2022-12-13

中国のゼロコロナ政策見直しで、世界は安定に向かえるか?

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中国のゼロコロナ政策は、世界経済に大きな影響を与えています。さらには、ロシアのウクライナ侵攻という大きな問題が発生している中で、中国の内政が混乱すれば、中国が台湾に武力侵攻を仕掛ける恐れもあります。中国のゼロコロナ政策は今後の世界情勢にも大きくかかわってきます。

中国は何故ゼロコロナ政策を重視し、転換が困難になっているのか、今後どうなるのか追求してみました。

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(1)ゼロコロナは、中国の独裁体制が民主主義より優れていることの証明だった。

・新型コロナ感染症流行の初期、中国のゼロコロナ政策は合理的、効果的だった。世界に先駆けて感染爆発を制御し、経済回復も世界最速だった。厳しい規制のおかげで感染は局所的に抑えられ、殆どの人は普通に暮らせた。したがってみんながゼロコロナ=厳しい規制を支持した。

このゼロコロナ政策は、中国が一党独裁体制だからできたこと。民主主義国のように国民のご機嫌を伺いながらではできない。経済も好調、コロナも抑え込むことができ、中国の政治体制が民主主義よりも優れていることの証明であった。

(2)ゼロコロナの転換が遅れは、独裁体制の弊害

状況が変わったのが、オミクロン株の登場。それまで上手く行っていた、中国の早期発見、早期対策システムでも、感染を局所に抑えられなくなった

・感染が拡大すると、地方や建物ごとに、中央のルールより厳しく規制する独自ルールが広がる。上の目を過剰に気にする独裁体制の欠陥。

・こうなると、厳しい規制が大勢に課され、にもかかわらずコロナの感染は制御できず、経済に影響も出で、大衆の支持を失う。

・大衆はそれでもしばらく我慢していたが、10月の共産党大会以降はゼロコロナ政策が緩和されると言う期待が外れ、それどころかゼロコロナ達成のため地方の独自ルールの不合理さが加速、中国経済は低迷、強制隔離で死者が出て大衆の不満が膨れ上がる。そこに、ワールドカップサッカーで世界はコロナを気にせずに自由に応援しているのをみて、不満が爆発する。

(3)中国はなぜ、ゼロコロナからウィズコロナに転換できなかったのか。

①独裁体制の宿命、政策転換が難しい。

・これは、習近平が悪いと言うよりも、独裁者を恐れる官僚集団の宿命と捉えるべきだろう。ゼロコロナを否定すれば習近平の顔をつぶすという忖度や、事実を伝えると機嫌を損ねて降格されるのではないかと言う恐怖心が発生し、ゼロコロナを継続せざるを得なくなる。

・さらに、コロナ感染を抑えられないと末端に行くほど、忖度や恐怖心が拡大し、やっきになって感染を抑えようとして不合理な規制が拡大していく。

・ワクチン開発の遅れや、医療体制の強化が進まないと言った問題も、現場の判断能力が無くなっている結果である可能性が高い。

②中国で進む世代間の対立

・中国では高齢者のワクチン接種率が低いのも大きな特徴、東洋医学になじみが深い中国の高齢者はワクチンを信用しない。多数派の高齢者はゼロコロナを支持しており、反対しているのは少数派の若者だけ。だから転換しにくいと言った問題もある。

 (4)習近平にとって大事なのはゼロコロナではなく経済成長

・ゼロコロナに対する不満の爆発を受けて習近平がどう動くか世界が注目していた。下手をするとゼロコロナの継続から中国国内秩序が大混乱し、国民の不満の矛先を独裁政権からそらすために台湾進攻と言う結果も考えられる。その先には、中国とロシアが連携を強め、先進諸国と対立。最悪の場合、第三次世界大戦に進む危険性もある。

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・幸いにして、習近平はゼロコロナ政策に拘泥せず、規制緩和を進めている。中国国内秩序の大混乱は避けられそうな状況である。

・よく考えてみれば、習近平がゼロコロナを推進したのも経済成長を円滑に進めるためであった。今の中国、習近平の政権を支えているのは経済成長である。それまで発展途上国に甘んじていた中国が、世界第二位の経済大国となり、いずれアメリカを追い越して世界第一になる。それこそが習近平の権力基盤である。

・マスコミは、習近平が若者の反対運動を恐れてゼロコロナ政策を引っ込めたと、報道しているようだが、それは間違っている。今の中国では若者は少数派であり、政権を転覆するような力はない。

・習近平がゼロコロナ政策を見直したのは、あくまでも経済発展にとって有効か否かの判断であろう。経済さえ好調であれば、独裁体制に対する反対など恐れるに足らない。中国が経済発展を第一義と捉えているのであれば、世界との対立も抑制される。

・ゼロコロナ政策見直しで、中国経済が成長軌道に戻れば、習近平は経済成長のために世界市場で協調的な姿勢を維持する可能性が高い。

(5)ゼロコロナから転換した後の中国経済は要注意

・今後、注意しないといけないのは、ゼロコロナから転換した後の中国経済である。もし、コロナが蔓延して中国経済が急激に落ち込むようなことがあれば、非常に危険な状態となる。コロナ政策も失敗、経済政策も失敗となると、若者だけでなく高齢者も含めた全国民の不満が独裁政権に向かうことになる。

・そうなると、政権への不満をそらすために台湾進攻、と言う最悪のシナリオを習近平が選択する危険が高まる

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■参考

「あなたは北京に帰れません」“ゼロコロナ”政策続く中国の現実

中国経済見通し:上海都市封鎖の二の舞か?

中国「ゼロコロナ政策」iPhone直撃、生産拠点が事実上封鎖…品薄恐れも

中国で感染拡大 2日連続で最多更新経済に追い打ち懸念強まる

中国が新型コロナによる渡航規制緩和、しかし依然として厳しい内容

なぜ中国はゼロコロナ政策を止めないのか

アングル:「隔離は御免」、中国ゼロコロナ政策に市民の不満爆発

中国、ゼロコロナ緩和の動き 中央の判断?「感染対策は新たな情勢」

中国、ゼロコロナ政策から脱却図る 習主席の面目を保ちながら

List    投稿者 noda | 2022-12-13 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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