米国へのマネーフローは不動か?
ブログ名称が、金貸しは、国家を相手に金を貸すになりました。
現代経済は、益々、実態経済から遊離した『マネーゲーム』の世界が、株式市場、外国為替市場、政府債務証券取引市場(国債市場)、商品市場(石油、金、穀物など)として肥大化しています。
その意味で、金貸しの歴史と論理(マネーの論理)を徹底的に追求することが必須といえます。
そこで、改めて、米国へ流入するマネーを扱ってみます。
古典的な国際経済学では、大幅な経常収支の赤字国は、海外から赤字分の借金を必要とし、利子は高くなります。つまり、赤字国の政府は、金利(政策金利)を引き上げて、金貸しに借金を申し込みます。
ですから、世界最大の経常収支赤字国、年間8000億ドル(約90兆円)の経常収支赤字を出している米国は、本来なら世界一高金利の国、金利二桁の国になってもオカシクありません。
しかし、実際には、経常収支黒字国であるカナダとほぼ同じ、4.5%前後の金利水準です。
昨日(10月31日)、FRB(米連邦準備理事会)が、政策金利(FFレイト)を0.25%引き下げ、4.5%としました。苦境に追い込まれた住宅部門と金融市場を支えするために、9月に続く連続利下げです。
古典的経済学では、金利を引き下げれば、資金はより高い金利を求めて、流出します。
9月、10月の米国の金利引下げで、資金は米国から流出しているのだろうか。
そのような動きは顕著には現れていません。
ここで、米国の莫大な経常収支赤字を補填している、世界中からのマネー流入の図を上げておきます。出典は『通商白書2007年版』です。
数字は、2005年ですが、米国の7000億ドルの経常収支赤字に対して、中国・日本を中心とするアジアと中東産油国の資金(経常収支黒字分)が、直接米国投資の経路と、欧州の金融機関を迂回した経路で、米国に流入しています。
この、不動の構造が出来上がっているために、米国の政策金利は、4.5%という水準が可能です。
この不動の構造を支えている要因は何だろうか?
続きを読む前に、クリックを!
1.米国の借金による消費を前提に世界の実態産業が成立している
日本の自動車メーカーも、中国の家電メーカーも、中東の石油も、米国という大消費地に依存して、産業活動が成立している。
だから、消費が失速しないように、安い金利で追い貸しをするしかない。
2.経常収支の黒字国では、資金があり余り、その運用先として、米国に向かう
大幅な経常収支の黒字国では、実態経済が必要とする資金以上にお金が貯まっている。その余剰資金が運用利益を求めて、マネー市場が発達した米国に流入する。
3.経常収支の黒字国は、英米の金融会社を顧問にし、そのアドバイスより米国に向かう
運用市場のルールや手法を開発したのが、英米の金融会社。後発組の黒字国は、そのルールと手法に不慣れなため、英米の金融会社を顧問にする。この顧問が勧めるのが、米国の様々なマネーゲーム市場である。
米国へのマネーフローを保証しているのは、お金は金利(運用利益)を生み出すものという観念。そして、運用するための市場(マネーゲーム市場)が、NY株式市場、NY為替市場、NY債権市場、NY石油市場、シカゴ穀物市場と肥大化したのが米国である。
お金がお金を生むという観念(思想)に洗脳し、それを実体化させた「マネーゲーム市場」を次から次につくり出している。これが、最大経常収支赤字国の米国に、マネーを流入させる欺瞞的な構造です。
この事に気づいているのが、石油収入をアルゼンチンやボリビア等の国づくりに使おうとしているベネズエラのチャぺス大統領、「金利は禁止・お金は実体のある事業に使うべし」というイスラム金融のセンターをめざしているマレーシアです。
サブプライム問題では、欧米金融会社のマネー市場づくりと運用手法に疑問符が付きました。これが、「お金がお金を生む」という洗脳から世界中が覚醒する契機となるか?! です。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2007/11/379.html/trackback