2023-01-29

宇宙開発が推進されているのは何で?

日本の民間宇宙ステーション計画

 

イーロンマスク氏が経営するスペースXが2020年に民間企業で初の有人宇宙船の打ち上げ並びにISSドッキングを成功させたのは有名です。日本でも民間企業DigitalBlastが日本初の民間宇宙ステーションの計画を昨年末に発表しました。

宇宙開発ビジネスは確実に拡大成長しているようですが、一般庶民からすれば縁のない世界で、膨大な投資が回収できるのか、どんな需要があるのか不思議な世界でもあります。宇宙開発ビジネスの成立基盤はどこにあるのか、今後の可能性は本当にあるのか気になるところです。

今後の宇宙開発の可能性を見定めるためにも、まずは宇宙開発の歴史を調べてみました。

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いろいろな科学技術が戦争を契機に発展したように、宇宙開発のスタートも戦争です。ロケットは元寇やアメリカの南北戦争でも使われていました。本格的な開発が行われたのは第二次世界大戦中のドイツのV2ロケットで、1942年に世界で初めて大気圏を超えて宇宙空間に到達しています。ドイツのV2ロケットは、イギリスとベルギーの攻撃に使用されました。

ドイツの開発した技術は第二次世界大戦後に、アメリカとソ連(ロシア)に引き継がれます。この2国は大戦後に冷戦状態となり、軍拡競争を繰り広げますが、その延長線上で、宇宙開発競争も激化します。米ソは直接的な戦争を起こせない状況でしたが、原爆や水爆といった核兵器の開発を進め、それを運ぶミサイル=大陸間弾道弾の技術がロケットでもあり、宇宙開発の技術力=軍事力でした。

宇宙開発競争は、当初ソ連が先行します。1957年ソ連は世界初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げに成功。さらに1961年ソ連のボストーク1号でガガーリンが世界初の有人宇宙飛行に成功します。アメリカは宇宙開発競争でソ連に遅れを取り、危機感を感じた当時のケネディー大統領は1961年にアポロ計画=10年以内に月にアメリカ人を送り込むと宣言します。このころは米ソ冷戦のピークで1962年にはキューバ危機も発生しています。

そして1969年ケネディー大統領の宣言通りアポロ11号が月に到達します。しかし、その後、米ソの宇宙開発競争は急速に低迷します。その背景には米ソの緊張緩和=米ソデタントがあります。ソ連は内政の失敗で食料をアメリカ、カナダからの輸入に頼らざるを得ず、アメリカもベトナム戦争の泥沼化で、宇宙開発に回す予算の余力がなくなったのです。1969年に就任したニクソン大統領は、ソ連のブレジネフ書記長と、軍備管理協定を締結し軍拡競争は終結します。

アメリカの月着陸

1975年にはソ連のソユーズ19号とアメリカのアポロ18号が宇宙でドッキングするアポロ・ソユーズテスト計画が実現します。米ソによる宇宙開発競争はこれをもって終焉したと言われています。その後、1979年ソ連のアフガン侵攻で緊張が一時高まるものの、ソ連の国力は衰弱しており、1985年のソ連ゴルバチョフ書記長によるペレストロイカ、1989年ベルリンの壁崩壊、1991年ソ連崩壊へと進み、米ソ冷戦も終結します。

アメリカは1975年以降、経費削減のため再利用可能なスペースシャトル計画に方向転換しますが、それも2011年には終了となります。ソ連崩壊後のロシアも、財源の縮小に加え、独立したウクライナ、カザフスタンに技術や発射場が引き継がれ、宇宙開発は停滞を余儀なくされます。

宇宙開発もこれ以降は宇宙ステーション計画(ISS)のような国際協力型や、民間企業による利益追求型の宇宙開発競争の時代に変わっていきます。冷戦終結後から現在まで宇宙開発はどうなったのか次回投稿します。

List    投稿者 dairinin | 2023-01-29 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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