FRB資産状況090624:海外の米国債離れが始まった?
今月3日、イタリアとスイスの国境の町キアッソで、1345億ドル(13兆円)という途方も無い額の米国債をスイスに運ぼうとした邦人2名がイタリア財務警察に拘束された。この不可解な事件は別記事で扱うことにするが、揺らぐドル・米国債の信用を更に危ういものにするに十分な影響を世界に与えたかも知れない。・・・・・前回5月17日の記事はこちら。
続きはクリックの後で
■FRBの米国債購入は3ヶ月で18兆円
6月24日のFRBのバランスシート。
左のグラフが資産、右のグラフが負債・資本 ※クリックで大きくなります。
米国政府は現在、毎週数百億ドルの米国債の入札を続けている。先週は史上最高の1040億ドルを売り出した。FRBによる米国債購入も3月末からの累積で早くも1810億ドル(約18兆円)に達した。3月に表明した“半年で3000億ドル買取り”の6割を既に費やしたことになる。
下表は5月末段階までの米国債発行残高、FRBの米国債保有残高、4月末時点の海外保有残高および各々の月別増減で、前回レポートに載せた表を更新したもの。4月に引き続き5月も、増加した米国債の55%はFRBが引き受けた計算になる(注:償還や市場での売買があるので、実際の新規発行債券の買受額と各セクターの保有残高の増減は一致しない)。
注目は、今年1月に次いで米国債海外保有残高が再び減少を始めたことだ。
■4月に米国債を増やした国はイギリスだけ
米国財務省が発表する国別の米国債保有残高の推移表で、保有額1千億ドル以上の上位7位までの部分を拡大してみた(右→左が新しい月。単位は10億ドル)。※クリックで全体が見れます。
これまで米国債を増加させてきた世界第一位の保有国である中国が減少に転じ、2位の日本も僅かながら減少。3位のカリブのタックス・ヘイブン(Carib Bnkng Ctrs)、4位の産油国も同様に減らしている。このうち最も減少幅の大きいのはタックス・ヘイブンの89億ドル。逆に、大きく残高を増やしたのは保有額5位の英国で、246億ドル(前月比19%)と急増した。
イギリスは以前から米国債保有額の変動が大きいそうだが、今回は、各国からソッポを向かれ始め、FRBの資金余力からも溢れ出た米国債を、米国の黒子ともいえる英国(の米系金融機関)が支援した、という構図なのかも知れない。
■今、米国債を支えているのはFRBと・・・家計!?
Garbagenews.comさんの『アメリカ国債(米国債)の購入先をグラフ化してみる』によれば、2009年第1四半期(1〜3月)に入って、米国債の購入先の中で「家計」の割合が急増しているようだ。下のグラフを見ると海外を軽く凌駕し、金額にしてなんと2兆ドルを超えている(注:金額からみて、新規発行債券の購入だけでなく発行済み債券市場での売買も含んでいると考えられる)。
これは一体、何を意味しているのだろうか?
次回:FRB資産状況090805
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コメント17件
Dr. Done | 2010.01.04 23:51
mihoriさん
前回(5)の投稿にいただいたコメントでのご質問に、今回お答えするのが至当だと思いましたので、mihoriさんのご投稿をこちらに移して、お答えしたいと思います。まず、mihoriさんの(5)へのコメントを引用しておきます。
【引用開始】
2010年01月01日 18:47
あけましておめでとうございます☆今年も記事UP楽しみにしています♪
今回も質問があります。いつも勉強不足で質問ばかりで申し訳ないのですが…f(^^;
>博士は現存の通貨やそれらのバスケットでは、「石油・ドル本位制」の根本的矛盾は解決しないとし、単一の超国家的国際準備通貨を創設することが必然であり、必要であると説いています。
とありますが、『「石油・ドル本位制」の根本的矛盾』ってなんなのだろう?ってふと疑問に思いました。対応策としては、バスケット通貨とか、現物を裏づけとする兌換貨幣にしたらいいとかはよく聞きますが。。。教えてもらえると嬉しいです♪Dr.Done氏が仰っている、トリウムで補完できる新通貨が出来ればうまくいくという実現基盤をもう少し知りたいな〜と想いました♪
mihori 2010年01月04日 02:11
【引用終了】
何度か申し上げましたが、前回(5)あそーさんのコメントにつけたコメントにも書きましたように、スティグリッツ国連報告をお読みになることを、ぜひお勧めします。
さらに、「石油・ドル本位制」という世界システムが人類にとって諸悪の根源になったことをご理解いただくには、やはりスティグリッツ博士の名著、「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す」の第9章をぜひ読んでみてください。
私はこの第9章を、英和対訳の形でPDFファイルにしておりますので、以下のリンクからお目通しください。
http://q3x3.heteml.jp/dd/ref/Stiglitz%20ch.9.pdf
上記二つの文献にお目通しいただいた上で、この連載をお読みいただければありがたいです。
Dr. done
Dr. Done | 2010.01.05 1:41
s. tanakaさん
コメントありがとうございます。Done Done!
おっしゃるとおり、「無限に刷ることが可能な不換紙幣の特性が現在のマネーの暴走を生んだ一要因だと」思います。巨大竜巻のごとく暴走するマネーは、もはや誰もこれをコントロールできないまでになっており、国家や欧米の国際金融資本すら、この竜巻に呑みこまれようとしています。
UNIはともかく、アトムはトリウム・エネルギー産業という実体経済を興していくために、必要に応じて発行されていく通貨です。ドルでなければ石油が買えないというパターンに対して、アトムでなければトリウムが買えないということはありません。しかしトリウム・エネルギー産業のキモとなる取引については、アトムが無ければ回らないという仕組みは貫いていきます。
基軸通貨ないし、国際準備通貨に関する現状の議論の中では、「トリフィン・ジレンマ」という論点が欠落しているため、不毛な議論がああでもない、こうでもないと論じられているように思えます。トリフィン・ジレンマとは、「基軸通貨は基軸通貨国の国際収支赤字によってのみ外国人に供給され、その国際収支赤字は基軸通貨の信認を低下させるから、基軸通貨の供給量(対外供給残高)拡大と信認維持とは両立しえない」(谷口智彦氏)矛盾のことを言います。
ドルを代替する基軸通貨に、円、ユーロ、元などの現存する通貨や、それらの組み合わせによるバスケットがなりえないのは、実にこの「トリフィン・ジレンマ」を克服することができないからです。内部経済をもつ通貨では、いずれドルの二の舞になる必然性を抱えているというわけです。ドルの二の舞とは、垂れ流しとその結果招来する暴落の運命です。
アトムのユニークさは、それがシーランド公国の通貨であるということに尽きます。シーランド公国は、限りなくバーチャル国家に近い超マイクロ国家であり、実質上内部経済と言われるものを全く持ち合わせておりません。
したがってアトムは、金をトリウムに置き換えた意味での兌換通貨ではありませんが、トリウム・エネルギー産業という実体経済の必要に応じてのみ発行される通貨ですから、トリフィン・ジレンマとは全く無縁の通貨であり、「無限に刷る」必要のない通貨なのです。
この実体経済の必要に応じてのみ発行される通貨という特質は、そのままUNIに継承されるわけですから、UNIもまた、不換通貨でありながら、スティグリッツ博士のいう「国際準備銀行」において、十分管理できる通貨になるでしょう。
実体経済の何倍にも及ぶギャンブルマネーが、ナノセコンドの速度で取引されていますが、21世紀最大の基幹産業となるトリウム・エネルギー産業に支えられたアトム(FX市場に上場されず、恣意的・人為的にアロケートされる)が成長する中で、ギャンブルマネーのバブルは必然的に弾けざるをえなくなるでしょう。その後各国が、それぞれの国の通貨をアトムにペグさせるという現象が生まれてくるはずです。これこそが、アトムがUNIとなる必然性です。
Dr. Done
かつ | 2010.01.06 8:41
シーランドを買収してそこから通貨を発行する、とは凄いですね!本文リンクのウィキペディアを見ましたが、シーランドドルとか切手とかコインとか色々すでに発行しているのですね。シーランドを買収しアトムを発行するにしても各国に認めてもらうためには色々と交渉が必要だと思いますがいかがでしょうか。
アトムによる、核や軍備の廃棄に向かわせるインセンティブを意図的に利かせた通貨政策など、とても素晴らしいと思います。
Dr. Done | 2010.01.06 13:42
かつさん
いつも投稿ありがとうございます。Done Done!
とにかく「建国」以来、話題にことかかない「シーランド公国」です。はっきり言って、やってきたことはほとんど「国づくりごっこ」です。実に愛すべきご一家ではありませんか。シーランドドルのコインとか、切手の発行も、まさに彼らのごっこ遊びの一環です。コインも切手も、蒐集家のニーズに対応して発行しているわけで、通貨や切手として流通しているわけではありません。万国郵便法に加盟していないシーランドの切手には、切手としての機能すら認められないわけですから、文字通り紙切れに過ぎないのですが・・・。
ただし注目すべきことは、シーランドドルの発行について、シーランドは「各国に認めてもらうために」「色々と交渉」など、いっさいしていないという事実です。つまり「アトムを発行するにしても各国に認めてもらうためには色々と交渉が必要」になるということはないということです。シーランドには他のいかなる国の主権も及んでいませんから、どんな主体であろうとも、シーランドのシニョリッジ特権にケチをつけることはできません。
シニョリッジ特権の「シニョリッジ」は、中世ヨーロッパの領主の呼称である「シニョール」を語源としており、領主の特権を意味しています。時代が進むにしたがって、国がもつ特権である通貨発行権を意味するようになったのです。他国の主権が及んでいない以上、シーランドの「領主」であるロイ・ベーツ公に通貨発行権があることは自明の理でありますから、シーランドドルの発行にケチをつけることは、誰にもできないことです。
シーランドドルとアトムの違いは何かというと、それはたった一つ、流通する力があるかないかだけです。力というのは「実体経済による支え」と「資本輸出力」の二つです。この二つの力があれば、通貨として流通する力をもちますし、その力が抜群に強ければ、基軸通貨にすらなることができます。
アトムは21世紀最大の基幹産業であるトリウム・エネルギー産業に支えられていますから、シーランドがこの産業の「キモ」を掌中にする限り、アトムは基軸通貨になるだけの強力な力をもつことができます。しかもシーランドは内部経済をもたない、限りなくバーチャル国家に近い存在ですから、トリフィン・ジレンマを抱える必然性からは一切無縁です。つまりアトムには、単一の超国家的準備通貨に転換する特殊な資質が、アプリオリに備わっているということになります。
最後に以上の計画は、すべてが完結したビジネス・モデルであるということです。つまりそのフィジビリティ(実現可能性)の源泉は、トリウム・エネルギー産業のフィジビリティに由来しています。人類が次世代のエネルギーとして、トリウム・エネルギーを必要とする限り、このビジネス・モデルはフィジブルになります。
ビジネスにおける交渉は全て商取引であるわけですから、したがってアトムを他の通貨と交換(アロケート)するときの為替レートについては、FX市場に上場して市場原理に委ねることなく、恣意的・人為的に相対で決めることができます。核拡散政策をとり、核軍縮に背を向ける国の通貨とは、相手国の通貨に不利なレートで交換する、もしくは交換を拒絶することもできます。まさに「鉄腕アトム」の面目躍如ということです。
シーランドについては、世界中でただの一カ国も承認をしていないということで、そんな「国」の統治権を購入してどうするんだ、などと心配してくださる方がいます。国際法の条文のあれこれを材料に、「国」か「国」でないかなどとかまびすしく議論してくださるお節介なおしゃべり雀がいますが、このような統治権の購入交渉において、有利になる材料は大歓迎ではありませんか。アトムを発行するシニョリッジ特権については、現状おもちゃのシーランドドルが発行されているだけでも十分なのです。
Dr. Done
sumie | 2010.01.06 18:36
今日、初めて拝見させていただきました。すごいですね。未来がぱーっと見えた感じです。電線や電柱もいらなくなって、視界がよくなるでしょうね。通貨マフィアなど、世界の特権階級にまけないよう、がんばっていただきたいです。シーランド、思わず移住したいと思いましたが、バーチャルの域ですか。一家に一台トリチウム炉が来るのを待つとしますか。
Dr. Done | 2010.01.06 20:36
sumieさん
投稿ありがとうございます。Done Done!
電力をはじめエネルギーは、消費する場所で必要な分だけ生産されることが理想です。そういう点からすれば、若狭湾沿岸で発電したウラン−プルトニウム・サイクルの原子力発電による電力を、超高圧に昇圧して、野越え、山越え首都圏まで送電するような電力システムが、いかに無駄なコストをかけているかは、語る必要すらないことです。
このような馬鹿げた設備投資をしてしまった日本を始めとする先進国の電力産業が、トリウム発電のような、安全のゆえに分散化できるエネルギー産業にとっては、最もふさわしくない環境を作ってしまっていることは、皮肉としかいいようがありません。
「未来がはーっと見えた感じ」になれるのは、先進国ではなく、後進国からです。そこらじゅうに張り巡らされている電線や、歩行者のスムーズな通行まで妨害する電柱ほど、傍若無人に景観と環境を壊しているものはないですよね。これだけを見ても、現代のエネルギー産業ほど後進性を象徴しているものはないと思います。分散化エネルギーとはいうものの、1基のトリウム炉当りの出力エネルギーは当面8万kWeですが、目標は一家に一基の冷蔵庫サイズのトリウム炉を目指して、小型化を追求していきます。
シーランド公国のパスポートは今でも発行されていて、どこに住んでいるどこの国の人でも、シーランド公国の国籍を得ることができます。国民議会は、ネット上のメーリングリストで行うことにしましょう。超マイクロ国家ですが、これこそまさに宇宙船地球号の実質上のコクピットになります。
sumieさんも、パスポートを取得されて、ぜひ宇宙船地球号のコクピットへどうぞ!
Dr. Done
あそー | 2010.01.07 12:49
シーランド公国に着目されたいきさつや理由は良く分かりましたが、
統治権を買収するには、どのくらいの資金が必要なのでしょうか?
現実的なプランかどうかは
ここに掛かっていると思います。
Dr. Done | 2010.01.07 12:57
あそーさん
毎度コメントありがとうございます。Done Done!
ネット新聞「トリップ・アトラス」は次のように報じています。
「2007年初頭、シーランドは売りに出された。2007年以降、シーランドはスペインの不動産会社、インモナランジャを通じて売買できる状態にある。しかし、公国を売るというのは技術的に馴染まないので、シーランドの現所有者は管理権(custodianship)の『売買』を考えている。総額で65,000,000ポンドから504,000,000ポンド(998,000,000ドル、750.000,000ユーロ)が、この新しいテナントへの価格とされている。『8桁以上』のオファーが望まれている。」
65,000,000ポンド、504,000,000ポンドは、それぞれ今日のレートで95億9712万円、744億1452万円です。ずいぶんと幅があります。10,000,000ポンドでも「8桁以上」には違いないわけで、これだと14億7648万円。これが交渉のスタートラインになるでしょう。高い買い物には違いありませんが、シニョリッジ特権を買うと思えば、安い買い物でしょう。
かつてスウェーデンの「パイレート・ベイ」が、著作権ヘイブンを目的に買収資金のカンパを集めたが、目標金額には到底及ばず、またシーランドからも拒絶されて、不発に終わったことがあります。その後カザフスタンのビジネスマンが購入したという噂が流れましたが、この「噂も75日」でフェードアウトしてしまいました。私がウォッチしている限りでは、その後、売買に関する情報は皆無です。
金融崩壊以後、いわゆるタックス・ヘイブンへの規制強化が取りざたされている中で、ここに新しいタックス・ヘイブンを構築しようという案件も、出現する可能性は皆無に等しいでしょう。ライバルが出現するとすれば、筆者のビジネスモデルを脅威と考える勢力からの妨害でしょうが、これとて今の時点で、「8桁以上」のポンドを積んで妨害するほどに切迫感を抱くところもないでしょう。甘いかもしれませんが・・・。もちろん筆者としても、シーランドの件にブログ等で言及するときには、「シーランド」とカタカナを使うことにしており、アルファベットでの表記を避ける程度の配慮はしているつもりです。
シーランド公国の買収については、国際法に強いマルチリンガルでマルチリーガルの弁護士に一任しています。今年中には買収を完了するつもりですが、合意が成立した時点で、「シーランド公国準備銀行」を立ち上げ、 ニュージーランドのネットバンク、「GGBG」から「アトム外貨預金」をリリースします。アトム創設当初は、アトムと円をペグし、為替リスクを解消します。アトム外貨預金の金利は、ニュージーランド・ドル建ての外貨預金と日本の定期預金の中間に設定します。
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s.tanaka | 2010.01.04 22:56
昨年末の記事の幾つかで触れましたが、新通貨が「兌換か不換か?」は、一つの極めて重要な検討事項ではないかと思います。
無限に刷ることが可能な不換紙幣の特性が現在のマネーの暴走を生んだ一要因だとすれば、これを如何に制御するかが問われるからです。
アトム→UNIは、トリウム・エネルギーとのペッグという、一種の兌換通貨を想定しているということでしょうか?