2022-09-02

中央銀行 基礎構造と日銀の禁じ手

ユーラシアを筆頭に新たな経済システムの検討が進んでいますが、「改めて中央銀行の歴史を振り返ってみよう。」という記事の第2弾です。(第1弾はこちら
今回は、日本銀行に焦点を当ててみたいと思います。
簡単な歴史は前回記載しましたが、まずは一般的に言われる役割から。国債大量買入れのリスクに迫ります。

にほんブログ村 経済ブログへ

(written by taka)

この絵の中でも着目したいのは、2番と3番。国債の流れと、当座預金について。
次にこちら。

(written by taka)

若い人は知らない人も結構いると思いますが、本来、日本銀行の国債買入は禁止されています。(リンク

日本銀行における国債の引受けは、財政法第5条により、原則として禁止されています(これを「国債の市中消化の原則」と言います)。

これは、中央銀行がいったん国債の引受けによって政府への資金供与を始めると、その国の政府の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛からなくなり、悪性のインフレーションを引き起こすおそれがあるからです。そうなると、その国の通貨や経済運営そのものに対する国内外からの信頼も失われてしまいます。これは長い歴史から得られた貴重な経験であり、わが国だけでなく先進各国で中央銀行による国債引受けが制度的に禁止されているのもこのためです。

ただし、日本銀行では、金融調節の結果として保有している国債のうち、償還期限が到来したものについては、財政法第5条ただし書きの規定に基づいて、国会の議決を経た金額の範囲内に限って、国による借換えに応じています。こうした国による借換えのための国債の引受けは、予め年度ごとに政策委員会の決定を経て行っています。

財政法第5条: すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。(引用終わり)

そして、結果として、国債は日銀の保有が5割を超している。
なぜ日本の中央銀行は、他国のような対策がとれないのか。それも、国債保有に起因します。(リンク

日銀が抱える日本国債というアキレス腱
他国同様にインフレによる経済への悪影響が予想できるにも関わらず、日銀が他の中央銀行と同様の対応をしないのは何故なのでしょうか。

そこには日銀の「バランスシート問題」があると考えます。異次元金融緩和からの出口戦略を始めないのではなく、始められない可能性が考えられます。

日銀は異次元緩和政策として、イールドカーブコントロールと呼ばれる長期金利の引き下げを行いました。そのために、市場から大量の日本国債を購入してきました。その残高は500兆円を超えています。

もし、金融政策を引締める方向に変更するのであれば、金利上昇懸念から国債価格が急落(長期金利は急上昇)するリスクが出てきます。そして日銀が保有国債を売れずに、そのまま抱え込めば、その国債に含み損が出ることによって、日銀が債務超過に陥るリスクが出てきます。

さらに、今後発行する新規の国債の金利も上昇します。これは、国の国債の利払い負担を高め、財政赤字の悪化に拍車をかけることになります。(引用終わり)

 

禁じ手中の禁じ手に手を出した。あとには引けない状態か。(リンク

2013年3月に黒田総裁が就任して、翌月には現在も続く『異次元緩和』が始まった。だが思えばこれはアベノミクスの3本柱(金融政策・財政政策・成長戦略)のひとつだった。しかし、あれから5年、財政健全化は程遠く、成長戦略も今はいずこである。結局、日銀の政策だけが残ってしまった。現在日本の借金である国債の50%は日銀が持っている。その日銀は「政府の子会社」だと安倍元首相は言う。
「元首相って人が中央銀行は政府の子会社だっていうのは不適切だと思いますけど、間違ってはいません。経済学上はそういう位置づけです。いちばん問題なのは、親会社がしっかりしていれば大丈夫なんです。過去に債務超過になった中央銀行もいくつもあります。でも親会社である政府がしっかりしていれば、日銀が債務超過になろうと助けてくれます。ところが親会社がしっかりしてないで、2%インフレ目標だけ達成できて、金利上げますって言っても政府は大赤字だから困ります、これじゃどうにもならないです」

経済評論家 藤巻健史氏
「そもそも異次元の金融緩和自体がデフレ脱却っていう大義名分はありましたけど、僕は2013年4月の時点で財政破綻していたと思うんです。GDPに対する借金の割合がすごくて。異次元緩和っていかにも格好いい言葉なんですが、実は財政ファイナンスなんです。中央銀行が政府にお金を貸しちゃうっていうやっちゃいけないこと、禁じ手中の禁じ手をやったんです。
要は財政破綻の先送り政策をやったんです。先人がこんなことしちゃだめだよってことをあの時点でやったから、今こんなに膿がたまってるんです」(引用終わり)

ここからどこに向かっていくか。いよいよ日銀の債務超過が起こるのか。逆にそれが新たな経済システム始動のキーになるのか。
中央銀行の先行きを追求していきます。
(taka/mochi)

List    投稿者 motiduki | 2022-09-02 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2022/09/10131.html/trackback


Comment



Comment