2017-06-15

EUのグローバリズム勢力巻き返しは、マスコミに頼るしかない状況

Britain's Prime Minister Theresa May gives an election campaign speech to Conservative Party supporters in Norwich6月8日に行われたイギリスの総選挙では、EU離脱に向けて政権基盤を固めようとして解散総選挙を仕掛けたメイ首相の保守党が、第一党の地位は守ったものの、解散前より議席数を減らし過半数割れの敗北、EU離脱交渉の難航が予想されています。

そして6月11日に行われたフランスの下院議員選挙では、EU支持、グローバリズムを推進するマクロン大統領の新党が7割の議席を獲得する圧倒的勝利を収めました。

昨年は、イギリスの国民投票によるEU離脱派の勝利、ヨーロッパの民族主義勢力の台頭、アメリカのトランプ大統領当選など、反グローバリズム勢力の躍進が目立ちましたが、今年に入って、グローバリズム勢力が巻き返しを強めています。何が起こっているのでしょうか。

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イギリスの総選挙と、フランスの下院議員選挙で共通しているのが、選挙前に急激に状況が変わっている事です。イギリスではメイ首相が解散総選挙を表明した4月の時点では圧倒的勝利が予想されていたのに、2カ月間で過半数割れの大敗。フランスでは、5月の大統領選挙後の世論調査でマクロン政権が過半数を取ることを望まない人が6割を超えていたのにもかかわらず、選挙の結果は7割を超える圧勝が予想されています。

これだけ、大きく状況が変わる理由は、マスコミ報道以外に考えられません。グローバリズムを推進する勢力から、マスコミ中心にかなりの資金が投入されていると考えられます。ヨーロッパは、階級社会で支配階級さえ押さえておけば、ある程度コントロールできていたのが、イギリスのEU離脱に関する国民投票やEU各国でのポピュリズムの台頭に見られるように、大衆のコントロールが効かなくなり、マスコミによる大衆洗脳の強化に舵を切ったものと思われます。

それも、弱肉強食の戦いであるグローバリズムを推進すれば貧富の格差が拡大するのは必然、真正面から政策論争を仕掛けたのでは大衆の理解はえられません。グローバリズムか反グローバリズムかと言った正面の論争を挑むのではなく、イギリスではメイ首相の政策がころころ変わることを批判、フランスでは国民戦線の極右勢力という悪いイメージを強調するなど、マスコミらしいイメージ戦略による追い落としを図っています。トランプ大統領のロシアンゲート事件も同じ構造です。

しかし、メイ首相も過半数割れとは言え第一党は確保してEU離脱を進めています。イギリスにおけるグローバリズムと反グローバリズムの戦いは、まだ反グローバリズムが優勢です。フランスも今はマクロン政権がイメージだけで圧倒していますが、得票率は32%で投票率は47%ですから本当の支持率は15%でしかありません。実際の政権運営が始まればイメージ倒れであることがいずれ明らかになると思われます。マスコミはグローバリズムの圧勝のように伝えていますがこれも偽りのイメージにすぎません。ヨーロッパのグローバリズムと反グローバリズムの戦いは、この1年が正念場と言えそうです。

 

■選挙で明暗分かれたイギリスとフランス – イギリスのEU離脱の行方は混迷2017年06月14日

今回のイギリスの総選挙は、メイ首相が政権基盤を強化してEUとの離脱交渉を有利に進めようとの思惑から、本来なら3年後に予定されていた総選挙をわざわざ前倒しして実施したもので、いわば政治的な賭けでした。メイ首相が総選挙実施を表明した4月の時点では、野党・労働党の支持率は低迷していましたので、保守党は大幅に議席を伸ばせるとの読みがあったのでしょう。結果は事実上の敗北。やらなくていい選挙をわざわざ行って、かえって事態をこじらせてしまいました。

メディアは今回の保守党敗北の原因として、選挙期間中に起きたテロが政権への逆風につながったこと、選挙公約で社会保障の高齢者負担引き上げを打ち出したことなどを挙げています。実は高齢者はEU離脱支持が多いのです。その反発を招いたのは痛手だったと言えそうです。

しかしその背景には、多くのイギリス国民がメイ政権のEU離脱交渉についての方針に不安や不透明感を感じている。メイ政権はEU離脱については、移民の受け入れ制限を優先しEU単一市場から完全撤退する「強硬離脱」を掲げています。しかし離脱を支持した人の間でも強硬離脱ではなく穏健な離脱をめざすべきだとの意見が多くあります。

統一民主党は穏健離脱を主張しており、保守党が統一民主党の協力を取りつけても火種は残ります。

イギリスとEUの離脱交渉はこの19日から始まることになっていますが、この調子では予定どおりスタートできるかどうか。ただでさえ2年間で交渉がまとまらないとの観測が多い中で、スタートから遅れることになってはますます今後の交渉スケジュールがきつくなります。2年間の交渉期間を延期するか、最悪の場合は2019年3月の時点で何も決まらないまま離脱する”強制離脱”の可能性も否定できません。

■過半数に届かず? EU離脱担う首相メイ「嘘つき、嘘つき」の批判跳ね返せず 深読み!イギリス総選挙2017年06月09日

世論調査会社YouGovによると、争点は5月末時点では、ブレグジット(イギリスのEU離脱)58%と国民医療サービス(NHS)44%、移民・難民問題35%、経済31%の順番でしたが、マンチェスターの自爆テロ、ロンドン橋の暴走・刺殺テロの続発で、ブレグジット57%、国防と安全41%、NHS40%、移民・難民問題36%、経済27%と、テロ対策が喫緊の課題として急浮上しました。

地滑り的勝利が予想されていた保守党がコービンの猛追を許したのはメイに一番の問題があります。メイはすでに大きなUターンを4つしています。

(1)昨年の国民投票ではEU残留派だったのに、ハード・ブレグジットに転向

(2)春の予算演説で掲げた自営業者や起業家に対する国民保険料(公的年金給付金やNHSの財源)の引き上げを取り止め

(3)2020年の任期満了まで総選挙はしないと言っていたのに突然、解散・総選挙を実施

(4)お年寄りが亡くなると持ち家を処分し、未払いだった介護費用の支払いに充てる新しい制度をマニフェスト(政権公約)に掲げるも「認知症税」という批判を浴びて撤回

英誌エコノミストはこれまでメイのことを「メイビ(Maybe、もしかしたらのメイ)」と揶揄し、その政治手腕を疑問視してきました。

■仏国民議会選、マクロン氏新党が圧勝の見通し2017年06月12日

国民議会(下院)総選挙の第1回投票で、マクロン大統領の新党が議席の7割以上を獲得し圧勝する見通しとなった。マクロン大統領の新党「共和国前進」と協力政党の「民主運動」の得票率は32.3%で、全577議席のうち445議席を獲得するとの予想が出ている。

各党の得票率は、中道右派の共和党の16%弱だった一方、最近まで与党だった社会党は7.4%にとどまった。このほか極右政党の国民戦線(FN)は13.2%、極左の「屈しないフランス」は11%強だった。ル・ペン氏は、総選挙でのFNの低迷は低投票率のせいだと述べ、大政党に有利な選挙制度を改革すべきだと主張した。

投票率は48.7%と、前回2012年の第1回投票時の57.2%から大幅に低下した。

■フランス国民議会選挙:マクロン派「圧勝」で始まる「政治の実験」2017年06月13日

5月の大統領選挙直後の世論調査では、有権者の6割が、マクロン派が議会で過半数となるのを望まない、という結果が出ていたぐらいだから、急速な勢力伸長である。マクロン大統領の当選自体、一番手だった保守派フランソワ・フィヨン候補のスキャンダルといった、いわば敵失に助けられた、わずか3カ月足らずでの大逆転だったわけだが、国民議会選挙も短期間でのうなぎ上りの人気上昇だった。投票日5日前の調査では、LREM 支持率は29.5%だった。

意外な結果となったのが、マリーヌ・ルペンの極右FNと、極左ジャン=リュック・メランション率いる「不服従のフランス(FI)」の伸び悩みである。どうしてFNの勢いは止まったのであろうか。第1に、大統領選挙で第2回投票に残ったとはいえ、その結果が惨敗であったことが支持者を大いに落胆させた。加えて、こうした政党にありがちな内紛が持ち上がってしまった。加えてこの政党は資金力に乏しく、大統領選挙で資金が枯渇してしまったという悲哀もある。3月にマリーヌ・ルペンはモスクワでプーチン大統領と1時間半会談したが、大統領選の忙しい最中に訪露した目的は、実は選挙資金の無心だったともいわれているほどだ。

List    投稿者 dairinin | 2017-06-15 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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