を抑止する政策を掲げた政党に、票が集まった結果なのでしょう。EUは今後、自由市場を推進する存在から、監視抑制する存在に変わっていくのかもしれません。

 

■欧州議会選、ポピュリスト政党伸び悩む-仏伊で善戦でも2019年5月26日

デンマークでは、ナショナリズムを掲げる国民党の得票が12%弱と、前回の国政選挙の21%から後退する見通しが出口調査で示された

■福祉国家の優等生「北欧モデル」にひび デンマーク総選挙の最重要争点に2019年6月5日

平等なユートピアを模索する世界中の多くの人々にとって、北欧型の福祉国家モデルは、長年のあいだ憧れの的だった。だがこのところ、その北欧モデルに軋みが生じている。人口高齢化を受けて、北欧諸国の政府は何年もかけて、「ゆりかごから墓場まで」式の寛容な福祉国家を少しずつ骨抜きにしてきた。苛立った有権者が「もうたくさんだ」と声を上げるなかで、デンマークで6月5日に予定されている選挙が1つの転機になるかもしれない。

フレデリクセン氏の社会民主党は、公的支出の拡大、増税を通じた企業・富裕層による福祉サービスの費用負担の拡大、40年働いた人の早期退職を認め、近年の段階的な年金改革の一部を撤回するといった公約を掲げて大衆的な支持を獲得している。

それにもかかわらず、財政支出拡大に関するフレデリクセン氏のメッセージは、人々に好印象を与えている。これと併せて、移民に対するスタンスを厳しくしたことも、反移民を旗印とするデンマーク人民党から支持者を奪ううえで有効だった。

20年に及ぶ経済改革を経て、デンマーク国民は現在の現状に不満を抱いている。医師による無料診察からがん治療に至る全般的な医療サービスの削減により、過去10年だけでも国営病院の4分の1が閉鎖された。この他にも、過去10年間の削減によって国立の学校のうち5分の1が閉鎖され、介護ホーム、清掃、病後のリハビリといったサービスに対する公的支出も、65歳以上の国民1人あたりでは4分の1減少した。

■総選挙で野党・社会民主党が第1党維持し政権交代も、極右党は敗北2019年06月06日

デンマークの議会総選挙(一院制、定数179)が6月5日に行われた。ラース・ルッケ・ラスムセン首相率いる中道右派の自由党は議席を伸ばしたが、連立与党が伸び悩む一方で、左派政党が議席を増やしたため、中道左派の野党・社会民主党を軸にした政権が誕生する見通しとなった。極右ポピュリスト政党デンマーク国民党は大幅に減らした。

社会民主党は得票率では前回を0.4ポイント下回ったものの、2議席増の48議席で議会第1党の座を維持した(表参照)。自由党が9議席増の43議席でそれに続いた。前回、議席を22から37まで伸ばして躍進したデンマーク国民党は21議席減の16議席にとどまる見込み。

総選挙の主な争点は、経済、社会福祉、移民、環境問題だった。子育て支援や保育士の給与向上など社会福祉拡充策が社会民主党やデンマーク国民党から挙げられる一方で、自由党はこれ以上の賃金コスト増加は考えられないと慎重な姿勢を見せていた。

■デンマーク、政権交代へ 「移民抑制」中道左派第1党2019年6月7日

選挙は、移民政策や福祉サービスの削減が主な争点だった。高齢化の進展を背景にした福祉サービスの削減が進む国内では、移民流入がその財源を圧迫しているとの不満がある。

会民主党は、右派勢力と同じく移民の流入抑制を支持する姿勢に転換。デンマーク議会が昨年五月、イスラム教徒の女性の衣服「ブルカ」などの公共の場での着用を禁じる法案を可決した際も賛成に回った。

選挙では右派勢力から一定の反移民支持層を奪ったとみられ、移民排斥を強調したデンマーク国民党の獲得議席は十六議席で四年前の前回選から半減した。

■デンマークの国会議員選出選挙の結果について2019年6月10日

今回の選挙で最も議席を減らしたのはデンマーク国民党です。前回の選挙で獲得していた37議席から21議席減で16議席という、デンマークの政治史上初めてとなる大幅な議席減となりました。主な原因は前回の選挙で37議席を獲得したのにも関わらず、自由党と共に政権に加わるところを、加わらず、国民の期待を裏切ったこと、移民や難民受け入れ拒否政策は社会民主党、自由党も同じ方向性を示しだしたことで、デンマーク国民党の目玉政策ではなくなったこと、気候問題には殆ど関心が無く、緑の政策への行動がなかったなどです。その結果、デンマーク国民党への票は自由党に流れ、保守党そして社会民主党に流れたとみています。

List    投稿者 dairinin | 2019-07-18 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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