2020-09-01

米中貿易戦争、関係悪化が深刻化し経済対立から覇権争いに

img_d3cde3d4050c50bf67491fd13457f38d80765米中貿易戦争、第一段階の貿易合意、勝ったのはアメリカか中国か」では、アメリカが中国から譲歩を引き出したものの、それは中国が勝っているから譲歩する余裕があったに過ぎないと分析しました。譲歩を引き出し交渉に勝利したはずのアメリカは、その後も中国への攻勢を強め、とうとう武力抗争の一歩手前まで状況が悪化しています。何が起こっていて、米中関係は今後どうなるのでしょう。

にほんブログ村 経済ブログへ

表題にもある通り、米中の貿易摩擦は経済的な対立、交渉のレベルを超え、国家の存亡をかけた戦いのレベルに移行したようです。その、原因になったのは、コロナウイルスによる経済の悪化であると思われます。コロナ以前であれば、アメリカにも、特に中国には経済的な余裕がありました。

アメリカ経済も好調でトランプ大統領にしてみても中国叩きは人気取りのためのイベントで、多少の譲歩を引き出して支持率が上がればよく、本気で中国と構える気は無かった。中国の習近平主席も、多少アメリカに譲歩しても、それで中国の経済的繁栄が続けば良いと楽観視していたと思われます。

しかし、状況が大きく変わったのがコロナウイルスによる経済の悪化です。トランプ大統領も、習近平主席も経済成長の実現がその安定基盤でしたが、それが一気にマイナス成長に転落してしまいました。アメリカでは人種差別に端を発するデモや暴動が多発し、国家崩壊の危機にまで事態は悪化しています。中国でも報道されていませんが同じような状況が発生している可能性が高そうです。香港の弾圧や食糧不足など漏れてくる報道以上に危険な状態に陥っているのではないでしょうか。そうでなければ中国がミサイルを発射するとは思えません。

表向きは、従来の貿易戦争の延長線上で争っているように見えますが、アメリカも中国も国内で大暴動がおこり国家が崩壊する一歩手前という危機状態にあり、その危機を避けるために国外に闘争の矛先をそらす必要がある。そうだとすると、米中の対立が本格化し世界が混乱するか、米中がそれぞれ大暴動で国家崩壊の危機に陥るか、いずれにしても今後、世界は大きな混乱に巻き込まれる可能性が高そうです。

■米中貿易摩擦、ついに「覇権争い」へ進展…世界経済の行方は?202089

喧嘩には2種類あります。ひとつはガキ大将が弱虫からオモチャを脅しとろうという場合です。もうひとつは、勢力拡大中の副社長派閥を社長派閥が叩き潰そうとする場合です。ふたつ目の喧嘩は、本気の殴り合いです。最近の米中関係は、こちらになりつつあります。「中国が米国の覇権を脅かそうとしている。しかも不正な手段を多用している。絶対に許せない、叩き潰そう!」というわけですね。

じつは、米国議会のほうが先に「ふたつ目の喧嘩モード」に入っていました。中国が嫌がりそうな法案を、共和党も民主党も超党派のほぼ満場一致で次々と可決していたのです。つまり重要なのは、大統領選挙でトランプ大統領が負けたとしても、米国と中国の覇権争いは終わらない、ということです。

第一段階は、トランプ大統領が主導するカネの話(関税の話)でしたから、交渉の余地も妥協の余地もありました。ただ、米国が圧倒的に優位だったので、中国が一方的に妥協を強いられていました。しかし、第二段階は覇権争いですから、お互いに譲れないでしょう。しかも、米国は中国の政治体制を問題にしていますから、中国にとっては「絶対に譲れないところ」が争点になりつつあるわけです。

第二段階の覇権争いでは、米中の分断が進むでしょう。世界中の国と企業が「米国か中国か、どちらかを選べ」と双方から迫られた結果、米国と中国の経済が分断され、米国経済圏と中国経済圏がそれぞれ独立して存在するようになるかもしれません。そうなると、国も企業もどちらかを選ぶことになり、多くの国や企業に選ばれたほうが覇権争いで有利になるはずです。

これまでは、中国は先進国企業の直接投資によって繁栄してきたわけですが、それが逆回転をはじめ、先進国企業が工場を閉じて自国等へ戻って行ってしまうでしょう。そうなると、中国の経済力に魅せられて仲よくしていた国々も、金の切れ目が縁の切れ目ということになるかもしれません。

■米中対立が先鋭化する中で、日本が絶対に失敗してはいけない対応とは2020818

ここへ来て、日増しに米中の対立が先鋭化している。11月の大統領選挙を控えたトランプ政権は、香港の人権問題や南シナ海の領海問題、5G通信などのIT先端分野で中国への圧力を高めている。米国の圧力に対して中国は報復措置などで応酬し、世界の2大国のパワーのぶつかり合いが鮮明化している。

米国が対中強硬姿勢を強める背景には、共和党保守派を中心にオバマ前政権が中国の台頭を許した反省や批判がある。中国は海洋進出を強化し、一方的に南シナ海の領有権を主張するに至った。さらに、 “一帯一路(21世紀のシルクロード経済圏構想)を推進した。それが覇権国・米国の地位を脅かしている。

足元、経済成長の限界や新型コロナウイルスの発生によって、それまで盤石にみえた習近平国家主席の支配基盤はやや不安定化しているようだ。米国をはじめとする自由主義陣営からの圧力に対して、共産党指導部は強く対応しなければならず、これから米中の摩擦はさらに激化するだろう。

懸念されるのは、アジアやアフリカ各国における中国の影響力が拡大したことだ。コロナショックの発生によって世界経済は低迷し、パキスタンやアフリカ諸国が中国に債務の減免を求めている。中国もそれに応じる意向を示しているが、実際に返済期間の延長などが約束されるとなれば、中国は支援と見返りに各国にこれまで以上の服従を求めるだろう。仮に中国の影響力が強まれば、中国国内だけでなくアジア・アフリカ地域では人々の不平・不満が高まり、政情が不安定化することもあるだろう。そうなると、世界経済全体の安定にはかなりのマイナス影響がある。

今後、米国を中心とする自由主義陣営と、共産党の一党独裁体制の維持と強化を目指す中国の激突は一段と苛烈(かれつ)なものとなる可能性がある。

■米中が第1段階貿易合意巡り協議-「双方が進展確認」とUSTR2020825

米中関係が技術の安全性や香港問題、新型コロナウイルスへ対応などを巡り悪化する状況にあって、貿易は両国が協調する数少ない分野の1つとなっている。しかし、中国が第1段階合意で公約した米国の農産品とエネルギー、工業製品の購入ペースは今年の目標を大きく下回っている。USTRは声明で、「両国はまた、中国による米産品購入の大幅拡大と、合意履行に必要な将来の行動についても話し合った」と説明した。

中国国営新華社通信も劉副首相がライトハイザー、ムニューシン両氏と電話会談を行ったことを伝えた。それによれば、米中はマクロ経済政策の協調強化や第1段階合意の履行に関して建設的な協議を行った。両国は合意の履行を前進させるための環境作りで合意したという。

■【アメリカ発】中国の食糧不足が米中対立を深刻化させる2020830

日本でも報じられている通り、中国で食糧不足が懸念されている。習近平国家主席自らが「食べ残しをやめよう」と国民に訴える姿は世界から注目された。

大雨と洪水は三峡ダムを脅かしただけでなく、農地にも甚大な被害をもたらした。今の中国は、食糧を輸入する資金力と物流を持っているから、すぐに飢餓が起きるとは考えにくいが、食糧価格はじわじわと上がっており、今後も悪化が見込まれる。近隣諸国との関係も悪化しており、主要な輸入元であるアメリカ、オーストラリアとの関係も悪い。食糧安全保障の危機に、洪水が重なった。南部では広大な農地が破壊され、さらにイナゴの大群にも対処しなければならなかった。

習氏は、貿易交渉から南シナ海の領有権、台湾問題まで、これからも様々なテーマでトランプ政権に圧力をかけたいと考えている。が、その結果、アメリカからの食糧輸入が減ることになれば、食糧問題は深刻になる。食べ残し撲滅運動と反トランプ戦略は、新たな両国の対立を予感させている。

■米中一触即発…「南シナ海、このままでは本当に事故が起きる」2020831日

11月の米大統領選挙を2カ月後に控え、南シナ海が米中対立の最前線に浮上した。いつ軍事的衝突が起きてもおかしくないみなぎる緊張感が流れている。中国軍は26日、南シナ海にミサイル3種セットを発射した。香港紙の明報は「米国が中国本土を目標に攻撃する場合には相当な被害を甘受しなければならないという強力な警告」と評価した。

緊張局面は米国が意図的に作った側面がある。先月1日に南シナ海のパラセル諸島で中国人民解放軍の海上訓練が始まった。米海軍は待ってましたとばかりにフィリピンにいた原子力空母ニミッツとロナルド・レーガンを同時に南シナ海に急派した。

戦場は拡大を続け、ヒューストンの中国総領事館電撃閉鎖に続き9日には米保健福祉相が台湾を公式訪問した。中国の反発は激しかった。連日偵察機を飛ばし、中国軍は台湾と南シナ海の米軍を狙った訓練を始めた。事実上の武力示威だった。米国は引き続き偵察機を送って中国を刺激している。

米国の次の手は何か。一部では米軍が南シナ海遠海で訓練を装いミサイルを発射することもあるとの懸念まで出ている。

List    投稿者 dairinin | 2020-09-01 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2020/09/7318.html/trackback


Comment



Comment