2007-03-29

決済通貨ドルへの兆戦(ユーロ、ルーブル)

世界の貿易は、過半がドル建てで行われている。
貿易決済通貨がドル建てということを単純化して見てみよう。
日本の石油輸入代金は、サウジアラビヤやイランにドルで支払われる。
日本の石油会社の支払うドルは、国内の為替市場で円を売り、ドルを購入する。ドルの売り手は、米国向けにドル建てで輸出している自動車会社となる。ドルを売り、円を買う。
世界の原油価格がドル基準となっており、産油国の輸出がドル建てを条件にしているからである。
石油輸入を必要としている国は、輸入決済通貨としてのドルをドル建て輸出のかたちで確保する必要がある。
日本や中国が、強くドル決済に縛られている理由である。(日本と中国の外貨準備がドルとなっている一つの理由でもある。)
ここで、日本の輸出入の決済通貨の推移を見ると、1960年代は8割がドル建てで行われていた。
アジア諸国と貿易が増加すると共に、円決済の比率が上がっていった。
1990年代以降は、輸出に占めるドル決済比率は、約50%、円決済比率が40%である。
しかし、輸入では、ドル決済比率は70%、円決済比率は20%である。
日本の輸入が、原油や鉄鉱石等の資源、米国からの穀物などが過半を占めているからである。
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世界の国々は、輸出入に伴い、必ず、自国通貨以外の外貨を確保する必要があるが、唯一の例外がある。ドル発券国の米国である。
米国だけは、石油輸入の為に必要なドルを輸出で確保する必要がない。自国内のドル供給量を増加させて、支払いに必要なドルを石油会社に回せばよいだけである。
世界経済のドル支配(ドル中軸経済)の基盤は、原油を始めとする原材料が、全てドル建ての価格で決まり、ドル建てで決済されるからである。
例えば、原油価格は、ニューヨークマーカンタイル取引所の○○ドル/バーレルが基準となる。銅価格では、ロンドン商品取引所の○○ドル/トンが基準となる。
米国は、貿易の決済通貨がドルであることで、巨額の貿易赤字の制約から逃れる特権を享受している。
このドル決済体制に、最初に挑んだのが、フセイン政権下のイラクとフランス(ユーロ)である。
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フセイン政権下のイラクが、フランスと組んで、原油輸出の決済をドルからユーロに転換しようとした。
これに同調する動きが、他の湾岸諸国(石油輸出国)に広がる可能性があった。
米国は、この動きを阻止するために、イラク戦争(フセイン政権の打倒)を行い、フランス(ユーロ)を押さえ込み、湾岸諸国を再度ドル体制に引き戻した。
現在、原油資源のドル建て決済に兆戦しだしたのが、プーチン政権下のロシアとイランである。
ロシアの動きを解説するサンケイウエブの記事、<【円・ドル・人民元 通貨で読む世界】ロシア・ルーブルの挑戦 >から紹介する。
リンク

 ロシアは昨年7月に外国為替取引制限を撤廃し、ルーブルを主要通貨と自由に交換できる「兌換(だかん)通貨」化に踏み切った。ロシア向け投資や貿易はドルを通さずに直接ルーブルで取引、決済できる。日本でも大手銀行が呼応し、企業向けにあらかじめ決めた交換レートで大口のルーブルを円と取引する「為替予約」がつい最近本格的に始まった。

 モスクワでは今、ルーブル建ての石油商品取引所の開設準備が着々と進んでいる。ルーブル建てのエネルギー取引はまず中国、それから徐々に他国に広げるというのがプーチン大統領の指示だ。ルーブル国際化の真の狙いは、単なるローカル通貨からの脱皮ではない。米国による「一極支配」に対抗するプーチン大統領の秘策とでも言おうか。成否のカギは石油にある。

 プーチン大統領の戦略は強引だが巧妙でもある。条件が折り合わないと欧州向けパイプラインの栓を閉める一方で、「サハリン2」にあるように国営資本による石油・天然ガス資源の支配を徹底する。WTI基準を拒否しルーブル表示の相場に従わないと売らないと脅せる。

 難点はそれでも多い。ルーブルが決済通貨として受け入れられるためには、企業や投資家がルーブル建て資産を安心して売り買いできるようにしなければならない。ロシア国内の株式、不動産など資産市場は投機的で地下資金の巣窟(そうくつ)ともいわれる。だが、欧州が代行を申し出た。

 この1月、欧州復興開発銀行やドイツ開発銀行など欧州の公的金融機関が相次いでルーブル建ての債券を欧州市場で発行に踏み切った。民間の追随は必至だ。ロシアの外であろうと信頼性のあるルーブル建て債券市場が整備されれば、ロシアはルーブルを国際通貨の座に近づけられる。

 石油生産は世界第2位、天然ガスは1位でも、輸出の3分の2がエネルギーという偏重ぶりである。石油価格が暴落すればルーブルの信用も失墜するが、「国家財政基準ライン1バレル=23ドルまで下がることはありえない」とロシアの中央銀行筋は自信たっぷりだ。

イランでは、米国の経済制裁に反発する形で、自国内でのドル流通を禁止し、石油輸出をドル建てからユーロ建てへの転換を進めようとしている。
(イランからの原油輸入が大きい日本は、米国に逆らってまでユーロ建てイラン原油の輸入を実行できるかどうか、かなりセンシブな問題となっている。)

List    投稿者 leonrosa | 2007-03-29 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨1 Comment » 

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コメント1件

 wholesale bags | 2014.02.10 7:37

金貸しは、国家を相手に金を貸す | これからの世界経済は中国かインドか?・・・・ではなく、中国とインドの相互補完関係によって牽引されていく!

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