2021-02-19

イタリアで親EU派のドラギ政権樹立。時代に逆行する動きをどう読むか。

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前回の投稿「コロナの影響でイタリアでは連立政権が崩壊」で、この政権崩壊の背景に、イタリアという国家自体が統合できなくなっている問題があるとお伝えしました。しかし、その直後に欧州中央銀行(ECB)前総裁のマリオ・ドラギ氏の名前が候補に挙がると、右も左もほとんどの政党がドラギ氏を支持し挙国一致内閣が2週間という短期間で成立しました。この背景には、何があるのでしょうか。

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まず、マリオ・ドラギ氏はどんな人物でしょうか。イタリアの経済官僚からイタリア中央銀行総裁を経て、応手中央銀行総裁を務めた人物です。緊縮財政と市場の力、民営化の権化と評され、欧州債務危機の真っただ中、欧州中央銀行(ECB)総裁に就任し、大胆な金融緩和策に踏み切って危機を救いました。デフレ危機のさなか、世界の主要中央銀行で初めてマイナス金利を導入、量的緩和も始めるなど、大胆な姿勢は「ドラギ・マジック」と称賛されたそうです。当然、強力な親EUです。

ヨーロッパでは、コロナが蔓延する以前は、親EU派が衰退し、民族派が勢力を伸ばしていました。それに対抗するようにEU派が環境派に姿を変えて民族派と対立し反グローバリズムの流れに対抗している状況でした。しかし、コロナで世界的な人の移動が制限される中で、グローバリズム派は息の根を止められ、今後は民族派が主流になると思われました。なぜ、ここでイタリアは挙国一致親でEU政権が成立したのでしょうか。

マスコミで報道されているのは、コロナによる経済悪化を受けて、ドラギ氏の手腕=グローバリズムの考え方が見直されていると言う評価です。これは、グローバリズムに変わる新しい経済の仕組みが登場していないために、古い時代の成功にすがるしかないと言う事でもあります。しかし、グローバリズムが上手く行かなかったからEUでは民族派が台頭してきたのであり、残念ながらこれで上手く行くことは無いでしょう。大きな期待を受けた、ドラギ政権が失敗すれば、イタリアもEUも後がない状況になります。そこから、本格的に脱EU、民族主義の潮流が進んでいくのかもしれません。

 

■イタリア次期首相、ドラギ前ECB総裁か-コンテ氏連立工作失敗202123

イタリアでは1月26日に首相を辞任したジュセッペ・コンテ氏による連立工作が失敗し、マッタレッラ大統領は欧州中央銀行(ECB)前総裁のマリオ・ドラギ氏を大統領府に呼び出した。ドラギ氏はECB総裁として欧州ソブリン債危機を沈静化させた手腕が高く評価されており、同氏が国政のかじ取りを担う見通しを好感し、ユーロ相場は上昇した。

マッタレッラ大統領は現地時間3日正午(日本時間同午後8時)ごろにドラギ氏と会談する予定。大統領報道官が記者団に明らかにした。コンテ氏は2度にわたる連立協議を通じて第3次内閣の発足を目指したが、各党派の合意取り付けに至らなかった。

イタリアはコロナのパンデミック(世界的大流行)下で、戦後最悪のリセッション(景気後退)に陥り、欧州連合(EU)の実質的な「復興基金」7500億ユーロ(約948000億円)の経済再建プログラムに頼らざるを得ない状況にある。マッタレッラ大統領は前倒し総選挙の余裕はないと警告し、各党派に次期首相候補への最大限の支持を呼び掛けていた。

■イタリア組閣、先行き不透明 ドラギ首相候補が交渉開始202124

連立政権崩壊による混乱が続くイタリアで、ドラギ前欧州中央銀行(ECB)総裁(73)がマッタレッラ大統領からの組閣要請を受け入れた。ドラギ氏は各党との交渉を開始し新政権発足を目指すが、同氏の首相就任の動きには早くも反対の声が上がっており、先行きは不透明だ。

ロイター通信によれば、コンテ前政権を支えた新興政党「五つ星運動」はドラギ氏不支持を表明。コロナ禍で国民の不満の受け皿として支持率を伸ばしている極右政党「同盟」の所属議員は、支持の意向を示しつつも、1年以内の総選挙実施という条件を付けた。一方、政治的混乱を引き起こしたレンツィ元首相の小党「イタリア・ビバ(IV)」は、ドラギ氏の首相就任を望んでいるとされる。

イタリアでは新型コロナによる死者が約9万人に上る。欧州連合(EU)のコロナ復興基金から補助金や融資を受けるには、政治の安定化が不可欠だ。ドラギ氏は、重要な閣僚ポストの分配を交渉材料に各党との協議を進めるとみられるが、合意に至らなければさらなる混乱は避けられない。

■伊、ドラギ氏が組閣協議開始 最大政党に軟化の兆しも202125

欧州中央銀行前総裁のマリオ・ドラギ氏が4日、新政権発足を目指し、組閣に向けた協議を開始した。当初ドラギ氏への支持に難色を示していた最大政党の左派「五つ星運動」は、ここにきて態度がやや軟化しているもようだ。五つ星に近いコンテ前首相は、ドラギ氏の幸運を祈るとした上で、次期政権が実務型な範囲にとどまらず政治的な性格を打ち出せるよう期待していると述べた。コンテ氏の発言は五つ星がドラギ氏への協力を検討している表れとみられる。

こうした中、右派「同盟」のサルビーニ党首は、五つ星がドラギ氏への支持に回った場合、同盟は支持しないと表明。同盟か五つ星かどちらかを選ぶようドラギ氏に迫った。中道左派「民主党(PD)」のジンガレッティ書記長(党首)は、新政権を支持する意向を示し、ドラギ氏は8、9割方組閣に成功するだろうとした。

■伊五つ星運動、ドラギ氏の新内閣支持巡りオンライン投票実施へ202129

イタリア最大政党の左派「五つ星運動」は8日、欧州中央銀行(ECB)のドラギ前総裁を首相とする新内閣を支持するかどうかについて、オンライン投票を実施すると発表した。

ウェブサイトによると、投票は10日1200GMT(日本時間午後9時00分)に開始され、24時間後に終了する予定。

■ドラギ氏、週内にもイタリアの組閣 各党との協議大詰め202129

ANSA通信によると、ドラギ氏はほぼすべての政党からの支持を取り付け、早ければ12日までに首相就任を宣誓する見通しだ。五つ星は当初、ドラギ氏不支持だと報じられたが、フランス紙レゼコーによれば、党創設者でコメディアンのグリッロ氏は、「(コロナ禍からの)復興計画にわれわれの主張を盛り込ませる」と強調。ドラギ氏支持を表明した。ただ、エリート層に反発するグリッロ氏は過去にドラギ氏を「ECBのドラキュラ」などと非難してきた。グリッロ氏の方針転換が党員や支持者の不信感を招き、党そのものの分裂の火種になる可能性がある。

コロナ禍で国民の不満の受け皿として支持を広げる同盟のサルビーニ党首は当初、早期の解散総選挙実施を主張していたが、ANSAによればドラギ氏支持に転じた。ファシストの流れをくむ極右「イタリアの同胞」だけが、ドラギ氏不支持を表明しているもようだ。

■伊五つ星運動、ドラギ氏の新内閣樹立支持 オンライン投票で2021212

イタリア最大政党の左派「五つ星運動」は11日に実施したオンライン投票で、欧州中央銀行(ECB)のドラギ前総裁を首相とする新内閣樹立を支持すると決定した。59.3%が賛成票を投じた。

ドラギ氏は12日にマッタレッラ大統領に閣僚人事案を提出する。来週には議会で自身の政策を発表し、その後上下両院での信任投票が行われ、正式に就任する。

■アングル:伊新首相候補ドラギ氏、過去に関与した問題の解決担う宿命か2021212

イタリアの新首相候補に指名されたマリオ・ドラギ前欧州中央銀行(ECB)総裁の政権が発足することになれば、同国が抱える幾つかの厄介な構造問題に正面から向き合う必要が出てくる。これらの問題が生み出された過程には、実はドラギ氏も以前の職務を通じて関与しているのだ。マルケ大学のマウロ・ガレガッティ教授(経済学)は「ドラギ氏は何よりもまず現実主義者だ。彼はこれまで緊縮財政と市場の力、民営化の権化だったが、今はフリードマンからケインズへと軸足を移している」と語った。

<緊縮論の敗北>ドラギ氏がECB総裁として他の欧州連合(EU)機関とともに押しつけた緊縮財政が、イタリアの生産能力と潜在成長率を弱め、状況を悪化させたとの見方に賛同する経済学者が増えてきている。

<MPS救済問題>08年にイタリア銀行(中央銀行)総裁だったドラギ氏は、国内第3位の銀行MPSが同業アントンベネタを高額で買収するのを承認したが、これがMPSの破綻につながったというのがアナリストの見方だ。結局17年にイタリア政府が54億ユーロもの税金を投入しMPSを救済。17年半ばには当時ECB総裁だったドラギ氏がMPSは支払い能力があると宣言し、欧州委が救済を承認する道を開いた。この時にMPSの株式64%を保有したイタリア政府は、欧州委に対して22年半ばまでに経営が立ち直って株式を手放せると約束していたのだが、今や政府がMPSの買い手を探さざるを得ない状況にある。

<民営化失敗>ドラギ氏は、財務省総務局長時代に民営化のスキームを策定した同国最大の道路管理業者、ASPIの国有化を完了するかどうかの決断も求められる。この民営化スキームは現在ではひどく評判が悪い。事実上の独占企業を誕生させ、政府から取得したベネトン一族に巨額の利益をもたらしたからだ。マルケ大学のガレガッティ教授は「ドラギ氏があまり成功しなかった民営化政策を担っていたとわれわれは認識すべきだ」と述べ、ASPIの再国有化を進めると確信していると付け加えた。

■指導力ある「スーパーマリオ」 ドラギ新イタリア首相2021214

欧州債務危機の真っただ中、欧州中央銀行(ECB)総裁に就任し、大胆な金融緩和策に踏み切って危機を救ったリーダーシップに定評がある。イタリアの財務官僚時代に改革を進めた活躍から「スーパーマリオ」の異名を持ち、国内外で高い知名度を誇る。

ギリシャの債務危機がスペインやイタリアに飛び火してユーロ危機へと拡大する中、2012年にロンドンで講演し「ユーロを守るため何でもやる覚悟がある」と宣言。この発言を受けて、懸念に覆われていた金融市場の雰囲気が一変し、危機の決定的な転換点になったと評価された。14年、デフレ危機のさなか、世界の主要中央銀行で初めてマイナス金利を導入15年には量的緩和も始めた。大胆な姿勢は「ドラギ・マジック」と称賛される一方、ドイツなど金融政策に保守的な国は反発した。

1947年、ローマ生まれ。後に自らトップを務めることになるイタリア中央銀行は当時の父の勤務先だった。米マサチューセッツ工科大で博士号を取得。フィレンツェ大で教授を務めた後、中銀総裁を経て11年にECB総裁に就任し、1910月末に8年間の任期を満了した。

■欧州債務危機脱出の立役者がイタリア首相に就任。コロナ禍「ドラギ・マジック」は再び期待できるか2021216

イタリアのマッタレッラ大統領は212日、欧州中央銀行(ECB)のドラギ前総裁を次期首相に任命。同氏は閣僚人事を発表して翌13日に首相に就任した。今年9月にはドイツのメルケル首相が、20225月にはフランスのマクロン大統領が任期切れを迎える。欧州は「政治の季節」に突入するところで、ドラギ首相の誕生はその序章と位置づけられる。結論から言えば、各方面からの期待は高いものの、ドラギ政権は「暫定」の色合いが否めず、持続可能性には疑問符をつけざるを得ない。

ドラギ氏の首相就任については、現政権を構成する「民主党(PD)」、民主党から分派した「自由と平等(LEU)」、イタリア最大政党の「五つ星運動」、レンツィ元首相率いる「イタリア・ビバ(IV)」といった左派勢力が支持。一方で、ベルルスコーニ元首相の「フォルツァ・イタリア(FI)」、反欧州連合(EU)を掲げる最大野党「同盟(Lega)」といった右派勢力からも支持を受けている。

良く言えばコロナ禍を眼前にした「挙国一致内閣」だが、悪く言えば「寄せ集め」なので、いつ空中分解しても不思議ではない。とくに、強烈な反EUの主張をくり返す極右政党「同盟」が、ユーロ圏の象徴的な存在でもあったドラギ氏を支持するのは違和感が大きい。

前評判がかなり高いだけに、そんなふうに「ドラギ氏だからできること」がさほど実現できないとなると、求心力が低下し、いずれ政変に巻き込まれて退陣という近年のイタリア首相たちと同じ憂き目に遭う懸念も十分ある。そしてそれは、「ドラギ氏でもダメだった」という失望を反動的に大きくするおそれもある。

イタリア国内では「挙国一致」と「寄せ集め」の狭間にあり、国外では他国の政権移行期の窮屈さに直面するドラギ首相は、おそらく難しい政権運営を迫られるだろう。

こうしたさまざまな不安を抱えながらの船出とはいえ、まずはマッタレラ大統領の任期が満了する20222月まで、政局が一応の落ち着きを得たことは前向きな話と評価したい。

■ドラギ首相、イタリア再建とEU統合強化を訴え-上院で就任後初演説2021217

イタリアのドラギ首相は17日、就任後初の上院での演説で新政権の目標を語り、イタリア再建のための歴史的な努力を国民に呼び掛けるとともに、強い親欧州の姿勢を打ち出した。

親欧州の政権であることを繰り返し強調し、ユーロは「不可逆だ」と言明。欧州連合(EU)の資金はEU全域の成長を押し上げるために使われなければならないとも語り、景気後退期を支えるための共通予算など、EUはこれまで以上に統合を進める必要があると説いた。  首相は上下両院での信任投票に先立って演説した。

■ドラギ伊首相、下院でも圧倒的な信任獲得 大連立政権本格始動へ2021219

イタリアの新首相に就任したドラギ前欧州中央銀行(ECB)総裁は18日、下院で圧倒的な信任を獲得した。既に17日の上院でも信任が可決されており、大連立政権が全力で任務を遂行する道筋が整った。この日の下院の信任投票結果は賛成が535人で、反対は56人。主要政党で反対票を投じたのは極右「イタリアの同胞」だけだった。

ただ上下両院とも最大議席を持つ「五つ星運動」は大連立参加決定を巡り、内部に亀裂が生じている。18日の信任投票では、所属下院議員189人のうち16人が党議拘束に従わず反対を表明。上院の信任投票でも92人中15人が反対した。

List    投稿者 dairinin | 2021-02-19 | Posted in 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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