2017-02-02

反グローバリズムの潮流(スペインのポデモス)

Spain Electionポデモスはスペインの左翼政党で、党名は英語で「We can」、日本語で「私たちはできる」「われわれには可能だ」の意味。 政治思想は左翼大衆主義、反体制主義、欧州懐疑主義。

これまで、ヨーロッパで見られた反グローバリズムの潮流は、極右勢力と言われる組織でしたが、スペインは極左勢力であるところが特徴です。この違いはどこから来るのでしょうか。

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これまで見てきたのは、イタリアフランスオランダオーストリアといった、EUの中でも主流派の国であり、移民が流れ込んで来る国でした。もともと豊かだったのに、移民が流れ込んできたから本来の国民が仕事を奪われ貧しくなったという意識になりやすいので、国粋主義的な主張が受け入れられやすく、極右勢力になったと思われます。

それに対してスペインは、失業率が高く、逆に仕事を求めてEUの主流派の国に出稼ぎに行かざるを得ない国です。グローバリズムの中で、国際資本から搾取される側であり、国家はその国際資本の手先で、国民が搾取されるのに手を貸しているという意識になりやすいようです。

ヨーロッパの中の、極右勢力と極左勢力の主張の、どちらがより本質的かと考えると、極右勢力はどこか、問題の本質をずらしていることが、見えてきます。問題の本質はグローバリズムによる国際資本による収奪で、その結果大衆は苦しめられているわけですが、極右勢力はその不満を直接の原因である国際資本からずらして、移民にぶつけています。これに対して、極左勢力であるスペインのポデモスは、その不満を、国際資本そのものやその手先である国家に直接向けているのです。

 

■スペインで躍進する若者政党・ポデモスはなぜ幅広い支持を集めているのか?

ポデモスは2014年1月にできたばかりの新しい政党で、同年5月の欧州議会選挙でスペイン第4の政党に、支持率は一時与党を抜いてトップに立ち、昨年末の総選挙では定数350議席のうち69議席を獲得し、第3党にまでなっている。

リーマン・ショック後のスペインは若者の失業率が約50%と危機的な状況で(全体では約25%)、大規模な抗議運動が起ったが選挙結果に影響を与えることはできず、与党は単独過半数に。こうした中で、2014年1月に30人の知識人によってポデモスが結党された。政策決定の段階から市民に参加してもらう従来の政治手法とは異なる形を実現しようとしている。メンバーも大半が30代で、若者政党という側面もある。

グローバル化や市場主義を強く批判し、政策も自由貿易からの離脱、生活に最低限必要な資金提供(ベーシックインカム)、利益を出している企業が労働者を解雇するのを禁止、公的債務支払いに関する市民の監督権といった典型的な左派ポピュリストの政策が多かったが、徐々に現実的な路線に、中道左派寄りへと変化してきている。

■ポデモス スペインの潮流

スペインでは4人に1人が失業し、若年層では2人に1人に仕事がないという状況らしい。これは英国に住んでいても肌で感じる。近年、保育業界でも、エージェンシーからの派遣保育士にやたらとスペイン人が増えたからだ。彼らは本国で失職した人々である。マドリードから出稼ぎに来ている元小学校教員、現派遣保育士の女性が言っていた。

ポデモス党首 パブロ・イグレシアスの言葉。「政治は何が正しいかということとは関係ない。成功することが全てだ」「僕のDNAには敗北が染みついている。(中略)左派の人間は概ねそうだろう。(中略)左派は連立を組むのが好きだ。『君たちと僕たちと彼らが組めば15%、いや20%の票が獲得できる』などと言う。だが、僕は20%なんか獲得したくない。僕は勝ちたいのだ。(中略)勝つためには、我々は左翼であることを宗教にするのをやめなければいけない。左翼とは、ピープルのツールであることだ。左翼はピープルにならなければならない」

「左翼は庶民に語りかけていない。ワーキングクラスの人々を異星人のように扱っている。為政者は僕たちがわけのわからない言葉を話す少数派のままでいることを望んでいるのだから、それでは彼らの思う壺だ」

ポデモスによれば、現状の経済格差、新自由主義的な規制緩和、福祉国家の解体を伴う緊縮財政政策は、政府の首脳が大企業・銀行の幹部ポストに就く人事慣行(回転ドア)によって支えられています。ポデモスは、このような政界と財界の癒着を排除して、民主主義の原則に立ち返ることを目指します。

■2016年: スペイン政治の地殻大変動(第1部)

11月3日、第2次マリアノ・ラホイ国民党政権の組閣が決まった。その顔ぶれを一言でいえば「ブリュッセル直属内閣」である。今回の組閣はEUの「直接統治」に近い形に変えられているように感じる。11月8日にブリュッセルは2017年のスペインの経済成長率を低めに見積もってより厳しい緊縮財政を求めた。IMFは12月13日にラホイに対して更なる緊縮とリフォームを要求し、消費税の値上げ、特別税制の強化、そして医療と教育の切り落としを命じた。

■スペイン政治の地殻大変動(第2部)ポデモスは分裂の危機?カタルーニャは?

ポデモス党首のパブロ・イグレシアスとNo.2で政策委員長のイニゴ・エレホンの間に対立が続き、党内で分裂の危機が拡大している。

党首のイグレシアスの両親はフランコ独裁時代に隠れ共産党員として地下活動を行っており、幼い時から両親に連れられて反NATOデモに参加し、現在もマドリッド市の困窮者が集まるバジェカス地区に住んでいる。必然的に、彼の考え方のベースにはマルクス主義があり、資本主義の矛盾に対する怒りと搾取され困窮する労働者階級への思いが常に彼を支え続けている。

一方のエレホン派は、イグレシアス派の持つ闘争的なイメージを嫌い、階級間や支配‐被支配の対立を重視せず、誰にでも開かれた「愛される党」を目指し、それをもって「民主的」と呼ぶ。他に、イグレシアスよりももっと過激な反資本主義を唱えるウルバン派があり、少数派ながらポデモスの党決定のキャスティングボードを握っている。

現在のところ、党員の中でイグレシアス派が50%、エレホン派が40%、イグレシアスよりももっと過激な反資本主義を唱えるウルバン派が10%程度の支持を受けている。

ポデモスは、イグレシアスの志向通りに党を作りなおしてみてはどうかと思う。たぶん一時的に支持者を大きく失うのかもしれないし、「ポピュリズム」との非難をますます激しく受けるのかもしれない。数年内に、現在のスペインの「経済の回復」は破たんするだろうし、ヨーロッパ全体でも政治的・経済的な崩壊が明らかになるだろう。その時に飛躍できるための基盤を作っておくことが最も大切。

List    投稿者 dairinin | 2017-02-02 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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