トランプ大統領のロシア疑惑(いよいよ捜査は大詰めを迎える?)
アメリカの中間選挙が終わり、民主党は下院で多数派となり大統領の弾劾が可能になりましたが、上院は共和党が勝利し弾劾を否決できるという状況は変わりませんでした。そして、大統領がモラー特別検察官の質問に文書で回答する等、ロシア疑惑の捜査も大詰めを迎えています。トランプ大統領のロシア疑惑に関して最新の状況を調べてみました。
まず、中間選挙後の主要な動きを時系列を追って見てみましょう。
11/6 米中間選挙、下院は民主党、上院と知事選ではトランプ大統領が勝利
11/7 セッションズ司法長官更迭、疑惑捜査を批判したウィテカー氏を司法長官代行
11/19 民主党は慎重。モラー特別検察官が近く提出する捜査の結論を待っている。
11/20 トランプ大統領ロシア疑惑に書面で回答
11/27 元トランプ選対議長マナフォート氏が司法取引違反=モラー氏認定、捜査協力決裂
11/27 トランプ大統領に近い評論家、モラー氏との司法取引応じない意向
11/28 マナフォート被告が「ウィキリークス」の創設者と密会との報道
11/29 トランプ氏、露疑惑回答で「何も知らされていない」
マスコミは、下院で多数派を確保した民主党がすぐにでもトランプ大統領に対する弾劾を仕掛けるかのように報道していますが、実際にはモラー特別検察官の捜査報告を待つ慎重姿勢のようです。そして、モラー特別捜査官も、ロシア疑惑や捜査妨害の証拠はつかめておらず、決め手に欠ける状況は変わっていないようです。
一方のトランプ大統領は、中間選挙を優勢に終えることが出来、司法長官を更迭しモラー特別検察官の捜査に批判的だった人物を司法長官代行に据え、司法取引に応じたと思われていた側近も司法取引には応じず、逆に情報をトランプ大統領に流していたようです。
モラー特別捜査官は、まだあきらめていないようですが、これまでに明らかになっている捜査状況を見る限り、ロシア疑惑でトランプ大統領が弾劾にかけられる可能性は低そうです。
■米大統領、セッションズ司法長官の退任発表 事実上の更迭2018年11月8日
トランプ米大統領は中間選挙から一夜開けた7日、セッションズ司法長官が退任するとツイッターで発表した。事実上の更迭とみられる。トランプ氏は2016年の大統領選へのロシア介入疑惑を巡る捜査への関与をセッションズ氏が忌避したことで同氏を繰り返し批判していた。
トランプ大統領はセッションズ氏のこれまでの貢献に感謝するとともに、司法長官首席補佐官のマシュー・ホワイテカー氏が司法長官代理を務めることを明らかにした。
疑惑捜査を公然と批判していたマシュー・ウィテカー氏を司法長官代行に任命したことで「トランプ氏は捜査態勢縮小や特別検察官解任に道を開いた」と指摘。今回の事態を「憲法上の危機」と訴えた。
■米大統領、週内にもロシア関与疑惑で書面回答か=関係者2018年11月14日
トランプ米大統領が週内にも、2016年大統領選へのロシア関与疑惑を調べているモラー特別検察官の質問に書面で回答する見通しとなった。トランプ氏が回答を用意しているのはロシアの選挙関与疑惑に関連した部分のみで、自身が捜査妨害を試みた可能性の有無についてでないという。16年6月に行われたトランプ陣営幹部とロシア人の会合も回答に含まれるとしている。
■司法長官解任と民主党下院奪還で、ロシア疑惑捜査どうなる?2018年11月19日
最大の関心は民主党が結局のところ、トランプ大統領の弾劾手続きを開始するかどうかだが、民主党は現時点では意外に慎重のようだ。今はとりあえずモラー特別検察官が近く提出するという捜査の結論を待っている。
モラー氏は2017年5月に特別検察官に任命され、既に1年半、捜査してきた。これまでに32人と3企業を起訴した。トランプ陣営で活動した米国人4人、トランプ陣営に属していない米国人2人、そしてロシア人26人とロシアの3企業だ。だが、焦点のロシアとの共謀罪の容疑で起訴された人はいない。
ワシントンDCではこのところ、モラー特別検察官は既に捜査を完了し、近く報告をまとめるとの情報が出回っている。モラー特別検察官の捜査でもう一つ注目される点は、大統領による司法妨害を問うかどうかである。これまでの捜査状況から判断すると、共謀容疑での起訴はない。共謀に比べると司法妨害での起訴の可能性が高いようだが、それも検証は難しいだろう。
■トランプ大統領の弾劾訴追あるか 民主党は攻勢加速2018年11月20日
民主党の指導者は投票前、「弾劾」という言葉を禁句扱いにしてきた。そこには、有権者があまり弾劾を求めていないという事情がある。米NBCテレビの投票時の出口調査結果によれば、「弾劾すべきだ」とした人は41%にとどまった。民主党支持者では78%が弾劾を支持したものの、無党派層では「弾劾すべきでない」が57%で、「弾劾すべきだ」の34%を大きく上回った。
民主党のペロシ下院院内総務はCBSテレビで「われわれは、政治的目的で調査することはない。真実を求めるためだ」と述べ、モラー特別検察官の捜査を見守るべきだとの考えを示した。
ただ、このまま民主党が弾劾訴追をしないのかというと、必ずしもそうとはいえない。民主党は捜査手続きを活性化させ、召喚状や公聴会すべてがメディアを通じて最大限に伝えられる。トランプ氏が公開を控えている納税申告書が民主党の入手で注目され、このような展開が始まれば、民主党指導部は弾劾への動きを止められなくなるという。その通りなら、トランプ氏は2020年の大統領選で再選どころの話ではなくなるだろう。
米大統領選にロシアが介入した疑惑で、トランプ大統領は20日、モラー特別検察官の質問への書面回答を提出した。自身や側近らが選挙介入でロシアと共謀した事実はないと重ねて否定したとみられる。トランプ氏は今月16日、書面回答を「自分で書き終えた」と記者団に説明。捜査に応じるのは「これでおそらく終わり」と述べ、聴取の要請があっても拒否する構えを見せた。
■元トランプ選対議長が司法取引違反=モラー氏認定、捜査協力決裂2018年11月27日
トランプ米政権のロシア疑惑を捜査するモラー特別検察官は26日、法廷に提出した文書で、元トランプ選対本部議長のマナフォート被告が、司法取引の合意に反して偽証を繰り返していると認定した。
■トランプ大統領に近い評論家、モラー氏との司法取引応じない意向2018年11月27日
米保守派評論家のジェローム・コルシ氏は26日、2016年米大統領選へのロシア介入疑惑を捜査するモラー特別検察官が提案したとされる司法取引に応じない考えを明らかにした。コルシ氏によると、問題となっているのは2016年にストーン氏と別のトランプ氏の友人と交わした2件のメールで、内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者アサンジ氏に接触するよう促す内容だった。
英紙ガーディアン電子版は27日、トランプ大統領の陣営の選対本部長だったマナフォート被告が16年春、ロンドンのエクアドル大使館に籠城中の内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者アサンジ氏と密会していたと報じた。ウィキリークスはロシアがサイバー攻撃で民主党のクリントン陣営から不正入手したとされるメールを16年7月に暴露しており、疑惑を捜査するモラー特別検察官は密会に重大な関心を寄せているとみられる。
米大統領選にロシアが介入した疑惑で、トランプ大統領の陣営の選対本部長だったマナフォート被告がモラー特別検察官に捜査協力するとして司法取引を交わした後、モラー氏側と話した内容を弁護士を通じてトランプ氏側に繰り返し伝えていたとニューヨーク・タイムズ紙電子版が27日伝えた。複数の関係者の話としている。
■トランプ大統領、マナフォート被告への恩赦排除せず2018年11月29日
トランプ氏は米紙ニューヨーク・ポストとのインタビューで、マナフォート氏への恩赦に関し「一度も議論されていないが、議論の場から外すことはしないだろう」と語った。専門家によると、マナフォート氏は恩赦がなければ生涯を刑務所で過ごす可能性があるという。
トランプ氏は同インタビューでモラー氏の捜査を厳しく批判。マナフォート氏やトランプ氏の元政治コンサルタントのロジャー・ストーン氏、ストーン氏の友人であるジェローム・コルシ氏は3人とも特別検察官チームから嘘をつくよう求められたと主張した。
■トランプ氏、露疑惑回答で「何も知らされていない」2018年11月29日
ロシア側が大統領選中に入手した民主党候補のクリントン元国務長官に不利になる情報を、トランプ陣営が事前に知っていたかが焦点になっており、トランプ氏は「(陣営から)何も知らされていない」などと回答したという。
CNNによると、モラー氏の捜査チームは、トランプ陣営の顧問だったロジャー・ストーン氏が事前にウィキリークスの暴露を知っていたか否かに関心を寄せているという。ストーン氏は事前には知らなかったと主張しているといい、トランプ氏は「ストーン氏とウィキリークスの話をしていない」と回答したという。
またモラー氏は、16年6月にニューヨークのトランプタワーで開かれた会合を重視。トランプ氏の長男ジュニア氏らがロシア人弁護士らと面会し、事前にクリントン氏に不利な情報の提供が持ちかけられていたとされる。ジュニア氏は昨年7月、会合を認め「有益でなかった」としている。トランプ氏はモラー氏への回答で「会合について知らされていなかった」と主張したという。
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