【新しい通貨のカタチとは?~(2) クレジットカード、おトク感に潜む本質~】
本シリーズでは、次代の社会構造を通貨という切り口から追求していきます。
前回は新しい通貨システムの可能性として、ビットコインを取り上げました<リンク>。
今回は実際の通貨ではありませんが、お金を使う手段として身近なクレジットカードについて取り上げてみたいと思います。
平成25年3月末の日本におけるクレジットカード発行枚数は、3億2,352万枚。1人当たり3.1枚所有していることになります。
現金を所持せずとも、あらゆるサービスを付け払いというカタチで受けることができ、キャッシング機能を使えば街中のATMから現金を手にする事も可能です。
またショッピングをする際につくポイントもクレジットカードを利用する利点ともされています。
クレジットカードの特徴を並べてみると便利なことだらけですが、それだけがクレジットカードの全てではありません。歴史、収益構造を紐解くことでクレジットカードの本質に迫ります。
■クレジットカードの歴史
クレジットカードの前身は20世紀はじめ、アメリカの少数のホテル、石油会社、百貨店によって発行された「ハウスカード」と言われています。
発行の目的は
・掛売りのある顧客の本人確認
・顧客の購入記録をとる仕組みを加盟店に提供
・自社製品の販売促進策(業界内部の競争に勝つため=差別化を図るため)
であり、現在流通しているクレジットカードと大きく異なるのは個々の業界内でしか利用できないという点でした。またサードパーティーと呼ばれる、取引をしている当事者以外、第三者の取引事務処理機関の存在もありませんでした。
現在流通しているクレジットカードの始まりは「ダイナーズクラブ(1949年)」の設立だと言われています。全国の様々な施設で商品の購入やサービスが受けることが出来る汎用性から瞬く間に広がっていきました。また消費者と加盟店の仲介者となり、消費者と加盟店、両者から手数料を取るという新しい金融ビジネス(物販の手段ではなく、システムによって金をもうける)として注目され、多くのカード会社が誕生しました。
さらにこのクレジットカードが広まる背景として、アメリカの経済が大きく影響していたともいえます。20世紀以降アメリカは軍需によって大きな生産基盤を生み出し、基本的な生活を送るのに必要なレベル以上の収入を人々が得るようになりました。クレジットは本来、付け払いという支払能力に乏しい人が用いるシステムでしたが、より裕福な顧客を対象とし、手持ち資金以上(現金を持たずとも)の商品購入やサービスを受けることを可能にする、まさに私権意識を刺激するカンフル剤として広まっていったのです。
■カード会社の収益構造
<以下引用>リンク
クレジットカード会社の利益は、大きく分けると加盟店からの手数料収入と、会員からのキャッシングやカードローンの手数料収入が挙げられます。
・加盟店からの手数料収入
会員がクレジットカードで買い物をした分の数パーセント(一般的には3%~7%程度)が、カード会社の手数料として入ります。(パーセンテージの割合は一律ではなく、契約の際に取り決められます。)また、国際ブランドによってもパーセンテージが異なる場合があり、(例えばVISA、MasterCardは3%でも、JCBやAMEXは5%といった場合もあります。)
基本的にはVISA、MasterCardは手数料が低率ですが、JCB・AMEX・Diners Clubは多少高率です。特に海外では、手数料が高いAMEXを出したら「VISAは持ってないか?そっちで払ってくれないか?」等と言われる事もあるようです。
・会員からのキャッシングやカードローン、リボ、分割の手数料
実はこれらの手数料が、かなり大きな利益をもたらすと言われます。皆さんも、クレジットカード会社から、「リボ払いをすると○○ポイントプレゼント」や「今ならカードローンがキャンペーン中」などといった「お金を借りてダイレクトメール」(が届きませんか?)これも悪く言うと、餌をまいて手数料収入が見込める支払い方法を増やしたいからに他なりません。
特に最近は、ショッピング利用可能枠よりもカードローンやキャッシングの利用枠の方が大きくなっているカード会社も増えています。
■加盟店のメリットとは
カード会社が利益を得る事が出来る仕組みは簡単にご理解いただけると思いますが、加盟店はどうでしょう。クレジットカード会社に手数料を取られてしまったり、その場ですぐに現金が手に入らなかったりで、良い事など全く無さそうに見えます。しかし、実は加盟店にとっても目には見えないたくさんのメリットがあるのです。
・販売機会損失の回避
消費者の欲しいもの(またはサービス)があった時、手持ちの現金がなくても購入できるのがクレジットカードのメリットです。現金が足りずに購入する事ができない場合でも、クレジットカードを持っていれば、立て替え払いで購入できてしまいます。しかも、ほとんどのクレジットカードが一括払いの他に分割払い・リボ払いが選べるので、支出の波を穏やかにする事も可能です。
「消費者が欲しい商品をすぐ買える」という事は、加盟店側からすれば、販売の機会を逃さないという事になります。つまり機会損失を回避する事に繋がり、売り上げもアップするのです。また、現金を必要としなくても買い物ができるので、気が大きくなり、消費金額が上がる効果もあります。これもまた、売り上げアップに一役買っています。
・お金の管理費の軽減
実は、お金を管理するのは非常に大変なもの。お金の移動等の取り扱いには危険も伴いますので、たくさんの現金を扱う店舗では、警備会社に依頼しなくてはなりません。また、レジに多額の現金を置いておく事は、防犯上の問題もあります。
クレジットカードが使用できれば、レジに多額の現金が存在する可能性も下がりますし、現金自体のやり取りが少なくなるため、つり銭の受け渡しミスの絶対数も減少します。つまる所、結局はお金の管理費が浮くというメリットがあるのです。
・他店との差別化の為
「クレジットカード払いができなければ、そのお店では買わない」という人も、意外な程たくさんいるようです。特にマイルを貯めている人や、出費をできる限り一本化したい人、クレジットカードを家計簿がわりにしている人に、その様な考えは多い様です。
そういった人達にも利用してもらえるメリットと同時に、クレジットカードが使えるというだけでも、使えない店と比較して差別化を図れます。今日では、クレジットカードを使える方が当然な時代になってきていますので、使えない事による顧客満足度の低下の方がデメリットと言えるでしょう。
<引用終わり>
■クレジットカードのこれから
日本では1970年に貧困が消滅しその後、人々の購買意欲がどんどん下がっていきました。そんな時代の中、クレジットカードは銀行系のカードを中心に発行が進んでいきます。
加盟店と提携し、ポイント制度によるオトク感を演出、何かにつけて顧客にカードを作らせる機会を設け、普及に努めました。クレジットカードの発展は「いかにして顧客に金を使わせるか」という軸で追求された結果によるものだと言えます。
歴史、収益構造からクレジットカードの本質を見極めると、カードユーザーに必要以上のお金を使わせること(購買意欲の促進)に一貫しています。
経済発展→消費拡大の時代には一定の経済効果をもたらし、ビジネスとしても発展しました。しかし豊かさが実現された現在の社会を鑑みると次代の通貨システムとしての可能性は薄そうです。
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