2018-06-21

反グローバリズムの潮流(イギリスのEU離脱法案可決)

英EU離脱法案、議会の権限制限するメイ政権案を上院が否決この間、あまり報道されていなかった、イギリスのEU離脱問題ですが、イギリス国会でEU離脱法案が可決されました。これで、EU離脱はスムーズに進むかと思ったのですが、それほど簡単ではないようです。イギリスの状況を調べてみました。

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今、一番問題になっているのは、アイルランド問題です。イギリス領である北アイルランドと、独立国であるアイルランドの間500キロの国境は行き来が自由で、イギリスがEUから離脱する条件として、EUはこの国境を管理しろと言っているのです。技術的にこれはかなり難しい問題のようです。

アイルランド問題を解決するために関税同盟にはしばらく残留すると言う妥協をすれば強硬派が反対し、国内のEU残留派、離脱強硬派との調整も難航しています。メイ首相はEUとの交渉を有利に進めるために、決定権を確保したいと考えていますが、議会はイギリスとEUの交渉が決別した際に議会に決定権を持たせようと、国会での駆け引きが続いていました。

メイ首相は、議会に方針を決定する権限を与えることは阻止したようですが、議会の承認を得る所までは譲歩しており、EUとの協議以上に、国内の議会協議にも手を取られ、来年3月までに迫った離脱協議の期限を守るのは、容易ではない状況です。

 

■欧州~重要局面を迎える英国のEU離脱協議~2018年6月2日

最大の関門となりそうなのが、北アイルランドの国境管理の問題だ。英国北アイルランドとアイルランドを隔てる約500キロの国境は陸続きで、現在ヒトやモノが自由に行き来している。南北アイルランドの国境で関税や規制上の検査をどのように行うかが争点となっている。

こうしたなか、EU離脱後の英国が従来方針通りに単一市場から脱退する一方、関税同盟には残留すべきとの声が浮上しており、親EU派議員の多い上院で関連の修正法案が可決された。単一市場から脱退すれば、英国はEUのルールから解放され、独自の移民政策などが採用できる。他方、関税同盟にとどまれば、EUと無関税で貿易を続けることができる一方、第三国との間ではEUの対外関税ルールに従うことになる。

英国政府はこれまでのところ関税同盟からの脱退姿勢を崩していない。関税同盟への残留に反発する強硬離脱派の協力がなければ、議会の過半数を確保することが難しいためだ。

■英国、移行期間後も数年間、EU関税同盟の期限延長に方針転換 2018年6月13日

「メイ英首相は19年3月末のEU離脱後の激変緩和に向けた20年12月末の移行期間終了後も一定期間、EU(欧州連合)の関税同盟に残る用意があると伝える」というスクープ記事を報じた。これはEU加盟国である南アイルランドと英国領の北アイルランドとの国境問題の解決をめぐって、EU残留支持派と離脱支持派に分断された閣内の意見を統一するため、メイ英首相が開催した閣僚会議で決まった。しかし、この報道を受けて、英EU離脱派は関税同盟の期限延長は英国が恒久的に離脱できなくなるのではないかとの懸念を募らせている。

南北アイルランド国境問題を解決する新バックストップ案は2つの案からなる。一つは、英国がEUに代わってEU向け製品への関税を徴収するという関税パートナーシップ案で、メイ英首相とソフトブレグジット(穏健離脱)派が支持している。もう一つは、センサー搭載カメラやGPS(全地球測位システム)などのITを駆使して国境検査や関税手続きを最大限簡素化するマキシム・ファシリテーション案で、ハードブレグジット(強硬離脱)派が主張している。

ただ、両案とも解決すべき技術的な問題があり完成まで3-5年はかかることから、23年までEU関税同盟に残る必要がある。

■英与党親EU派に造反の動き=離脱法案めぐり野党と共闘へ2018年6月17日

来年3月に予定される英国の欧州連合(EU)離脱をめぐり、メイ政権と与党・保守党内の親EU派議員との対立が深まっている。「下手な合意より決裂の方がましだ」。強気の発言を繰り返す首相、一方、親EU派は「物別れなら英経済・社会は混乱に陥る」と不安視。交渉が暗礁に乗り上げた場合は下院が政府に対し、離脱の先送りなどをEUに求めるよう指示できる条項を法案に盛り込む提案を行った。

この修正案が通れば、英国が何の取り決めもなくEUとたもとを分かつ「断崖絶壁」(政府高官)のリスクは遠のく。半面、決裂をちらつかせてEUから譲歩を引き出そうとする首相の交渉戦術も効力を失うことになる。首相は、EUと交渉を行うのはあくまで政府であり、「議会が政府の手を縛ることはできない」と親EU派をけん制する。

■英EU離脱法案、議会の権限制限するメイ政権案を上院が否決2018年6月19日

英上院は18日、欧州連合(EU)離脱法案に関し、議会が交渉の行方を左右することを認めないとしたメイ政権の案を否決し、議会により大きな権限を与える対案を可決した。

メイ政権は、EU離脱に関する象徴的な採決を行う権限を議会に付与しつつ、閣僚に方針転換を強いることは認めないとする案を提示していたが、上院はこれを否決。代わりに、メイ政権とEUの合意を議会が否決した場合や、合意がまとまらなかった場合に政府がとるべき対応を決める権限を議会に与える案を354対235の賛成多数で可決した。

■英EU離脱、議会権限の拡大法案受け入れられず=首相報道官2018年6月20日

メイ英首相の報道官は19日、欧州連合(EU)離脱を巡り、英上院が議会により大きな権限を与える議案を可決したことについて、受け入れられないとの認識を示した。上院は18日、議会が交渉の行方を左右することを認めないとしたメイ政権の案を否決し、議会により大きな権限を与える対案を可決した。対案は20日に下院で採決にかけられる。

報道官は同案について、「EU離脱を巡って、議会が政府に指示することを可能にする」内容で、首相の手足を縛り、自国にとって良い合意の実現が困難になると指摘した。

■英EU離脱法案が議会通過、親EU派も支持 首相「重要な一歩」2018年6月21日

英議会は20日、メイ政権が提出した欧州連合(EU)離脱法案を承認した。離脱交渉の行方について議会により大きな権限を与える修正案は反対多数で否決された。メイ首相はEU離脱の青写真となる同法案を巡り、自身が率いる保守党内の抵抗勢力と対峙するリスクの高い戦略を取ったが、これが功を奏した形となった。ただ、メイ首相は今後もEU離脱前に複数の法案を議会で可決する必要がある。EUとの通商関係や関税に関する取り決めなどを巡り、議論は難航するとみられる。

離脱法案の審議では、EUとの交渉が決裂した場合の議会の権限やEUとの合意がまとまった場合の議会の拒否権が争点となった。保守党からは6人の造反があったものの、メイ政権の案が最終的に承認されたことで、離脱交渉における戦略の変更を強いられる危機的状況は回避した格好となった。

フォックス英国際貿易相はBBCに対し、「大事なのは、政府が交渉に臨む際に(議会の)拘束を受けず、合意がまとまらない可能性をちらつかせることもできるということだ。さもなければ、EUが完全に優位な立場に立つことになる」と強調した。保守党のある議員は「英国の立場が強まった」と述べた。

■英議会、EU離脱法を承認 メイ首相「円滑で順序だったブレグジットを」6/21

英下院は20日、欧州連合(EU)離脱法案を賛成319対反対303で可決した。英国は2019年3月29日にEUを離脱することが決まっているが、離脱条件について数々の協議が進められている。

この法案をめぐっては、英国がEUと合意に至らないまま離脱日を迎えた場合について激しい議論があった。特に、次の3点について議論が集中した。・議会が英・EU間のブレグジット合意を認めなかった場合・メイ首相が2019年1月21日までに合意に至れなかったと発表した場合・合意がないまま2019年1月21日を過ぎた場合

英政府は、こうした事態になった場合は内閣が議会に対して次の段階を提案し、議会がそれについて投票を行うとしていた。当初はこの投票は「中立的な意味合い」で行われ、議員が提案内容を確認するにとどまるものだった。しかし18日に上院が承認した修正案では、下院議員は内閣の提案を「承認」する必要があると踏み込んだ内容になっていた。

投票前、造反を示唆していた保守派グループ指導部のドミニク・グリーブ議員は、この修正案によって「議会の主権」が確認されたと述べた。また、親EU派のスティーブン・ハモンド議員が、閣僚がさまざまな譲歩に加えて議会に「発言権」を与えると合意したと示唆すると、親EU派、EU離脱派双方から歓迎の声が上がった。

List    投稿者 dairinin | 2018-06-21 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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