イギリスでは、金貸し勢力挽回の動き。バイデンと組んで反中国に舵を切った?
前回は、イギリスが戦略の重心をインド太平洋に移したことをお伝えしました。EUからの離脱を進める反金貸し勢力の戦略かと思ったのですが、一概にそうとも言えないようです。G7では金貸し勢力復活をもくろむバイデン大統領と反中国で足並みをそろえる動きもしています。イギリスはいま、どちらに向かおうとしているのでしょうか。
イギリスはEUを離脱するまで、反EUであり中国との関係を重視していました。イギリスがG7参加国で最初に、中国が創設しようとしていたアジアインフラ投資銀行への参加を発表したこともその表れです。ここまでは、イギリスで反金貸し勢力が優勢だったことは間違いないと思われます。
その動きに変化が見られたのは、イギリスがEUを離脱した後だと思われます。EU離脱後の自由貿易協定締結の過程で、北アイルランドやスコットランドの独立問題が現実味を帯びてきます。そして、もう一つの転換点がアメリカでバイデン氏が大統領にえらばれたことです。このあたりからイギリスはアメリカとの関係を重視して、対中国強硬路線を打ち出しました。
しかし、完全に金貸し勢力がイギリスを押さえているかというと、そうでもありません。EUとの関係では漁業権を巡ってフランスと対立し軍艦を派遣、フランスのマクロン大統領とは北アイルランドの帰属をめぐって論争も発生しています。
反金貸し勢力の基本路線である脱EU、アジア重視路線という幹は変わっておらず、一つの枝である中国との関係を変えるにとどまっています。まだ、金貸し勢力は主導権を握っていないようです。
■英政府、軍艦2隻をジャージー島に 仏漁船の抗議を警戒2021年5月6日
英政府は5日、英仏海峡最大の島で英王室属領のジャージー島に軍艦2隻を派遣すると発表した。イギリスとフランスは漁業権をめぐって争いを続けている。イギリスがEU離脱後、フランスの漁船に対して新たな規則を適用していることをめぐり、仏政府はジャージー島への電力供給を断つと迫っている。
■スコットランド議会選、与党SNPが「歴史的」勝利 独立めぐる住民投票に期待も2021年5月9日
スコットランド議会選の開票が8日に終わり、与党・スコットランド国民党(SNP)が4期連続で第一党となった。SNPは64議席を獲得。2016年の前回選挙から1議席伸ばしたものの、単独過半数の65議席には届かなかった。このほか、保守党は31議席、労働党22議席、スコットランド緑の党8議席、自由民主党4議席となった。
SNPのスタージョン氏は、今回の選挙を受けて、独立をめぐる住民投票は「スコットランド全体の意志」になったと強調。ジョンソン首相は現段階で住民投票を行うのは「無謀で無責任」だと批判した。
■バイデン米大統領とジョンソン英首相がG7首脳会議を前に会談2021年6月10日
会談では両国関係のほかアフガニスタン、中国、イラン、ロシアも含めた一連の外交政策問題が取り上げられた。両首脳は、1941年にチャーチル首相とルーズベルト大統領が戦後の世界に向けた目標を設定した大西洋憲章の更新に関しても合意した。ジョンソン首相とバイデン大統領は、両国間の協力をイギリス・アメリカ自由貿易協定に向けて発展させることで合意した。
■英イングランドのロックダウン緩和、政府が4週間延長を検討=関係筋2021年6月12日
英イングランドではロックダウンが段階的に緩和され、今月21日に制限が解除される予定となっている。しかし英政府は、この解除時期を最大4週間遅らせることを検討しているという。イギリスでは現在、感染者が急増しているほか、インドで最初に特定された新形ウイルス変異株(デルタ株)の強い感染力への懸念が高まっている。
■G7サミット、北アイルランド巡る英・EU対立が再び表面化2021年6月14日
英領北アイルランド問題を巡る英国と欧州連合(EU)の対立が再び表面化した。英国は北アイルランドが英国の一部ではないとするフランス側の発言を「侮辱的」だと非難した。仏外交筋によると、マクロン大統領はジョンソン首相がソーセージを持ち出したことに困惑し、地理的な違いがあるとして、ソーセージの例えは根拠がないと指摘しただけだったという。
■G7共同宣言の「中国シフト」に猛反発する中国の「対イギリス戦略」2021年6月15日
イギリスはそもそも、1949年にいまの中華人民共和国が建国されるや、その3ヵ月後に早くも中国を承認している。中英国交関係の中で、「黄金時代」と言えたのが、キャメロン政権時代だった。イギリスはG7参加国で最初に、中国が創設しようとしていたアジアインフラ投資銀行への参加を発表し、世界を驚かせた。こういった経緯から、中国は、昨年1月に正式にEUから離脱したイギリスが、中国により接近してくるに違いないとにらんでいた。ところが、ジョンソン政権が組んだのは、中国ではなくアメリカだった。ジョンソン首相は、「香港の件で中国が許せない」と激昂していたという。そこでジョンソン首相は、今回のG7で、アメリカとの同盟の再構築――「新大西洋憲章」を演出した。
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