世界金融不安は、より深刻化している
8月9日に、欧州中央銀行(ECB)が、サブプライムローン問題を契機とした信用不安の発生・拡大を防ぐため、約948億ユーロ(約15兆4000億円)を緊急供給。同じく、米連邦準備理事会(FRB)が、金融市場に総額240億ドル(約2兆8000億円)の資金供給を行なって以来、欧米日の中央銀行による、短期資金市場への巨額な資金供給が続いている。
サブプライムローンの劣化に端を発した信用不安は、銀行間の信用不安となり、銀行間の短期資金貸借がスムーズに行かなくなった。その為、欧米日中央銀行が、資金供給の出動をしたのである。
経過を表にしてみました。
欧米日中央銀行の短期資金供給
欧州中央銀行 | 米国FRB | 日本銀行 | |
9日 | 948億ユーロ(15兆4000億円) | 240億ドル(2兆8000億円) | — |
10日 | 610億5000万ユーロ(9兆8000臆円) | 380億ドル(4兆5000億円) | 1兆円 |
13日 | 476億6500万ユーロ(8兆円弱) | — | 6000臆円 |
14日 | — | — | ▼1兆6000臆円 |
15日 | — | 70億ドル(8200億円) | — |
16日 | — | 50億ドル(5700億円) | 4000臆円 |
21日 | — | 37億5000万ドル(4300億円) | — |
注:14日の日銀の▼は、短期市場からの資金回収です。
しかし、銀行の資金バランスは、短期資金供給だけでは安定化できないほど悪化しているので、欧米中央銀行はより長期の資金供給を発動した。
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まずは、米国FRBの動き。
>米連邦準備理事会(FRB)は17日、臨時の米連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、FRBが民間金融機関に資金を貸し出す際の金利である公定歩合を緊急に0.5%引き下げ、年5.75%とすることを全会一致で決定した。9月18日に予定されている次回FOMCを待たずに公定歩合を引き下げ、サブプライム問題に端を発した金融・株式市場の動揺や信用収縮に歯止めをかける強い意志を示した。(日経新聞)
>米国の政策当局は21日、サブプライムローン問題を発端とする金融不安の沈静化に全力を挙げる意向を相次ぎ表明。バーナンキFRB議長はあらゆる政策手段を総動員する考えを示し、ポールソン米財務長官も可能な政策を検討すると述べた。(日経新聞)
>シティグループなど米大手銀4行は22日、FRBから公定歩合でそれぞれ5億ドル(約570億円)を借り入れたと発表した。4行とも資金繰りに不安はないが、「他の金融機関の利用を促すため、指導的役割を果たす」と強調、官民一体で市場安定に取り組む姿勢を示した。
>サブプライムローン問題による信用不安を受け、FRBは資金繰りが厳しい金融機関に公定歩合貸し出しの活用を促している。ただ金融機関が資金繰り不安の風評を恐れて利用をためらう可能性があり、シティなど財務が健全な大手行が率先して利用するよう求めていた。
(日経新聞)
FRBの公定歩合の引き下げと米大手銀行の公定歩合による借り入れについては、少し解説が必要でしょう。
FRBの短期資金供給は、日日の供給であり、その日の資金不安がある銀行向けの供給であり、翌日には銀行は返済する。
(これを銀行間取引=インターバンク取引という。この短期資金市場で、中央銀行が資金を貸し付ける。)
それに対し、公定歩合による借り入れは、1カ月、3カ月という長期の借り入れができ、銀行の資金繰りがそれだけ改善する。
しかし、公定歩合で借り入れる銀行は、それだけで「危ない銀行」という見方がされるので、シティバンク等の大手銀行が借り入れを行ない、それに続く銀行の信用不安を鎮めようと言う訳である。
続いて、欧州で、3ヵ月単位の巨額な資金供給が行なわれた。
>欧州中央銀行(ECB)は22日、供給期限を異例の91日とする400億ユーロ(約6兆2000億円)規模の資金を市場に注入することを発表した。市場の不安心理が再び増幅しかねないことをにらんだ措置とみられる。(日経新聞23日)
米国住宅ローン会社の相次ぐ倒産、住宅ローン担保証券に投資していたヘッジファンドの崩壊が、本体銀行の資金繰り悪化をより深刻化させ、最後の貸し手である「中央銀行頼み」となっている。
世界の株価下落は小康状態であるが、金融状況は、日本におけるバブル崩壊と同じ道筋を歩んでおり、その推移から依然として、目が離せない。
今後、9月末の4半期決算時が、次の焦点となる。現在価格評価が凍結されている「住宅ローン担保証券」の価格評価がいやでもやってくる。
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leonrosa | 2007.10.11 19:38
「ふるさと納税」で、地方の自治体に寄付金をした場合に、住居地の住民税を控除する事が議論されている。
しかし、この議論、報道で抜けている事がある。
地方自治体への寄付金は、国税である所得税の控除を、現在でも受ける事ができる。
但し、源泉徴収の給与所得者だと、3月に確定申告して還付手続きを必要とする。(煩雑である。)
地方自治体への寄付行為と所得税控除の仕組みをもっと簡便事務にすれば、自治体応援の寄付が大幅に増える。
中央官庁(財務省、国税庁)は、国税を依然として聖域としている。これは、NPO税制の時と同じである。