【金による新基軸通貨】金価格についての総合論(前編1)(吉田繁治氏)
吉田繁治氏の『ビジネス知識源』によると、「世界新体制(トランプ革命)」によって、アメリカ連邦準備銀行FRBは廃止される。そして、米国財務省による金・銀・プラチナなどを裏付けとする国家紙幣(新ドル)が発行されるという。
そのためには新ドル紙幣の裏付けとなる金が大量に必要になる。あるいは、金価格が高騰しなければならない。
それについては、吉田繁治氏は「これからの金価格についての総合論」という論稿で、2022年~2023年以降、金閣は上昇すると述べている。
吉田繁治氏『ビジネス知識源』<Vol.1147:これからの金価格についての総合論(前編)>を要約したもの。
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「これからの金価格についての総合論―1」
金価格が2年から3年の長期にわたって下げるのは、その時期に起こっている、基軸通貨であるドルの価値下落を見えにくくするためです。このときは、FRBが金や金ETFの売りに介入し、下げ誘導をします。
▼(1)最初の大きな下げ誘導(FRB)は、1980年から1999年の20年間だった。第二次石油危機(=ドルの下落)のとき、1980年の金価格は1979年の250ドルから800ドルまで3.2倍に高騰しました(イランのイスラム革命:1978~1980)。この原因は、数倍に高騰した原油価格に対するドルの価値の下落だったのです。このため、下落しない金が買われたのです。
(a)現象的には、金価格の800ドルへの急騰は、親米派のパレービ国王を追放、イラン国王の資産と預金を、米国が凍結した(金融封鎖)ことから起こっています。米銀の預金封鎖(オイルマネーの没収)に対抗して、中東の王族が、ドルを捨て金地金を買い漁ったためでした。オイルマネーのドル預金は、米国が定義する非常時には、大統領令の一通で、米国が没収、または差し押さえができると分かったからです。
(b)その後の20年、FRBは、金価格に介入し、800ドルから、200ドル台(1999年)まで20年の長期にわたって金の価格をコントロールしたのです。この介入は、最大、最長のものでした。FRBの介入の理由は、金が大きく上がると、反対に石油危機のあとのドルの価値信用が下がるのが世界に見えて、米国の特権的な国益になっているドル基軸通貨の体制が、危うくなるからです。(ドル暴落:1ドル250円(1981年)→100円(1995年))
信用通貨の基軸通貨国(米国)は、「輸入に対しては、ドル(増刷できる信用通貨)を増発して払えばいい」という特権をもちます。金から離れた信用通貨(ドルや円)は、中央銀行による発行額に限度がないからです。
FRBによる低金利と、ドル発行の限度を示すのが、「ドルの買いが減った結果としてのドル安」です。このため、価値を保ちたいマネーは、ドル安期待のときは、ドルの反通貨と認める金を買って、金価格が上昇するのです。この動きが、典型的に表れたのが、ドルが1/2に下落した第二次石油危機(1979年)のあとの、金価格の約4倍(前年比)への高騰でした(1980年)。
▼(2)2度目のFRBの下げ誘導:2013年~15年
2度目は、2008年のリーマン危機のあと、再びドルの下落(120円→80円:-33%)を原因に、金価格が600ドルから1700ドルに上がったあとでした(2012年:2.8倍)。これは、米ドルの危機だったのですが、ドルが世界の基軸通貨であるため、「世界金融危機」とも言います。
日本は2018年末で、1018兆円の対外資産をもっています(推計80%はドル建て)。つまり・・・円はドルにコミットした共犯通貨です。このため、ドルの危機は、日本の危機になります。
FRBは、金価格高騰、ドル下落の2013年からは、空売りや先物売りではなく、金ETFの売り誘導(3年間で1162トン)をして、金価格を1100ドル(35%)、下げたのです。
(注)FRBの誘導とは、ゴールドマン、JPモルガン。シティバンク、バンカメ等の投資銀行と、その投資銀行のマネーを運用するヘッジファンド(預託資金量400兆円)に、金ETFの売りを要請することです。つまりFRBの「口先介入」であり、証拠は残らない。(2008年600ドル→2012年1700ドル→2015年1100ドル)
金ETFは、R家の夢でもあったペーパー・ゴールドとして、2004年に上場が認められた金の上場投信です。1990年代には、ありませんでした。
【結論】金価格は、FRBがドル基軸通貨体制の危機と認識されたとき、下げ誘導される。過去は、1回目が1980年から1999年、2回目が2013年から2015年だった。
今回も、2020年の第四四半期(9月~12月)に小規模な、金ETFの売り越しがある。これは、FRBによる調整誘導ではなく、20年12月決算に向かっての、ヘッジファンドの益出しだった。20年3月に株価が33%下がって大きな赤字が出たので、ヘッジファンド8000本は、20年12月の益出しに迫られていた。運用に利益が出ないと、ファンドが破産するからである。
■金ETFと金融商品の価値についての、根底的な考察
【結論】金価格は、FRBのドル政策の、逆の評価関数である。このため、ドル高期待があるときは下がり、ドル安期待のときは上がる。
「これからの金価格についての総合論―2」
■「金の価格への理解」の、最初の関門
【結論】金から離れ、価値が下がっていく本質の信用通貨の基軸通貨は、ドルを使う世界の国々の、心理的な慣性で決まっている。新しい現象を取り入れるのは、20年以上は遅れる。
■通貨の、本質的な機能
【結論】金投資家と、中央銀行関係者と「金は野蛮な金属」といったケインズを経典とするエコノミストと御用学者の認識には、グランドキャニオンのような心理的乖離がある。ケインズは、戦費調達論と貨幣改革論(192年)では、国債発行と大英銀行の買い取り(金本位ではない信用通貨)を称揚した。しかしブレトンウッズ会議(1944年)では、金本位のバンコールを提案した。信用通貨を発行するFRBの、名議長とされたグリーンスパンは、『金がもたらす経済的自由』という論を書いている。信用通貨では、中央銀行と政府が、コントロールするからである。信用通貨は、預金者にとっては、限界のない増刷によって、減価を続けるマネーでしかない。
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